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酔っ払って作ったクソゲーの最弱ザコキャラな私  作者: くまのき
幻のお菓子ULHGSR編
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巨大猫(えんしゅつよう)

 スー様は、お仕事中のイメージとは違う恰好をされています。

 お城では黒縁の眼鏡が、赤いフレームに変わり。

 いつものようにきっちりとしたスカートスーツではなく、白のセーターに、だぼっとした大きめの茶色いコートをふわりと掛けて。

 それに黒く短めのスカート、タイツ、ブーツ。

 ポニーテールの髪も下ろして。

 ドラマに出てくる、OLさんの私生活みたいな出で立ちです。


 職場のお偉いさんの私服を見ると、なんだか変な違和感があってムズムズしますね。


「ウチはあるものを探しに来たんス。とても貴重な、あるものを……」

「あるもの、ですか?」


 私が猫ウェイトレスさんに注文を頼んだ後、スー様がコーラ片手に語り始めました。


「事の発端は十日ほど前……ウチは第一精鋭部隊長兼兵器開発局長から、ある食べ物を貰ったッス」


 あ、もうだいたい分かりました。


「化け猫饅頭ULHGSRですか?」

「どうしてそれを……!?」


 ちなみに第一精鋭なんとかかんとか局長ってのは、博士さんの事です。

 要するにスー様も博士さんからお饅頭を貰い、その味が忘れられず、休日を利用してここに来ちゃった……って所ですか?


「べ、別にまた食べたいとかそういう事では無いッスよ。ウチはただ、あの饅頭が……」

「あのお饅頭、美味しかったですよねぇ……えへへへ」

「……まあ、そうかもしれなかったッスね」


 幹部の威厳が台無しッス……とか何とかぶつぶつ呟くスー様に、私もここへ来た目的を話す事にしました。





「なるほど、ミィさんもそうだったんスね」


 スー様は腕を組み、得心したように呟きます。


「化け猫饅頭を食べてからずっと、どうにも頭からあの味が離れなくて……」

「うんうん。分かるッスよ」


 スー様はそう頷いて、眼鏡をクイッと指で上げました。

 

「ウチもあの味が舌に刻み込まれてしまって、事あるごとに思い出してるッス。あまりにも強烈すぎるんで、もしかしてあの饅頭には麻薬だとか、魔法だとかが入ってるのかもと思い……」

「ま、麻薬ですかぁ!?」


 急な話に驚き、つい大きな声を上げちゃいました。

 その声で、周りにいるお客さんの視線が私に集中したため、慌てて口をつぐみます。

 でも確かに、ずっとお饅頭の事ばかり考えている今の状況……麻薬中毒のような気もしてきました。

 そんな……まだ十歳でジャンキーになっちゃうなんて……


「安心するッス。ウチや、その時一緒に食べて、やはり同じ症状に悩まされてた妖精部隊長やゴブリン部隊長の血液検査をしたけど、全員麻薬等の反応は無かったッス」


 その言葉にほっとします。

 っていうか妖精さんやゴブリンさんにも被害が及んでいたのですね。

 意外と深刻な状況です。


「という事は魔法ですか? お饅頭の事が忘れられなくなる魔法とか」

「それも違うッスね。自分で言うのもなんだけど、ウチにそんな魔法は絶対効かないッスから」


 ゲーム中のスー様は、ラスト一歩手前のボス戦で、お供の中ボスキャラとして出てきます。

 主にサポート系の魔法、時々高等な攻撃系魔法を駆使するスタイルでした。

 そして確かに、状態異常系の魔法は一切効かないように設定されていたはずです。


「土産ってのはフェイクで、実は第一精鋭部隊長兼兵器開発局長の、変な発明品って可能性も考えたんスが」

「あぁ……」


 凄くありそうな話です。

 私も何度か、勝手に被験者にされてましたし……


「でも前に『次ウチでそんな事やったら給料と研究費下げる』って釘を刺してるから、多分それもないッス」


 その言い方だと、スー様を勝手に実験に付きあわせた前科もあるって事ですよね。

 あのおじさん何やってるんですか……


「ってワケで、ウチが出した結論。それは……」

「それは……?」


 スー様の眼鏡に電灯の明かりが反射し、きらりと光ります。

 私は息を飲みました。


「それは、単純に、あの饅頭がめちゃくちゃ美味しかったって事ッス」

「……はぁ、なるほどぉ」


 結局それですか。


 そこで私の頼んだオレンジジュースが運ばれてきました。

 私は一口飲み、喉の渇きを癒します。


「でも、私も色んなお店を回ったんですけど、あのお饅頭どこにも売ってないんです……」

「フッフッフ。ここでウチに会ったのはラッキーだったッスねミィさん」


 私の言葉に、スー様は再び眼鏡を上げ、不敵に笑いました。


「実は今しがた、あの饅頭を取り扱ってる店の情報を入手したッス」




―――――



「いらっしゃいニャせー、こんにちニャー」


 入店直後、黒服でサングラスを掛けている、怪しい猫さんから挨拶をされました。

 でも『こんにちニャ』はともかく『いらっしゃいニャせ』は多少キャラ作りしてる気もします。


「ほ、本当にこんな所にお饅頭があるんですかぁ……?」

「確かな情報ッス」


 ここは化け猫カジノ……つまり賭場です。

 スロットやルーレットのゲーム音、コイン同士が当たる金属音、カードを切る音、それに店内に流れる音楽。

 そしてモンスターさん達の喜び、怒り、悲しみの声で混沌としています。

 モンスターだから入場に年齢制限は無いのですが、十歳の私には刺激が強いです。

 わあ、あそこに全裸の化け猫さんがポールを掴みながら踊って……いや、よく考えると化け猫さんは基本全裸でした。

 ウェイトレスさんや黒服さんのような、お仕事中の化け猫さんは服を着ているようですが。


「あら、可愛いお嬢ちゃん。ここは子供の来る所じゃニャいわよぉん。お金があるなら別ニャけど」


 セクシーな水着をつけた化け猫のお姉さんが、一口サイズのチーズとワインを乗せたトレー片手に、近づいて来ました。

 挑発的な水着ですけど、二足歩行の猫さんです。私の膝よりちょっと上くらいの身長です。

 セクシーってよりも可愛いって感想が先に来ます。


「お嬢ちゃ……お嬢ニャンはワインはダメよぉん。チーズだけにしときニャさい」


 今ニャンって言い直しましたよね?

 やっぱりキャラ付けですか?

 なんて心の中でツッコミを入れながら、私はチーズを一つ頂きました。


「ちょっとお尋ねするッスけど、化け猫饅頭ってのは」


「おや、もしかしてスー様ではありませんかニャ?」


 スー様がセクシー化け猫さんに話を聞こうとすると、後ろから誰かが話しかけてきました。

 振り向くと、黒いスーツに金ぴかのネクタイ、派手な帽子とサングラスに、おおきな金のネックレスをした、いかにもお金持ち風の化け猫さんが立っていました。


「お初にお目に掛かります、わたくしはこのカジノのオーナーですニャ。まさか魔王軍の軍師様に足を運んで頂けるとは、光栄ですニャ」

「あ、これはどうもッス」


 スー様とオーナーさんは、相互にぺこりとお辞儀をします。

 遅れて私も、慌ててお辞儀をしました。

 オーナーさんはそんな私の顔を見て、ニコリと笑います。


「おやおや、こちらは噂の新四天王さんですかニャ」

「は、はい。初めまして、ミィです……」


 挨拶も終えた所で、スー様が今日来た目的を話されました。

 お饅頭の事についてです。


「ほう、なるほどなるほど。あの饅頭は、海外の高級チョコブランド『ストロベリーバズーカ』の姉妹会社『ストロベリー甘味』の協力の元作られたものでしてニャ。最近はあれ目的で来るお客さんも増えまして。ほらあそこですニャ」


 オーナーさんはそう言って、店の奥へ顔を向けました。


「あの、プレミアムくじコーナーですニャ」

「……くじ?」




 私達はオーナーさんと一緒に、プレミアムくじコーナーに行きました。

 カウンターに黒服の猫さんが立っていて、その奥の壁には、大きな猫さんの顔が埋め込んであります。

 もちろん本物の顔でなく、作り物のインテリアです。

 寝顔を模しているのでしょうか、目を閉じています。


 そしてカウンターの前に、看板が置かれています。


『化け猫プレミアムくじ! 一回五十ゴールド』


「五十ゴールドでお饅頭が?」


 ちなみにゴールドの相場を言いますと、ジュース一杯が、十ゴールドから二十ゴールドの間くらいです。

 私の前世で言うのなら、五十ゴールドは約五百円ってトコロでしょうか。

 しかしこれは……なんか、胡散臭い。


「もちろん、絶対に当たるわけではありませんニャ。当たりの中に、化け猫饅頭も入っているというワケでして」

「なるほど。あれはくじの景品だったって事ッスか」


 スー様もそう言いながら、なんとなく怪訝な顔をしています。


「実は一日一回無料くじというものもあるんですニャ」

「む、無料ですかぁ!?」

「はいですニャ。サービスの一環で……まあ説明するより、実際に引いてみるのが早いですニャ。さあさあさあ」


 そう言ってオーナーさんは、私の背中を押し……いや、猫さんの身長的に、正確には背中ではなく膝の後ろ側ですが、とにかく押してカウンターの前に誘導します。

 私は流されるまま、くじを引いちゃう事にしました。

 なんか怪しいですが、でもまあ無料なら……


「そのレバーを引いてくださいニャ」

「はぁ……」


 カウンターの上にはレバーが設置されています。

 言われた通りにレバーを引くと、壁に掛かっている巨大猫さんの眼が、バチッと開きました。

 そして目玉が縦にぐるぐると、スロットの絵柄のように回り始めます。


「な、な、なんですかぁコレ……?」


 驚いていると、巨大猫さんの目玉が止まりました。

 両目が青いです。

 その直後、


『レーアー!』


 と、どこからともなく男の人の叫び声がしたかと思うと、巨大猫さんの口がガコンと開き、青いカプセルが吐き出されました。


「おめでとうございますニャ、ミィ様。なんと大当たり、レア賞ですニャ!」

「大当たり、ですか……!?」


 オーナーさんの声に、私はまたもや驚きます。

 くじ運が悪い私に、大当たり?


「ではこれでお饅頭が」

「はい、レア賞のウェットティッシュです」


 カウンター奥の黒服猫さんから、景品を渡されました。

 って、ウェットティッシュ……?


「えぇぇ……」

「なんで大当たりでウェットティッシュなんスか!」


 スー様の抗議に、オーナーさんは微笑み顔で答えます。


「それは無料くじ内での大当たり、という意味ですニャ。有料の方では更に上のスーパーレア、SRがあって、もっと素敵な商品が貰えるのですニャ」

「SR……じゃあ、饅頭もそれで貰えるんスか?」

「いえ、スーパーレアの上に、ゴージャススーパーレア、その上にハイパーゴージャススーパーレア……」


 つまり、レアは全然レアじゃないのでは……?


「その上にレジェンドハイパーゴージャススーパーレア」

「それで一体、饅頭はどのレアなんスか!」


 オーナーさんは、満面の笑みを浮かべました。


「当店の最高レア、ウルトラレジェンドハイパーゴージャススーパーレア……通称ULHGSRでございますニャ」

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