取材(せくはら)
巨大ロボットさんの登場により、人間さん達のデモ部隊は騒然となりました。
『わ、わかったー! 今日はこのくらいで帰るからー!』
リーダーさんが巨大な手の中で、拡声器片手に叫びます。
その叫びを聞いた巨大ロボットさんは、リーダーさんを地面に降ろし、手を振りました。
「約束ダヨ! バイバイ!」
デモ部隊の皆さんは慌てて外に出て、
『我々は諦めないぞー!』
などと捨て台詞を言いながら逃げて行きます。
鎮圧完了です。
私はほっとしながら、巨大ロボットさんに駆け寄りました。
「あ、あの。助かりました、ありがとうございます」
「君ハ、新シイ四天王ノ、ミィチャンダネ!」
「えっ。は、はい。そうです」
予想外に、私の名前を呼ばれちゃいました。
有名人が私の事を知っていたので、ちょっと嬉しくなっちゃいます。
よく考えると、私とミズノちゃんの闘いを監視していたのは巨大ロボットさん……を作った博士さんなので、知られてて当然ではあるのですが。
「君ト会ウノハ、三度目ダネ!」
「えっ……三度目?」
意外な言葉に戸惑います。
前に会ったのは、私が初めて魔王様のお城に行った日。外庭で抱え上げられた時です。
それは一度目? 二度目?
どこか別の所でも会っていたのでしょうか?
「千二百二十三日、約三年半前。ショー公演ニ来テクレタヨネ!」
「へ……?」
三年半前……確かにそれくらい前に、お友達と一緒に巨大ロボットさんのヒーローショーを見に行きました。
でもあの時は、かなり後ろの席だったし……私も今よりずっと小さな子供で、成長して顔も結構変わってますし……
「さ、三年前の事も覚えているんですか?」
「当然ダヨ! 子供タチノ事ハ全部覚エテルヨ!」
「全部ぅ!?」
な、なんと。
私は感動してしまいました。
「アノ時ノ子供ガ、コンナニ強クナッテ、僕ノ仲間ニナルナンテ! 嬉シイヨ!」
「えへへへ、そ、そうですかぁ。ふぇへへへへ」
あの巨大ロボットさんに褒められて、私は顔がふにゃふにゃになりました。
「ソレニ、サッキノ人間達は、君一人でも鎮圧出来たでしょ?」
「ええ~、いやいやそんな……ん?」
あれ? 気のせいでしょうか。
今、巨大ロボットさんの喋り方が、一瞬変化したような?
「巨ロボさ~ん。いや~ありがとうございます。お手を煩わせてしまったみたいで~」
「イヤイヤトンデモナイ。オ役ニ立テテ良カッタヨ。フォ郎クン」
フォローさんも遅れてこちらへやって来ました。
巨大ロボットさんの口調もいつも通りです。やっぱり気のせいですかね。
「デハ、僕ハ出番マデココデ待機シテマス。ミィチャン、マタ後デネ!」
「あ、はい……えっと、『後で』とは?」
「妹ちゃんの~、今日最後のテレビ出演は、巨ロボさんと共演するんだよ~」
「えっ……えええ!?」
今日の最後の撮影。三つ目は、夜のニュース番組とだけ聞かされていたのですが。
渡された台本も私のスピーチに関する事だけで、共演者が誰かは書いていませんでした。
まさか、巨大ロボットさんとの共演だったとは。
「じゃ~今度こそ、スタジオに行こうか~妹ちゃん……妹ちゃん? どうしたの妹ちゃん」
嬉しさと緊張のあまり……緊張の度合いの方が圧倒的に多かったのですが……私は立ったまま軽く気を失っていました。
―――――
「はーい。五秒前ー。ヨン、サン、ニー……」
「はいぃぃ……え、え、えっと、こここここんにちわあぁぁぁ……ぁぅぅ……」
「こんにちは。お昼のニュースの時間です」
私の噛み噛みな挨拶の後に、綺麗でスムーズなニュースキャスターさんの挨拶が続きました。
まず一つ目のテレビ出演は、お昼のニュースでのスピーチ。
生放送です。
最初のこんにちはの後に、隣にいるニュースキャスターさんが私の紹介をしてくれています。が、私はスピーチの事で頭が一杯で、ニュースキャスターさんの言葉はほとんど理解できませんでした。
「では、新四天王のミィ様の御演説です。よろしくお願いします」
落ち着くんです私。昨日の夜、パパママお兄ちゃんお爺ちゃんお婆ちゃんとあんなに練習したじゃないですか。落ち着いて。落ち着くんです。
スピーチも暗記でなく、ここにある台本を読むだけ。簡単ですよ。なーんだ、簡単だ。簡単簡単。ははははは。
とにかく落ち着いて。
「ミィ様?」
「ふぇっ、は、は、はい!」
さあ落ち着いて落ち着いて落ち着いて私。
最初の台詞は『ワタクシが今回新四天王に就任いたしました、ミィでございます』です。息を吸って、
「わたくしゅがぁ!」
しょっぱなから噛みました。
……まあスムーズにはいきませんでしたけど。
一応その後は大きな失敗もなく、生放送を終える事ができました。
二つ目のテレビ出演は、インタビュー形式。
これは録画なので、多少は気が楽です。
ただ脚本通りの答えを言うだけ。
カメラには私だけが映り、スタッフさんのインタビューに対して答える。
編集で、質問と返答の要点を字幕にして入れる。
よく見るあの形式です。
「ここがインタビュー用のスタジオだよ~」
フォローさんに連れられて、どちらかと言えば小部屋と呼んだ方が似合いそうな、狭いスタジオに入りました。
壁際には難しそうな分厚い本がぎっしりと詰まった棚があり、地球儀や鳥の剥製などが飾ってあります。
その棚の前にぽつんと立派な椅子が一つ。
「あの、この本棚とかは何のためにあるんですか?」
「こういうのあった方が、なんとなく頭良さそうに見えるでしょ~?」
「はあ、なるほどぉ……」
そ、そういうものですかね。
「じゃあ最初の質問行くよ~」
「はっはいぃ!」
インタビューでは、フォローさんが質問文を読むそうです。
さっそくカメラが回り始めます。
「好きなものは何ですか~?」
「はい、ワタクシの四天王としてのリネンはあっ……え。好きな……あ、あの、台本と違うんですけどぉ……」
ページを間違えたかなと思い読み直しましたが、やはりそんな質問はありませんでした。
「最初は慣れるためにどうでもいい質問しようと思って~。番組では多分使わないから、練習と思って気軽に答えていいよ~」
「はぁ……そういう事なら……えっと、好きなものは、アイスクリームです」
「ご趣味は何ですか~?」
「ええーと……色んなものをキラキラにデコる事です」
「なるほど~。例えば最近キラキラにしたものは~?」
「透め……いや、箱とか、あと骨とか……です」
私はフォローさんの質問に答え、徐々に慣れていきます。
この調子なら、本題の四天王のお仕事についてのインタビューもどうにかいけそうです。
「じゃあ他には~、あ、そうだ。好きな人は誰ですか~?」
「は、はい。パパとママとお兄ちゃんとお爺ちゃ」
「家族じゃなくて。好きな男の子~。今お付き合いしてる方はいますか~?」
「ふぇ?」
急にとんでもない事をブッ込まれました。
「いっいっいっいっいないですぅぅぅ」
私は顔を真っ赤にして答えます。
「へ~。じゃあ初恋はいつですか~」
「まままままだです!」
「ほ~、なるほど~」
もう帰りたくなってきました。
お兄ちゃんのお友達と言えど、これはもはやセクハラです!
「じゃあ、ボクが恋人に立候補しちゃおうかな~」
「……へ? え、ええっと、その……あの……」
「な~んて、冗談だよ~。あはははは」
か、完全に小馬鹿にされています。
「あうぅ……あの、これはセクハ」
「じゃあそろそろ真面目な質問行くよ~」
「あ、はい……」
その後政治的な難しい質問をされ、私はあまり内容を理解しないまま、とりあえず台本を読むのでした。




