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1-9 ガーデンパーティー1

 それから少し時間が経ち、ガーデンパーティーが行われる。

 当家の庭が使われるので、数日前から庭を整備して、お客様を迎えるように準備がされた。さらに室内から、テーブル、椅子などを移動して、テーブルクロスを敷く。室内楽を呼ぶなど、小さいパーティーと言いながら、本格的なものに変容していった。


 料理長もいつもはそれほど買わない高級食材を、朝一番に出かけて目利きをしてきた。どんな料理を出すべきか、執事とも打ち合わせをしている。屋敷内なら自由に散策しても、特に心配されないので、キッチンへ行って試食を頼まれたこともあるアリーシア。


 魚は海が近くないため、いつもは川魚を主に食べるが、贅を尽くした料理のためか、今回のパーティーでは海で獲られた魚もあった。料理長も素朴なメニューを作ることが多いが、今回は目で楽しめるような食事を試作していた。毎日こんな食事を食べたら飽きてしまうと思うが、こういうパーティーで食べられるなら楽しそうだ。

 前世だと給料が出たら、少し高いレストランで一人贅沢をする気持ちに似ている。ただ人前なので思いっきり食べられないのは残念ではある。たまにだから美味しい。


 いつもは基本的に静かな屋敷内が、慌ただしく、そしてにぎわってきた。普段は使わない部屋も掃除をされ、お客様がいつ来訪してもいいように開けられた。

 物静かなメイド長も執事も、こんな時はキリキリと指示を飛ばしている。


 6歳のアリーシアの役目は直したドレスを試着したり、おとなしくしていることだった。庭も散策できないし、屋敷内もそれほど出歩けないので、暇を見つけたら母のところにいた。


 母はすっかり顔色が戻ってきて、働き者らしくソファに座りながら裁縫をしている。子どもがうまれたときの産着などを作ってるらしい。それを横目で見ながら母の邪魔をしないよう、英雄サンパウロ様の妄想に時間を費やした。




 ガーデンパーティー当日。朝から屋敷はにぎわっていた。

 お客様を迎えるため、エントランスはピカピカに磨かれた。いつも王宮を眺められる英雄サンパウロが考えた窓の近くには、国旗が添えてあった。国旗は赤が基調であり、何かの模様があった。太陽のような印に近い。


 にぎやかになった屋敷内を見る時間もない。朝からアリーシアは丁寧に髪をブラッシングされ、いつもは簡単に結わえるだけの髪型も、複雑に編み込まれ、垂らした髪先に髪飾りをつけてもらった。


 マリアンナのドレスも当日までに形を直してもらった。寸法や袖、襟の部分がアリーシアのサイズにピッタリだった。レースなので保存状態がよければ悪くならないが、物理的な衝撃には弱い。

 踏みつけたり引っ張ったりしないよう気をつけるようにメイドに言われ、大切に着ると約束したことも含めよく注意しようと思った。祖父母が選んでくれた靴もとても可愛らしいものだった。皮の靴なのだろうがよく磨かれたものだった。


 映し鏡の前で、ドレスアップされた姿をみると、自画自賛であるが満足だった。やはり顔立ちがいいだけにドレスは映えるし、金髪に対して青のドレスはいいものだ。こういうときに美形に生まれると楽しいのだと、感心していた。


 「アリーシアいいかい?」


 兄の声が扉の外から聞こえた。

 メイドが扉を開けると、正装をした兄がいた。正装といってもいつもはラフなものに近いのにくらべて、形がカッチリしたものである。キラキラと彩色があるものの、華美過ぎるのでもない。あくまで個人宅でやるガーデンパーティーのようだ。でも兄もアリーシアと同じ美形なので、やはりかっこいいのは間違いない。12歳であるので中性的な面立ちはあるものの、典型的な王子の風貌だ。


 「お兄様、かっこいい」


 思わず心の声がもれてしまったが、その様子に兄・アランは苦笑した。


 「僕がアリーシアを最初に褒めようと思ったのに。先に言われてしまったよ」


 本当にかっこいいなと思う。我が兄の将来は安泰であると思う。女性にモテてモテて仕方なくなる日もそう遠くないだろう。

 兄に賛美を連ねられ、さすがに恥ずかしくなってきたところで、メイドから庭へ行くよう話があった。兄にエスコートされお客様を迎えるべく進む。先に父はパーティーのホストとしてお客様のお出迎えをしていた。こういったことは経験がないので、前世の記憶があっても、少し心配であった。幸いアリーシアとしても初めてのことらしいので、多少の失敗があって大ごとにはならなそうな点は安心できる。


 中庭へ進み兄に手をとられ歩いていった先は、音楽が聞こえる素敵な場所だった。




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