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「金ならある!
俺なら生ませてやれる!」
桃は今こそ自分の蓄えを吐き出すときだと思いました。
それは〇ーチューバーとしての知名度を利用して蓄えた金銀財宝です。
金の亡者と罵られ、蔑まれ、
それでも戦い続けた桃が、
今までに吸い上げた金額はおよそ200億。
動画を投稿する事によって得た利益とは別に、
広告効果を目当てにすり寄ってきた、
数々の企業との交渉を
桃はパーフェクトにこなしていたのです。
そのキビキビとした談合は日本一のキビ談合と呼ばれ、
その伝説は今もなお、語り継がれています。
その桃の武勇伝と合わさって商品化されたのが
みなさんおなじみの吉備団子。
これを送られたら最後、全ての生命体は
黙って従うことしかできないのです。
昔々あるところで、
誰にも救われなかった桃が、
業界の闇に巣くう交渉人達の足下を掬い、
そして今、二つの命と無限の未来を救おうとしていました。
「お前の赤ちゃんを俺にくれ!
俺が必ず育て上げる、日本一の桃太郎に!」
吉備団子を差し出し、
さらに桃は尻を突き出しました。
これは人間の土下座にあたります。
「だから、俺を助けてください。」
誰にも祝福されない命を自分と重ね合わせていたのか。
助ける側のはずの桃が尻を突き出しています。
人間の土下座に当たります。
桃が人を救ったのは
このときが始めてではありません。
桃自身に誰かを助けたという自覚はなかったでしょう。
いつだって自分のために動いてきた桃。
誰かと繋がることが、
自分が生きていることの証でした。
そしてそのどこまでも突き抜けたエゴ故に、
桃は強烈に人々の記憶へと刻まれていったのです。
ピンチに必ず駆けつけるピーチ、として。
相手の事情など知ったことではありません。
全ては自分が手にしたいものを手にするため。
打ち上げられた浜辺で夜空を見上げ、
押しつぶされそうになったあの孤独から逃れるため。
そのためなら何度だって桃は尻を突き出す。
(そうだよ俺は、桃だろう!)