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第十五話
解かれたくない。
だけど秘密に気付いて欲しい。
そんな心理なんてあるんだろうか。
僕は咥えていたボールペンを手に取る。
手帳に殴り書きしてみた。
市松先生が僕にユキの秘密を暗に仄めかす意味。
守秘義務違反を犯してまで?
どうして僕なんだ?
箇条書きにしてみたが考えはまとまらなかった。
手帳から顔をあげて見る。
ユキは目の前で小説を読んでいた。
一番簡単な解決方法を僕は思いついている。
本人に聞けば良いのだ。
心を壊してしまった理由を。
陽の光を浴びて小説に視線を落としている彼女は何処となく儚く見えた。




