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第六話
途中で終わらせる練習をする。
市松先生は時計を止め終了の合図をした。
僕はブロックを積む手を止めた。
「どうだね?」
「すごくスッキリしないです」
「慣れるまでやろう」
先生は診療室で珈琲を淹れる。
「世の中に完璧な事は少ないよ」
僕は黙って頷く。
「半端だからって価値が無いわけじゃない」
「はい」
「それを受け入れる練習だね」
診療室を出た後ため息を吐く。
わかってはいる。
でもそう行動できない自分にひどく矛盾を感じる。
「完全じゃないと美しくない?」
横から声をかけられて驚く。
この前の女の子が診療室の壁を背にして立っていた。
「ブロックの練習。次。私なんだ」
彼女は小さく微笑む。
「私、吉野ユキ。よろしくね」
扉を閉めると何かが変わる音が聴こえた。