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第七話
ユキは変わった女の子だった。
精神科に通院しているという意味でだけど。
僕から見たら普通に生活できている人間に思える。
「ポッキー食べる?」
「あ、うん」
僕は赤い箱からチョコを受け取る。
談話室では今日も誰かがピアノ弾いている。
精神科に通う人は何故か音楽が得意な人が多い気がする。
「草鹿 杉人って変わった名前だね。偽名?」
「本名だよ。もう絶滅寸前の苗字」
ここの精神科では受付に言えば番号や偽名でも呼んでもらえるのだ
「じゃあスーって呼んで良い?」
「どうぞ」
「やった。友達が出来て安心した」
そう喜ぶ彼女には暗さなんて微塵も感じられなかった。