17/35
第十七話
何が人より攻撃的じゃないだ。
しっかり人を傷つけてるじゃないか。
蟻を踏んだことに気付かないみたいに。無意識に誰かを傷つけてる。
「今日は無口だね。草鹿君」
先生が資料を読みながら訊く。
「先生は、生まれてきてすみませんって言葉知ってますか?」
彼は珈琲に口をつける。
「太宰だね」
「そうです。最近その言葉の意味を考えるんです」
気分を落ち着けるために息を吸った。
「僕は社会的に存在意義がありません」
そのまま続けた。
「働けないし。親の収入を削ってるだけです」
話してると瞳が熱くなってきた。
「他の人と上手くコミュニケーションもとれません」
先生は黙って話を聞いてくれる。
「死んだ方が良いんじゃないかって気になります」
僕は頭を掻きむしりながら言った。
「自分に価値が無いんじゃないかって」
僕が取り乱すのと対照的に先生の態度は冷静だった。




