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第二十九話
「もし病気が治ったら一緒に暮らせるかな」
その返事を彼女にしたかった。
ユキはあの時以来会う事を拒む様になった。
病院の一室を借りて治療を受けてるらしい。
僕は働きながら暇を見つけては病院に来るようになった。
昔みたいに、
中庭に行っても、
談話室に行っても、
彼女の姿を見つけることはできなかった。
市松先生は心の整理が必要な時なんだと言っていた。
僕は手紙を書くことにした。
病院にくる度にそれを先生に渡した。
仕事をはじめたこと、生活のこと、
とても会いたいこと。だいたいそんなことを書いていた。
だけど手紙の返事は一度も返ってこなかった。
そうして何も起こらないないまま三か月が過ぎた。
そんな折に彼女の叔母が来院した。




