第三十一話
「ユキはこのままでは死んでしまいますよ」
そう先生は簡単に僕のことを説明をした後、淡々と言う。
「自殺しちゃうんですか。前もそんなこと言ってましたもんね」
叔母さんは口元に手を当てて笑う。
「で。この男の子と一緒ならユキは自殺しないと」
「私はそう信じてます。少なくともあなた達といるよりは」
彼女は手を広げてナンセンスといったような仕草をした。
「すっかり私が悪者だね。絵本に出てくる魔女みたいに」
そう乾いた声で笑った後。彼女は唐突に僕の方を見た。
それからユキを小突く。
「で。その素敵な王子様は何を持ってるのかな? 経済力? 社会的地位? 容姿?」
ユキはうつむき答えに詰まっている。
「見たところ容姿はないね。じゃあ社会的な立派な地位の人なの?」
彼女は暫く黙ったあと首を横に振った。
「じゃあお金持ちなんだ」
彼女はまた首を横に振った。
それを見て叔母さんは笑った。
「何にもないじゃん」
言われながら僕はその通りだと思った。
他人から認められるようなものを何も持ってない。
僕は今度こそ彼女が首を縦に振ると思った。
だけど彼女はまた首を横に振った。
「心があります」
懐かしい言葉に思わずユキのを顔を見る。
すると彼女と目があった。昔と変わらない瞳だった。




