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昔々、あるところにお爺さんとお婆さんがすんでいました。
お爺さんはネットでエ〇コープに灯油を注文し、
お婆さんは全自動洗濯機のスイッチを入れました。
すると川の上流から大きな桃が流れてきたではありませんか。
「誰も人が見ていないところで木が倒れたとき、音は鳴ったのか?」という思考実験があります。
誰にも観測されなかった桃は、
果たして本当に川の上流から流れてきたのでしょうか。
誰にも拾われず、海へと流れ着き、浜へ打ち上げられた桃は思いました。
拾われるのを待っているだけではダメなのだと。
他人に興味を持ってもらうために、自らが輝かなければならないのだと。
「そうだよ俺は、桃だろう!」
桃は動画投稿サイトで自分を売り込むことにしました。
「ブーンブーン、ハロー〇ーチューブ。」
何番煎じかわかりませんが、2の矢3の矢は当たることもあります。
桃には勝ちの目が見えていました。
自分の姿がお尻に似ていることを自覚していたのです。
サムネイルのインパクトは他の追随を許しませんでした。
桃尻娘を臭わせるサムネイル、その変わらない吸引力を前に、
煩悩に溢れた世界中の男たちは次々と吸い込まれていったのです。
高まっていく再生数と知名度。
それとともにすり寄ってくる品のない輩も、
桃は相手にしなければなりませんでした。
桃の再生数を目当てに近づいてくるのは、
無名〇ーチューバーや企業だけではありません。
会ったことのない親戚までが、
「ずっと応援していた」などと言っては金の話をしてきます。
桃は利用されることは承知の上で話を受けていきます。
その中で逆に彼らをどう料理してやろうかと考えていました。
こんなところで食われるわけにいきません。
(そうだよ俺は、桃だろう!)