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ホライゾンゲート  作者: 大野 タカシ
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第74話 赤い星を頭上に抱き

 甲太郎は、右腕に抱えたリニアカノンの砲口を巨大人形――――その足元に向ける。


 「温存しておく理由も無し! 食らえッ!!」


 彼がトリガーを引くのと同時に、40ミリ砲弾が巨大人形の足首を吹き飛ばす。

 人形は堪らず前のめりにバランスを崩し……そこに、巨剣を(たずさ)えたアズーが接近する。

 アズーは巨剣を槍投げの槍のように構え、真正面から巨大人形の胸部を狙う。


 「少しの間、大人しくしてもらおうかッ!!」


 そして、倒れ込む巨大人形の胸を、アズーの巨剣が貫いた。

 その刃は背中まで完全に貫通し、倒れきることが出来ない人形の腕が空を切る。

 

 巨大人形は自身を貫く剣に触腕を(から)め引き抜こうとし、4本の腕を伸ばして床につき、身体を支えようとする。


 その様子を見た甲太郎は、人形に向かって走り出す。


 「よしッ! 行くぞッ!!」


 「応ッ!!」


 間髪入れず、リューカもその声に応え、BSブースターを使って人形の頭上を飛び越える。

 そして、2人のコマンドワードが広大な制御室に重なって響いた。


 「右腕コンデンサ、最大充填ッ!!」

 「左腕コンデンサ、最大充填ッ!!」


 甲太郎は右の拳を握りしめながら跳躍、巨大人形の胸を貫き、触腕が絡みつく巨剣に飛び乗る。

 眼前には、表情のない石膏のような巨大人形の顔――――。


 対してリューカは、大電力が流れ込む左手でヒートソードを逆手に持ち替えながら急降下、人形の背中から突き出た巨剣の切っ先に『ストン』と降り立つ。

 眼前には、無防備にさらけ出された巨大人形の硬質な首筋――――。


 <<充填量閾値オーバー。プラズマ・ディスインテグレイター、使用準備よし>>


 2人のEOS(エーオース)、その戦闘サポートAIが同時に告げる。


 「アズーさんッ! 離れてッ!!」


 「了解ッ!!」


 甲太郎の声に即応し、アズーが巨剣から手を放す。

 それを確認した甲太郎は、リューカへの合図も兼ねて再び叫ぶ。


 「食らえええぇぇぇぇぇぇッ!!」


 甲太郎は右の拳を巨大人形の眉間に、リューカは左手のヒートソードを人形の首筋に――――それぞれ同時に叩き付けた。


 落雷の如き轟音と閃光が辺りに満ちる。

 その白い白い光の中、変化は直ぐに現れた。

 硬質な巨大人形の表皮が『ボコッ! ボコッ!』と粟立つように震え始める。


 アズーから『金属繊維の収縮で動く』としか聞いておらず、その他の詳細は一切分からない状態ではあったが、この反応が機能不全によるものだと直感で理解できた。


 甲太郎の脳裏に『いけるか!?』という考えが浮かんだ時、突然巨大人形が上体を無理矢理に反らし、天を……頭上の赤い星を仰ぐような姿勢になる。


 「チィッ! しぶといッ!!」


 リューカは叫びながら、素早く左右に視線を走らせた。

 巨大人形は甲太郎とリューカを引き剥がそうと、4本の腕を持ち上げ――――。


 そして唐突に、正に『糸が切れた人形のように』事切れ、轟音と共に倒れ伏した。



■■■


 「ギリギリだったが、何とかなったようだな」


 倒れ、ピクリとも動かない巨大人形を見ながら、リューカが甲太郎に話しかける。


 「どうにかね……。リューカ、EOSのバテリー残量は?」


 「ん? ええと、3割ほどといった所か。そっちは?」


 甲太郎は(ヘッド)(マウント)(ディスプレイ)に表示されているバッテリー残量を確認する。


 「2割強ってトコ。これなら『帰り』も問題ない」


 甲太郎の答えを聞き、リューカは嬉しそうに大きく頷いた。


 「そうか! それは何よりだ。後は、あの『せいぎょそうち』を破壊するだけだな!」


 「正確に言えば、『破壊する』んじゃなくて、『破壊する為の爆弾を仕掛けて帰る』って訳なんだけど……」


 甲太郎がそう答えると、歩み寄って来たアズーが疑問を口にする。


 「時限式の爆弾? そんな装備を持っているのか?」


 「いえ、時限信管の爆弾は持ってません。なので――――」


 言いながら、甲太郎はバックコンテナから残りのフラググレネード2個を取り出し、それをアズーに見せながら答えた。


 「コイツに細工して代用します」



■■■


 制御室中央のメインシャフト終端――その周囲を調べ、メンテナンスハッチらしき扉を3人がかりでこじ開け……現在は甲太郎が上半身を突っ込んでその中を調べている。

 手持無沙汰のリューカとアズーは、せめて甲太郎の邪魔をしないようにと、少し離れた所で頭上にある赤い星……魔界を見上げていた。

 暫し無言だったが、唐突にリューカが口を開いた。


 「しかし……魔界とは、真っ赤だなぁ」


 「そうだな。オービターによってほぼ灼き尽くされ、あのように赤茶けた地層が剥き出しになっている。水も、地表には存在しないようだな」


 リューカはふと、自身の故郷を思い浮かべる。


 「トーラス……いや、アルカディアもこのように見えるのだろうか?」


 自問に近い彼女の呟きに、律義にアズーが答えた。


 「いや、リューカ殿の故郷は緑豊かで水もある。恐らくは緑や青色に彩られた星なのだろう」


 その答えを聞いたリューカは『そうか、そうか……』と何やら考え始めるが、そこに甲太郎の声が割り込んだ。


 「仕掛ける場所はここで問題なさそうだ! これから準備するから、もう少し待っててーッ!」


 リューカは軽く肩を(すく)める。


 「……だ、そうだ」


 「手伝いたいのは山々なのだが、この身体に閉所作業はどうにも……な」


 アズーが自分の身体を見下ろしながらぼやく。

 それを見たリューカは『クツクツ』と笑いながら、再び頭上の赤い星を見上げた。


 「流石にそれは仕方がない。さて、もう少しばかり時間があるようだ。ならば、もう二度と見る事が無いだろうこの光景を、この目に焼き付けておくとしようか……」


 彼女はじっと、赤い星を見上げ続けた。


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