3/35
第三話
休憩室で珈琲を飲む。
若い人で通院する人は少ない。
二十代で通院してるのはこの病院でおそらく僕だけだ。
認知症の治療で精神科に来る高齢者が大半だ。
当てにならない記憶力の代わりに僕は手帳を開く。
『13:00時に受付』
その文字でようやく自分の行動に自信が持てる。
その間に本を読んだり中庭を散歩するのが僕の日課だ。
小説を読んでいる時だけは心が落ち着いた。
そこに美しさがあったからだ。
その日も僕は小説を読んでいた。
ドストエフスキーの『罪と罰』だった。
いつもの様に僕は中庭で本を読んでいた。
そうすると見慣れない女の子が歩いてくるのが目に入った。
彼女は煉瓦細工の道を歩いていた。
綺麗な女の子だと思った。