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第九話
「人を嫌いになれない。良い事だと思うけど」
ユキはポテトチップスを齧りながら適当に言う。
「何か支障があるの?」
僕も彼女が売店で買ったポテトチップスをつまみ答える。
「先生曰く自殺する可能性が高いんだって」
「自殺?」
僕は頷く。
「何でも自分が悪いと思うから」
「ああーなるほどね」
彼女も頷く。
「つまり私が気まぐれで君の頬を叩いても自分を責めちゃうんだね」
僕はちょっと困った顔をした。
「流石にそこまで極端じゃないよ」
「そっか。でもそんな感じなんでしょ」
僕はまあねと頷いた。
「どうしてそういう行動したんだろうって考える」
「相手の背景を想像しちゃうんだね」
彼女は薄くなった揚げ芋を齧る。
「それはきっと優しいってことなんだよ」
ユキはそう言って微笑んだ。