27/35
第二十七話
炎天下の中汗を拭う。こんなに穴を掘ったのは初めてだ。
何kgぐらいあるんだろう。
人が簡単に入れそうな袋はもう満杯になっている。
ヘルメットの紐を調整していると向こうから声が聴こえた。
「おーい。一服するぞー」
そう現場監督の声が空に響く。
車座になってみんな煙草をふかす。
缶コーヒーを灰皿代わりにする。
「草鹿君だっけ?」
「はい」
「この仕事キツイだろ。若いのになんでまた」
そう作業員のおじさんが快活そうに笑う。
「お金が必要になったんです」
「女かー?」
周りの作業員もあわせて笑う。
僕は少し考えた後、答えた。
「そうです。幸せにしたい人がいるんです」
そう僕が真顔で答えるとみんなはまた笑う。
お熱いねーとか。結婚なんてそんな幸せなもんじゃねえぞー。
そんな声が飛びかった。
僕は笑って頷いた。それから手帳を開く。
計算したらもう少しで部屋を借りることができる。
暑くなったのでヘルメットを取った。風を爽やかに感じた。




