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ホライゾンゲート  作者: 大野 タカシ
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第1話 ある事件の顛末

初投稿となります、拙い文章ですがよろしくお願いいたします。

 時は21世紀半ば、時代は苦難と混沌の様相を呈していた。

 前世紀末葉(まつよう)から活発化し始めた民族主義とテロリズムは、時を経るほどに過激化し、非対称戦争の炎が世界を染め上げつつあった。


 そんな中、ついに日本でも人口密集地を狙った連続爆弾テロが発生する。

 『もはや世界に安全な場所はない』という世界的な共通見解の醸成と、慢性的な機能不全に陥り、その権能を失った国連への失望が、対テロ戦争を加速させた。


 そして、『大国はその国力に見合った義務を果たすべき』という国際社会の要請と、国内でのテロ事件発生という現実を突きつけられて尚、燻り続ける反戦・厭戦(えんせん)感情……、特に国防軍隊員から犠牲者が出ることに対する忌避(きひ)感との板挟みになった日本国政府が取った苦肉の策が、先進歩兵強化構想、『死なない兵士』を作り出す技術開発構想であった。

 『死なない兵士』を作りだす……、正確に言えば新装備の開発・運用や薬物投与による生存性の向上、さらには前線でより高度な医療措置を行うための技術開発など、それらを体系的に研究開発するものであるが、いずれにせよ、お題目だけ見れば荒唐無稽に思えるこの計画が承認され予算が編成されたのは、完全ではないまでも、かなりの部分で目標を達成できる目処があったからだ。


 あらゆる分野で遺憾なくその才能を発揮し、神懸り、或いは悪魔的天才とも評された人物。

 万能の天才、芹沢栄治(せりざわえいじ)博士。

 数多の輝かしい実績と、惜しみない賞賛を得ながら……、後に自身が『史上最悪のテロリスト』と成り果てる人物である。



■静岡県富士宮市、富士山麓、(あかつき)製薬生命工学研究所

 

 「A1(アルファワン)よりHQ(ヘッドクォーター)、秘匿区画最下層に到達、クリアリングを開始する、送れ」

 『HQ了解、後続部隊がすぐに合流するが……、施設を完全包囲したとはいえ万が一があり得る、そのまま先行しろ』

 「A1、了解」


 芹沢博士が凶行に走ってから2年あまり、ようやく此処まで彼を追い詰める事が出来た。

 日本国内での事件、犯人は世界的な著名人、早々に終息するかと思われた事案がここまで長期化したのは、芹沢博士の『狂気の研究』の成果物に眼が(くら)んだ者達の捜査妨害があったためであり、今こうして後一歩のところまで来ているのは、政権中枢の良識ある人々が、芹沢シンパが浸透した既存の組織とは別に、アンタッチャブルな対テロ組織を編成したからだった。

 

 『狂気の研究』の成果物……、いつの時代も『不死』というのは、一部の層には魅力的に映るものらしい。


 芹沢博士が最愛の妻の死をきっかけに豹変(ひょうへん)し、文字通り死を超克(ちょうこく)し死者を蘇らせるという狂気に取り憑かれるなど、誰が想像しただろうか。

 古来、『不死』は狂人や権力者が求める絵空事であったが、此度(こたび)ここまで事態が深刻化したのは、『彼ならば、それを成し遂げられるのではないか?』と思わせるだけの才能と実績を芹沢博士が持ち合わせていたことに尽きる。


 人体実験すら含む、人道・倫理に(もと)る実験を繰り返す芹沢博士、さらには当局に拘束されそうになると、自らが作り出したクリーチャーを放ち、多くの捜査員が犠牲になった。


 そんな芹沢博士に、水面下で少なくない人物が金銭・物資・逃走補助等々、様々な支援を行ったのだ。


 ここ暁製薬の『届出にない地下研究所』も、そんな支援の中の一つ。


 すでに政界や財界、行政機関などから多数の芹沢シンパが検挙されていた。

 そんな中、一つの極秘命令が発令される。

 

 芹沢栄治博士の抹殺。


 芹沢博士の身柄を拘束し法廷に立たせれば、語られる言葉の一つ一つが更なる波紋を呼ぶだろうことは想像に難くない、それも、致命的な波紋を。

 永田町、霞ヶ関、財界等々、お偉方の間でどのような駆け引きがあったのかはわからない。

 だが、既に命令は下された。

 

 「EOS(エーオース)、ステータスチェック」


 A1は自身が(まと)う強化スーツ、『EOS』の自己診断プログラムを起動する。

 この最下層に到達するまでに多数のクリーチャーと交戦していたが、フルフェイスヘルメットの内面ディスプレイに、EOSの損傷がごく軽微であること、武装の残弾数に十分な余裕があることが表示される。


 先進歩兵強化構想における、機械工学的アプローチからの回答、それがEx-O-Skeleton、通称『EOS(エーオース)』。


 複合装甲に匹敵する強固な装甲とNBC(核及び生物化学)防護、パワーアシストによる比類ない運動能力と、各種センサーによる認識能力の拡大、それらに立脚する全天候・全領域活動能力、さらに戦闘サポートAIによる的確な状況判断能力を装着者にもたらす、所謂パワードスーツである。


 芹沢栄治(せりざわえいじ)博士が基礎理論を構築し、彼の第一子であり、機械工学の分野で父に匹敵すると言われた芹沢京子(せりざわきょうこ)博士が開発したものだ。


 『父』が発案し、『姉』が完成させたEOSを身に纏い、A1……、芹沢甲太郎(せりざわこうたろう)は地下研究所最下層、その最奥の扉を開く。


 己の父を討つために。


今後、週に1回程度のペースで投稿していきたいと考えております。

なにしろ私、遅筆で書き溜めたストックもほとんど無いので……。

まずは完走を目標にやっていこうと思います。


こんな作品ですが、お付き合いいただければ幸いです。

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