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第二話
先生の後に続けて悪口を言ってみる。
なんだか不思議な感じがする。
すごい口に馴染まない。
「草鹿君」
先生がぜいぜいと息を切らせた後で訊く。
「はい」
「君は酒をやるかね」
「はい。やります」
「その時。楽しい気持ちになるかね。饒舌になったり?」
少し考えてみた。
「どちらかというと重い気持ちになりますね。無口になります」
「いかんいかん!」
先生は首を強く振った。
「毒を吐かなきゃならん」
そう僕の肩をつかんで言った。
「生きている以上。必ず理不尽な人間に会う。君はそんな人間の言う事すら真面目に受け止め過ぎる」
「君は人間的には素晴らしい。それは確かだ」
僕は黙って先生の話を聞いていた。
「ただそのままでは生きることはひどく難しいだろう」
先生の後ろにある窓を雨が叩いてる。
水滴が筋になって涙みたいに流れていった。