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暴投
今朝の話。
悪夢から逃れきれずに走る僕は闇の中。
暗くて、冷たくて、息苦しい。
肺に穴が空いているのだろうか、取り入れた空気は肺を満たすことなく消える。
ずっと何かに追われて走り続けていた。
ただ逃げたくて、生きたくて……いや、死にたくなくて。
あの日に戻れなくて、切なくて。
もうどうでもいいと思いたい。
真紅に染まった両の手は痺れていた。
どうして現実ってやつはこうも疲れるのかな……。
そう思わない?……アイビ。
走り続ける僕は迷える子羊なのか、ピエロか。
足を止める。背後に迫る悪夢が肩に触れた、と同時に夢から覚める。
「……」
名前を呼ばれた気がした。
心臓が歪むようで、痛い。
吐きそうになる、まるで胃の中でカエルが鳴いてるみたいだ。
げろげろ。げろげろ。
いつもの通学路がやけに混んでいて五分前登校になった。
今朝の悪夢から命からがら抜け出した、無事生還。
今日も一日を迎えることが出来たことにほんの少し安堵する。
左胸から伝わる鼓動が脈を打つ。
満開の桜が青空の海に降りそそいでいた。
おはよう、人類。