20/35
第二十話
病院に行く途中。
かつての友人たちに会った。
なんでだろ。気持ちがひどく塞ぐ。
「お。草鹿じゃん」
「元気だったかよー」
「今なにしてんの?」
そう明るく振る舞う彼らと今の自分との差を思う。
「まあね。ボチボチやってるよ」
そう笑って何の答えにもなってない言葉を吐く。
自信が無いと言葉はいつも抽象的だ。
「久しぶりだな。仕事とか何やってんだよ」
「そろそろ結婚しててもおかしくねーよな」
「貯金なんぼたまったよー?」
聞かれたくない言葉ばかり。
当たり前の会話もひどく苦痛に感じる。
普通に生きてれば簡単に答えられたのかな。
「……急いでるんだ。ごめん。今度ゆっくり話そ」
そう無理して笑顔をつくり場を抜け出した。
「お、おう」
そう愛想よく頷く男の人のそばを足早に通り過ぎる。
街を駆け抜けた時に感じる風をひどく冷たく感じた。




