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第五話

集中できない時は適当な数字を書き出し計算をする。

数字を書きだす。答えを出す。検算する。

これの繰り返し。


「止せよ。病んでる様に見えるぞ」

「落ち着くんですよ。それに病んでるのは否定できませんし」

そう笑って見せたら黒崎さんも笑ってくれた。


黒崎さんはアルコール依存症の芸術家だ。

「酔わなきゃこんな世界やってられないさ」

が口癖だった。


その割にはいつもアイロンをかけた整った服を着ている。

俳優のゲイリー・オールドマンに似ている。

そう病院の看護師が言っているのを聞いた。


狂気的ながら上品な点は確かに僕も一致していると思った。


「そうだ黒崎さん」

「何だ?」

「この病院で通院している若い人って僕以外でいましたか?」


彼は首を振った。

「知らんなあ」

「女の子で」


彼はまた首を強く振った。

「恋なんてつまらんもんだぞ」

「いや。そういう訳じゃないんですけど」


黒崎さんは遠くを見るように言った。

「男が女の話題を出すときはそういうもんさ」

そう彼はポケットから出した銀色のウィスキーボトルに口をつける。


彼は芸術で婚約者を失った。

芽が出なかったんだ。

愛する人は彼から離れていってしまった。


だからだろうか。

酒を飲んで目を赤くする彼はいつも何処か寂しげだった。

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