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宿。


そうして向かった先は、男性と女性が色々とまあそういう事をする宿が多数点在するエリア。この歳になり、心の準備がまだとか、そういうのはさすがに無いが、予定の中には無かったので、何とも言えない心境となる。


非常に失礼なことに、そんなお金を遣うのも勿体無いな、さっきの食事代を自分の分を払っておけばこんな厄介事にも巻き込まれ無かったのではないのではないかなと、残酷なことを考える。


男はこういう状況になれば、必ず、性的な欲求を満たしたくなるものであると一般的に思われているのだろう。相手のその年上の女性は、僕の意志を確認することもなく、何も言わずに僕の手を引き、コンビニエンスストアへと入っていった。

慣れた手つきで、避妊具のゴム製品をカゴに入れ、菓子やら飲料物やら下着を追加していった。その場でもやはり、僕の財布は登場の出番無く、支払いは終わった。

会計待ちの列の中で、彼女は突如一言「タバコは吸う?」と尋ねてきた。


「いえ、吸いません。今後も吸う予定はありません」と答えると、

「そう」と一言、前を向き発した。


買い物を終え外に出た途端に、彼女はまた僕の手を強く掴むと、宿探しをはじめた。どの建物もぱっと見では綺麗に見えるのだが、すすコケて古いしなびた外観であった。この奇妙な宿たちの中で、一体今までに何人の男女が過ごしてきたのだろうか。その夜は本当に幸せであったのだろうか。其の夜は、その後に続いたのであろうか。ふとそんなことを考えた。


きっと、今日の僕のようによく分からぬまま入っていき、気がつけば日が昇っているということがよくあるのだろうか。まあ、それは大概は女性側の感想なのであろう。こうして、自分のように、欲を満たす為でなくただ何となくで入り込む男は少ないであろう。いや、もしかすると、欲求を解消したく訪れる男たちも心の奥底では"何となく"でしかないのかもしれない。


そんなことに思慮を巡らせている間に、彼女は宿を決め、中に入り込むと、やはりここでも慣れた手つきでエントランスにあるタッチパネル式の画面を操作し、一つの部屋を選択した。きっとここの宿代は僕が払うのだろうなと思い、値段を確認してみると、一番高い部屋よりもワンランクの下のリーズナブルなところが選ばれていた。僕があまりお金を持っていないように見えたのか、それとも僕が年下ということで遠慮してくれたのか、そこは分からなかった。


宿の従業員より、エントランスの小さな窓口で鍵でも渡されるのかと思っていたが、そういうやり取りも無かった。むしろ、人の気配など一切無く、そのまま、彼女と僕が今夜過ごす5階のフロアへと進めた。


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