表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/138

オオカミライダーV3

「起きなさい。起きるのですミィ」


 お布団の中でぬくぬくと深い眠りについていた私は、突然の呼び声に起こされました。

 毛布を頭まで被……



 はい、このパターン三回目。



「またですか……こんばんは、ちーちゃんさん」

「はいこんばんはミィよ……私はそのチーチャンサンではありませんが」


 私はベッドから抜け出し、床に立ち、声の主を見ました。


 眼鏡を掛け、だぼっとしたセーターを基調としたゆったりコーデ、足元はストラップサンダル。

 相変わらず女子大生みたいな服装の女神様が、そこに立っていました。


「ミィよ。長き戦いを、よくぞ生き残りました」


 女神様はパチパチと拍手をしました。


「暗黒グルメ結社ゴム麺を相手に、一歩も引かぬ勇姿を見せ……見事、ご当地焼きそばの販売権を守り抜きましたね。褒めてあげます」

「そ、そんな戦い、私やってましたっけ……?」

「ともかく。これでオオカミライダー二号も、無事最終回を迎えられたというワケです。」

「はぁ……」


 一号としても二号としても、特に戦った記憶は無いのですが。

 勝手に始まって勝手に終わっちゃったようです。


「という事で。あの激闘を征したミィのため、この私が超絶お得な情報を」

「あ、いいです。いらないですお得情報」


 どうせまた私の悪口を言った後、オオカミライダーに変身させるのでしょう。

 しかもこれはただの夢だから、パワーアップ出来た所でぬか喜びで終わってしまうのです。


 なので私は女神様の台詞が終わるのを待たずして、即答で拒否の意思を伝えて……


「はい分かりました。ではミィも期待しているようなので、さっそく今月のお得情報をお伝えします。ドンドンパフパフ」

「期待してません! いりません! 何も分かってないじゃないですかぁ!」


 女神様は太鼓とラッパを響かせ、私の言葉を無視しました。

 なんて厄介な神様なのでしょうか。


「ミィよ。非力でチビで小生意気で最近ちょっと色気づいたクセに、化粧の一つも覚えきれないあなたに、神様ボーナスを授けます」

「お、お化粧は勉強中なんですぅ!」


 相変わらず、一旦私を罵倒しないといけない規則でもあるんですか!?


「神様ボーナス、それは」

「強くなれる術ですよね?」


 なんて私が先に言っちゃうと、女神様は「フッフッフ」と笑います。


「超超超強くなれる術は基本オプション。今回は、更に素敵な追加オプションがあるのですよ…」

「追加オプション?」

「はい。秘密結社ピョッキャー、暗黒グルメ結社ゴム麺に続く、次シリーズの新たなる敵。それをどんな敵にするか、ななな、なーんと! ミィ、あなた自身に選ばせてあげます!」

「えぇぇ……」


 だからそのピョッキャーもゴム麺も、戦った覚えはありません。

 っていうかまだ続くんですか、このヒーロー(?)ごっこ。

 しかもヒーロー自身が敵を選ぶって、完全にマッチポンプですよね。


「さあどんな敵にしますか? 宇宙人、地底人、深海人、超能力者集団、異世界人。ピョッキャー残党によるネオ・ピョッキャーなんてパターンもありますが?」

「えぇーと……じゃあ宇宙人で」


 女神様がぐいぐいと迫って来たので、私は断る事も出来ずに、宇宙人を選択してしまいます。


「はいでは神ラインで上に伝えておきます。さあさあテンポ良く行きますよ、次は基本オプションの三号ライダー変身です」

「は、はぁ……」


 女神様は私に、例の如く変身ベルトを渡しました。

 私は渋々腰に付けます。


 ベルトの前部分には四角いバックルがついており、その上部に三つの縦穴が開いています。


「今回は凄いですよ。その三つの穴に、三つのメモリーカプセルオオカミングパワースティックを刺して変身します」

「メモリーカプセルオオカミングパワースティック……?」


 またゴチャゴチャした名称ですね。


「長いからメモカプと略します。メモカプはそれぞれ特殊な『動物の力』を宿しており、ベルトに刺す事で三体の動物をモチーフとしたライダーに変身するのです」

「動物の力……? そ、それはちょっと凄いかも?」

「さあ、まずはこの三つのメモカプを与えます。早速変身しましょう!」


 女神様は、三つの短い棒をくれました。


 親指くらいの太さで、手の平に納まる程度の長さ。

 四角張っていて、三つとも色が違います。

 これがメモリーカプセルなんとか……正式名称はもう忘れました。メモカプ。


「さあさっそく! 変身! 変身!」


 女神様が、小太鼓を叩き鳴らして急かします。

 私も、今までのオオカミライダーとは違う変身方法に、ちょっとだけワクワクして来ちゃったり。


「わ、わっかりましたぁ! メモカプをこの穴に刺せば良いんですねぇ?」


 まずは一番右の穴に、白いメモカプを刺します。



『ウサギィ!』



 ベルトから男性の声がしました。


「おお、ウサギさんのパワーがあるって事ですか?」

「そう、それはウサギのメモカプです」

「ウサギさんに戦うパワーがあるのかどうかはさておき……凄いです!」


 次に、緑のメモカプを真ん中の穴に刺します。



カァーメー!』



「おぉー、亀さんですね!」

「防御力が高そうでしょう」


 そして残った穴に、肌色のメモカプを!



『力士!』



「りきし……えっ、力士!?」


 ジャジャジャン♪

 と、エレキギターのBGMが響き、


『ラビット・ラートル・おすもうさんフォーム!』


 とベルトから叫び声が聞こえました。


 そして私の体は光で包まれ、むくむくと背が伸び、筋肉が付き……



 大爆発しました。



 壁は吹き飛び、天井は崩れ、床は抜け。

 前回前々回より、被害状況が増えています。

 まあどうせ夢だから良いんですけど……


「いやー素晴らしいですよミィ」


 女神様が腕を上げ、頭の上で拍手をしています。


 私は、傍に倒れていたスタンドミラーを立て直し、自分を確認しました。



「……えぇぇ!?」



 以前と同じく、成人男性に変わっていました。

 声はいつもの私のままなので、アンバランスなのですが。


 顔は一号ライダーのように、フルフェイスの仮面。

 ただし長いウサギ耳のような突起が付いています。


 そしてボディも一号と同じ、青黒いプロテクターに包まれているのですが……

 一号の時とは、雰囲気が全く異なります。


 まず、背中に亀の甲羅を背負っています。

 いやでもそんな事は些細な差。


 身長二メートル越え。

 体重は分からないけど……多分二百キロは越えています。

 とにかく巨漢で、脂肪と筋肉に包まれて。

 固いプロテクター越しなのに、タプタプしているのが分かる体。


 簡単に言えば、おすもうさんになっていました。



「とても強そうですよ、ミィ」

「確かに強そうですけど……強そうですけどぉぉぉぉ……」



 なんか思ってたのと違う!



 っていうか、力士って動物じゃなくて職業だし!


 私は床にヒザを付き、嘆きました。


「あ、こらこら。そんな体勢になったらヒザを痛めますよ。ラビット・タートル・おすもうさんフォームは、常にヒザの故障と戦い続ける宿命さだめなのです」

「そんなサダメ、嫌ですぅ……」


 しかし一応ヒザを付くのはやめ、立ち上がりました。

 ケガによる休場は避けたいですからね。

 私、力士じゃないですけど。


「あ、ついでに教えておきますと、戦闘中に三つのメモカプを更に穴の奥に押し込めば、必殺技が出せます……ムムッ?」


 女神様は急に唸り、両耳に手を添えました。


「ムムムムッ。女神レーダーに敵機影を捕捉ですよミィ」


 首を振り、「ウィンウィン」とか言ってます。


「酔ってるんですか?」

「酔ってません。これは神様アンテナで、敵がどこにいるのか探している音です」


 そして女神様は、破壊された壁……だった所の向こう側を指差しました。


「さっそく新たな敵が現れたようですよ。ほら、そこに!」


 女神様が指した方向を見ると、全身真っ赤な人影が、何やら喋りながら歩行しています。

 って、なんで都合良く、私んちの前に敵がいるのでしょうか。


「ゲーヒョ、ゲヒョゲヒョォー(笑い声)! ここいら地域一帯は、このメカ・タコゾンビ様が征服してやるゲヒョー!」


 喉を傷めそうな笑い方をしている、タコ人間がいました。

 頭がタコで、身体が人間です。


 いや……人間じゃなくて、メカ? ロボット?

 金属で出来ているっぽい体です。

 ……あと、ゾンビ?

 なんかわざとらしく所々塗装が剥げています。


「ゲーヒョッヒョ。まずは水源に毒を盛り、皆を弱らせ、大人の半分は手足を切り落とし惨殺、そして半分は痛めつけて奴隷にするゲヒョ。子供はこのメカ・タコゾンビ様が経営する孤児院に強制入居で、洗脳しつつ売春させ。最終的には首相官邸とホワイトハウスに自爆テロさせるゲヒョォー!」


 うっわ、悪いヤツですねぇ。あのメカ・タコゾンビ様って怪人。


「遂に現れましたね。あれが新たな敵、ネオ・ピョキャーの怪人です」

「ネオ・ピョッキャー……許せない卑劣な組織なのですね……って、え?」


 ネオ・ピョッキャー?


「あ、あのぉ……敵は、宇宙人にしてくれるはずでは? 追加オプションで敵を選ばせてくれるって……」

「さあ戦うのです、オオカミライダー・Vスリーよ!」


 女神様はなんらかの手違いを犯してしまったようです。

 しかし、私の言葉を無視しています。

 誤魔化す気みたいですね……


 っていうか、名前は三号でなくVスリーなのですか。


「で、でも確かにあのタコさんは放っておけません……た、戦ってみます!」


 私は気合いを入れ、部屋から飛び出しました。


「ゲッヒョヒョヒョ……ゲヒョー!? き、貴様は誰ゲヒョ!」


 突然の力士の登場に、メカ・タコゾンビ様は驚いたようです。

 口から墨をまき散らしました。

 汚い……


「も、問答無用ですぅ!」

「貴様、その外見で少女みたいな声ゲヒョな?」

「う、それは地味に気にしていたのにぃ……」


 私は、さっき女神様が言っていた、必殺技の発動を試みます。

 確か……ベルトに刺しているメモカプ三本を、再度押し込む……


「ああっ、いけませんミィ! まだ必殺技を出してはなりません!」

「えっ?」


 背後で、女神様の慌てる声がしました。

 しまった、何か事前条件とかあるのでしょうか?

 でももうメモカプ押しちゃいましたよぅ!



『必殺、フルチャージ!』



 ベルトから、男性の叫び声が響きました。



「スーパー力士張り手ビーム!」



 私の口から、自分の意思とは関係なく言葉が発せられました。

 それと同時に体が勝手に動き、右手の平をメカ・タコゾンビ様に向けます。


 すると私の手から、太いビームが発射。

 地面をえぐりながら、敵に命中し、


「ゲヒョオオオ! 無念なり!」


 メカ・タコゾンビ様は爆破四散し、跡形も無く消えちゃいました。



 ……って、あれ? ちゃんと必殺技発動して、敵を倒せましたよ。



「あーあ、やっちゃいましたねミィよ」


 女神様が、責めるような口調で言います。


「え……な、何をやっちゃったんですか私ぃ? 必殺技は出たし、敵も……」


「最初から必殺技を撃つヤツがありますか! しばらくはパンチキックの肉弾戦で応酬するのがセオリーでしょ! それに何故名乗らなかったのですか! ヒーローならカッコよく名乗ってキメポーズでしょ! キメポーズの間は敵も待っててくれますから!」


「え、えぇぇ……そこ?」


 女神様はぷんぷん怒ってます。

 こうして見ると、やっぱりちーちゃんさんそのものなのですが……


「まあしかし、とりあえずは初陣勝利おめでとうございます。三匹の動物パワー、見事に使いこなせましたね」

「はぁ、ありがとうございます……いや、力士のパワーしか使ってない気がしますが……それもビームだから正確には力士関係ないし……っていうかそもそも力士は動物じゃないし……」


「ほら、それにこれ」


 女神様はメカ・タコゾンビ様爆発跡地まで近づき、地面に落ちている物を拾い上げました。


 これは……メモカプ?


「新しいメモカプです。敵怪人を倒すと、新メモカプをゲット出来るルールになっています」

「な、なんで敵がメモカプを持ってるんです?」

「さあ? それは多分、最終回五話前くらいに分かるんじゃないですかね」


 女神様の言っている事は、良く理解出来ませんでしたけど。

 とりあえず私は、新たなメモカプを受け取りました。

 灰色のメモカプです。


 ウサギさんの白と、早くも色被りしちゃってますね……


「さあVスリーよ。試しに変身! 変身! それ変身!」


 女神様に急かされ、私は渋々メモカプを使ってみます。

 とりあえず、今刺さってる内の一本と交換してみれば良いのでしょうか?


 うーん……

 とりあえず、ウサギのメモカプと交換してみましょう。

 ただウサ耳付いただけだったし。新しいメモカプと色も被ってるし。


 ウサギのメモカプを外すと、『ウサギ解除!』との声がベルトから流れました。

 次に新しい灰色のメモカプを刺すと、



『スーパー定員!』



 ……すーぱーていいん?



『スーパー定員! 亀! 力士! ジャジャジャン♪ レジ打ちタートルおすもうさんフォーム!』



「……レジ打ち?」

「おお、それはスーパーマーケットのレジ打ち定員のパワーを秘めたメモカプですね。熟練定員の卓越したレジ打ちの力で戦うのです」

「そ、それって、戦いに活かせるんですかぁ?」


 また動物じゃなくて職業だし。

 しかも格闘家である力士ならともかく、スーパーマーケットの店員って……戦い関係ないですよね?


 あまりにも無意味なメモカプに、私がそろそろ帰りたいなあと思っていると、



「レーホョホョホョ(笑い声)! ここいら地域一帯は、このメタル・タコタイガ―様が征服してやるレホョー!」



 再び、奇抜な笑い声が聞こえてきました。


「ムムッ! ミィよ、またネオ・ピョッキャーの怪人が現れましたよ!」

「は、はぁ。そうみたいですね」


 唐突に現れた新怪人。

 頭がタコで、身体が人間。金属製。

 さっきの怪人と違う所は、全身虎柄だという事。


 つまり、ただの色違いなのですが……


「さっきのと似ていますね……親戚でしょうか?」

「いえ、おそらくは予算の都合で使い回しているのでしょう」

「……よさん?」

「ネオピョッキャーの話です。Vスリーは考えなくても良い事です」

「はぁ……」


 私はなんだか面倒くさくなって、ベルトのメモカプを一気に押し込みました。



『必殺、フルチャージ!』



「スーパー力士張り手ビーム!」



 あ、さっきとまったく同じ技です。

 結局、レジ打ちの力は何も反映されていないのですね。



「レッホョホョヨヨ!」



 メタル・タコタイガー様は、その卑劣な悪行計画を明かす前に、そもそも私達の姿に気付く事無く、爆発四散して消えちゃいました。


「お見事ですVスリーよ」


 女神様は拍手をしながら、メタル・タコタイガー様爆発跡地に近づきました。


「あれ? 今回もすぐに必殺技出しちゃったんですけど、怒らないんですかぁ?」

「以前戦った敵の色違い相手には、即必殺技を撃っても良いのです。それがセオリー」

「そ、そういうものですかぁ……?」


 イマイチ基準が分かりませんが。


 悩んでいると、女神様が私にメタル・タコタイガー様のメモカプを投げ渡しました。

 今度は白いメモカプです。

 って、また色被ってますよ。

 しかも今回は完全にウサギさんのメモカプと同色です。


「ほーら、変身! 変身!」

「はぁ……分かりましたよぅ」


 女神様が一気飲みアルハラコールのように、手拍子を打ちます。

 私は仕方なく、変身する事にしました。


 次は順番で、亀さんと交換してみますか。

 レジ打ちの灰色と新しいメモカプの白で、被っちゃってますが……どうでも良いやもう。


「さあ、次はどんな動物なのでしょうか……Vスリーも、ウキウキしている事でしょう?」


 女神様が言いました。

 いやぁ。でもこのパターンは、どうせまた動物じゃなくて職業でしょうけど。



『料理人!』



 はい料理人。

 案の定、動物じゃ無かったです。

 っていうかそもそもコレ、『動物の力』って説明が間違っていたのではないですか?



『スーパー定員! 料理人! 力士! ジャジャジャン♪ レジ打ちコックさんおすもうさんフォーム!』



「レジ打ちコックさんおすもうさんフォーム……」


 コック『さん』おすもう『さん』と、さんが繰り返されててモヤモヤするネーミングです。

 っていうか遂に動物が全く関係ないフォームになってしまいました。


 仮面とプロテクターを付けたおデブさんが、コック帽を被り、レジのピッとするアレを持っている。

 そんなヒーローです。


「ビューティホゥ……Vスリーよ、エクセレントですよ……」


 女神様が笑っています。

 それ、本気で言ってますか?

 なんか小馬鹿にしてません?


「Vスリーよ……次の怪人が現れるまで、ひとまずは一般社会に潜伏するのです。どうせなら、その変身機能を活かせる職にでも就いて」

「……この姿じゃ、ちゃんこ鍋屋さんくらいにしかなれませんが……」


 そう言った後、いい加減この巨漢ボディが息苦しくなって来たので、私は変身を解きました。

 すると、人狼少女に戻った私の頭を、女神様が撫でてきます。


「あぅ……な、なんですかぁ急に?」


 突然のナデナデに私はびっくりしつつも、犬……じゃなくて狼の習性で、耳と尻尾が勝手にピョコピョコ動きます。


「よく頑張りましたね、ミィよ……これで私の役割も終了です」

「……え?」


 女神様は微笑んで、「頑張ったね」と一言。

 そして、それ以上は何も言いませんでした。


「あのぉ、ちーちゃんさん……?」


 その表情は、遠い昔の記憶通り。

 お節介で、変なトコが真面目で、『私』と同じくお酒が大好きだった、ちーちゃん……





 …………





「はっ!?」



 そこで目が覚めました。


 変身ベルトも、メモカプもありません。

 勿論部屋も無事です。


 つまり、やっぱり、夢。

 いつものくだらない夢。


 ……でもなんだか、意味深な終わり方でした。


「ちーちゃんさん……」


 私は呟きます。


 夢の中とは言え。

 今のがちーちゃんさんとの、最後のお別れになっちゃったような……

 そんな気がして、堪らなかったのです。



 時計を見ると、まだ起きるには少し早い時間。

 私は再び布団に潜ります。


 そして、美奈子さんだった頃の記憶を辿りました。


 ちーちゃん。


 前世の私にとって、一番の親友だった……



 そして私はいつの間にか、再び眠りについたのでした……





 …………




「あれ? もう帰って来たのですかミィよ。せっかく早く起きたのだから、散歩や勉強なりして有意義に過ごせばいいのに」

「ちーちゃんさん!?」


 最後のお別れってのは、ただの気のせいでした。

 寝たら普通に、目の前に女神様がいます。


「しかし丁度良かったです。オオカミライダー四号の新企画が」

「も、もうそれは良いですぅ!」


 夢の住民との付き合いは、まだしばらく続きそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ