表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホライゾンゲート  作者: 大野 タカシ
57/78

第57話 アーティラリー

 甲太郎は構えたマシンピストルのトリガーを引く。

 すると、『バララララッ!!』と乾いた銃声が切れ間なく響き、銃口から45口径弾が吐き出された。

 その弾丸は全てワームの頭部(正確にはどこが頭なのか不明だが、とりあえず口がある辺りが頭だろう)に着弾し、撃ち抜かれたスイカのように血肉を撒き散らす。

 (もっと)も、飛び散った血と肉は、スイカとは似ても似つかない毒々しい紫色だったが……。


 「うわッ! 発射サイクルが半端ないな。確かにこれは無駄撃ち厳禁だ」


 硝煙を立ち上らせるマシンピストルを見ながら、甲太郎は驚きの声を上げる。

 どことなく、コルト・ガバメントに似た外観(より正確に言えば、キンバーやSTIといったカスタムワークスによるガバメント・クローン)のマシンピストルは、その実ガバメントとは全く違う設計のEOS(エーオース)専用装備だった。

 そもそも生身の人間が45口径弾……、しかも強装弾をフルオートでばら撒くマシンピストルのリコイルショックを腕だけで制御するのはほぼ不可能だ。

 射撃時の衝撃による破損対策の為に、スライドもフレームも強化され大型化しており、無論、重量も相応に増加してはいるものの、それでもフルオート射撃時の衝撃は『暴れ馬』の一言に尽きる。

 そしてグリップ底部から伸びるロングマガジンと、銃口のストライクフェイスが外観上の大きな特徴となっていた。

 特に、ピラミッド型のスパイクがずらりと並ぶストライクフェイスは禍々しさすら漂わせ、見る者を威圧する。

 眼の無いワームがこれに脅威を感じるかは不明ではあるが、銃身(バレル)のショートリコイルを防ぎ、銃口を相手に密着させた状態でも発砲を可能にするストライクフェイスは、確かに近接距離での防御用火器に打ってつけだ。

 遠距離以遠をリニアカノンでカバーし、接近を許した相手はマシンピストルで制圧する……。

 京子が『個人防御火器(PDW)代わり』と言ったのも頷けた。


 甲太郎が手元のマシンピストルから視線を外し一歩踏み出したその時、彼の足元から1匹のワームが飛び出し襲いかかる。


 「このッ!!」


 甲太郎は咄嗟(とっさ)に、マシンピストルでワームを殴りつける。

 ワームの体表は砂中を移動するため非常に『滑らか』だ。

 ただ殴りつけただけならば拳がすべって大したダメージは与えられないのだが、銃口のスパイクがワームの皮膚にガッチリと食い込み、甲太郎が拳を振り抜くまま、成す術なくワームは吹き飛んだ。

 甲太郎はすかさず、砂上で『ビタンビタン』と跳ね回るワームに照準、発砲。

 『バララッ!』と銃声が響き、ワームは頭部を撃ち抜かれ沈黙する。


 「見た目通り鈍器としても優秀なわけね……」


 甲太郎は呆れたように呟くと、次のワームを倒すべく周囲を見回す。

 そこに、アズーから声がかかった。



■■■


 「甲太郎殿、見ていてくれ。戦い方がある」


 甲太郎に声をかけながら、アズーは仲間――――魔族達と共に前へ出る。


 魔族達は昔から、この地でワームを始めとする外敵との戦いを続けて来た。

 その戦いの経験から、ワームに対抗するための戦術を彼等魔族は確立し、子々孫々と受け継いできた。


 チームの中の1人が、大きめの石を適当な場所に放り投げる、すると、その石を突き上げるようにワームが姿を現す。

 地中で生活するワームは眼を持たず、地中を伝わる振動によって獲物の位置を特定する。

 その習性を利用し地上におびき出したワームに、他の魔族達が一斉に襲いかかった。


 ワームは驚き砂中に逃れようとするが、魔族達も慣れたモノ。

 それぞれ手にした石剣や、前の戦いの成果物なのだろうワームの牙をその表皮に突き立て、ワームが砂に潜るのを阻止する。

 負傷者を出しながらも、見事なチームプレイでワームを仕留めた魔族達。

 その様子を見ていた甲太郎は『おお』と感嘆の声を漏らした。


 「成程。コイツらは振動を感知して襲ってくるわけか」


 「そういうことだ。試してみると良い」


 そう言いながら、アズーは小石を拾い上げ甲太郎に渡す。

 ちなみに、アズーの手は規格外に大きいため、渡された『小石』は実際には人の頭ほどの大きさがあった。

 甲太郎はその石を適当に、数メートル先に放り投げる。

 そして、石を突き上げるように現れたワームにマシンピストルの弾丸を叩き込んだ。

 響く銃声と飛び散る血肉。

 それを見届けた甲太郎は満足げに頷いた。


 「出現ポイントが分かっていれば随分とやりやすくなるな……。というか、アズーさんは石は使わないんですか?」


 手ぶらで立ち尽くすアズーに甲太郎が問う。

 アズーは手をひらひらと振りながら答えた。


 「私には必要ない……。それッ!」


 オリーブドラブの巨人は右足で地を踏み鳴らす。

 すかさず地中から現れたワームがアズーに食いつくが、彼の装甲はビクともしない。

 そして、先程と同じように己に食らいついたワームを無造作に掴み引き剥がすと、それを雑巾の様に捻り、捻じ切った。


 「この身体の装甲とパワーはワーム相手の囮にピッタリだ、改めて京子殿と長道博士に感謝しなければな」


 大した事では無いとでも言うように、そう呟くアズー。

 改めて見せつけられたパワープレイに、甲太郎が頭を押さえたその時、『ゴオォォォォン!』と巨大ワームの咆哮が辺りに響いた。


 声の方を見ると、白いEOSが巨大ワームを翻弄していた。

 空中を自在に跳び回り、すれ違う度に巨大ワームをその手の剣で切り裂くリューカ。

 巨大ワームはリューカを捉えられず、一見すると攻防はリューカの一方的なワンサイドゲームに思えるのだが……。


 「まずいな。あれじゃ消耗するだけだ」


 甲太郎はヘルメットの中で眉を(しか)めた。

 ヘレネア山で巨大ラプテイルと対峙した時の自分と同じだ。

 相手との質量差があり過ぎて、リューカの攻撃が致命打になっていない。


 「アズーさん、周囲のワームを引き付けられますか? 俺はあのデカブツに一撃かまして来ます!」


 「了解した」


 アズーの返事を聞き、甲太郎は巨大ワーム目がけて走り出す。

 走りながらマシンピストルを左のコンテナに格納し、右のコンテナ……いや、リニアカノンに手を伸ばした。


 リニアカノンは折りたたまれた状態から展開し、グリップ、フォアグリップが起立する。

 そして、砲口の上下から2本のレールが伸長し、全長3メートル弱の『砲撃形態』へと移行した。


 巨大ワームの200メートル程手前で立ち止まると、甲太郎はリニアカノンを腰部ハードポイントのジョイントから外し、両手で構える。

 右半身を引き、大きく足を開き、砲撃時の衝撃に備えて両足でしっかりと地を踏みしめた。


 (ヘッド)(マウント)(ディスプレイ)にターゲットレティクルが表示され、EOSの火器管制システム(FCS)が照準を合わせる。

 手の平の接触端子からリニアカノンに電力が流れ込み、砲口から伸びる2本のレールの間に青白いスパークが(ほとばし)った。


 砲撃準備完了、甲太郎は無線を介して叫ぶ。


 「リューカ(・・・・)ッ! 避けろ――――ッ!!」


 その声が届き、白いEOSは軌道を変え急上昇、射線クリア。

 甲太郎は躊躇(ためら)うことなく、リニアカノンのトリガーを引いた。



■■■


 『――――――――――――ッ!!!!』


 砲声というより、衝撃そのものといった音をも掻き消す圧力が周囲を蹂躙する。

 巨大な砂煙を巻き上げ、さらにそれを吹き飛ばしながら、リニアカノンの砲口から徹甲弾が撃ち出され、馬鹿げた破壊力を伴って巨大ワームを貫いた。


 ギチギチと牙が蠢く巨大ワームの口……そこから少し下がって喉元の辺りに命中した徹甲弾は、その運動エネルギーを解放し、着弾点周囲の肉をゴッソリと(えぐ)り取る。


 結果、巨大ワームは『千切られ』た。


 『ズズン!』と頭が地に落ち、胴体はビチビチとのたうつ。

 紫の血を撒き散らしながら蠢いていた巨大ワームは、程なくして沈黙した。


 『ォォォ――――――――ッ…………』と砲撃音の余韻が未だ響く中、砲撃時の姿勢で固まっていた甲太郎が『わなわな』と震え、そして絶叫した。


 「…………なんっじゃこりゃ――――――――――ッ!!? 威力あり過ぎだろコレぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」


 ボスが倒され、配下のワーム達は一斉に逃げて行った。

 魔族達は、夜空に何事か叫ぶ黒い戦士を不思議そうに見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ