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神様からのお手紙(転)

作者: 神崎颯

これは、「グループ小説」第十二弾、「起承転結」企画です。

 僕には時間が無い。

時間どころか金も無い。

だから四の五の考える前にとりあえず伊集院邸に突入することにした。

そして伊集院さんに全力でアピールだ。最早この人しか俺には選択肢が無い。


 どうやら伊集院さんは熱を出しているらしいので、お見舞いということで行こう。

 しかし相手は生粋のお嬢様。もしも何も持たずに参ろうものならばSPだかなんだかに射殺されかねない。


 そんな事態は避けたいので僕は花を持って行くことにした。金の都合上一輪だけだけど。

深い紫色の『バンダ』という花を買った。花言葉は『上品な美しさ』らしいので伊集院さんにはピッタリだ。



 翌日、一輪のバンダとともに伊集院邸を訪ねた。

しかし恐ろしくデカいなこの屋敷。

最早バッキンガム屋敷だよ。

一等地にこんな大きな屋敷建てられるなんて、伊集院家はどんだけ金持ちなんだ。理事長ってそんなに儲るのか。


 ええぃ、考えるな感じろ!

屋敷の前で突っ立ってたら不審者に思われるかもしれないな。とりあえず中に入らなきゃ。インターホンはこれか。ポチッとな。



――ガシャウィーンガッシャン。



 こんな機械音が鳴るインターホン初めて見たよ。


 「はい」

「あ、どうもこんにちは。伊集院彩香さんの同級生の一色翔太です。お見舞いにやってきました」

「どうぞ」


 すると何やら執事っぽいダンディなおっさんが出てきた。

「どうぞこちらへ」

「ありがとうございます」


 こうして僕は執事っぽい人に導かれるまま屋敷の突入に成功した。



 「お嬢様のご友人ですか」

「あ、はい」

いや、本当はあまり話したことないんだけど。

「お嬢様とは今後ともよろしくお願いします」

「わかりました」

きっとモノにしてみせますよ。


 そして執事っぽい人がある一室の前で止まった。

 「ここがお嬢様の寝室でございます」

「ありがとうございます」

 そういうと執事っぽい人は一歩後ろへ下がった。



 ああ、しかし緊張する。

学校ですら正面に話したことないのにいきなり寝室に訪ねるって正直どうよ。

……考えるな僕!

今は一刻を争うんだ!

ここまで来たら入るしかないじゃないか!


コンコン。


 「どうぞ」

部屋の中から声がした。伊集院さんの声だ。


 「失礼します」

僕は扉を開けた。




 部屋の中央には王族のベッドのようなものがあり、そこに伊集院さんが見えた。

半身だけ起こしているパジャマ姿の伊集院さんは新鮮で眩しかった。


 「あら、一色君」

「こ、こんばんは伊集院さん」

「一体どうしたの?」

「熱だって聞いたからお見舞いにっていうことでこの花をあげようとおもったんだけと……足りてるみたいだね」



 そう、この部屋に入った時から思っていたのだが、ベッドの周りには深い紫色の花『バンダ』がところ狭しと飾られている。

こんな中に1本だけあっても無駄だろうな。

ああ、もう単純に薔薇とかにすればよかった。



 「ありがとうございます」

「え?」

「私、バンダ好きなんですよ。だから、ありがとうございます」

「あ、そう?は、はは、そうか、良かったー」

ナイスチョイス僕!

数ある花の中からよくぞバンダを選んだ。


 「お優しいんですね」

「へ?」

心の中で全力で自画自賛してた僕は間抜けな声を出してしまった。

「クラスメイトが熱を出したからって普通はお見舞いなんて行きませんよ」

「はは、そうかな?」

なんせ僕には時間がありませんから。

だからあまり話したことのないあなたのお見舞いにも行ける。


 はっ待てよ?

これはもしかしたら好印象なんじゃないか!?


 「あのー、伊集院さん?」

「はい?」

「その……今日は伊集院さんに僕をアピールすることが出来たかなー、なんて……」

「はい。もちろんです」

三人目クリアじゃ―――!

クセのない黒髪ストレートヘアーと綺麗に整った顔とモデルのごとき体型がベストマッチ!麗しきお嬢様!

もう伊集院さんだよ。伊集院さんしかいないよ神様。


 「じゃあ僕はこれで」

「ありがとうございました。またいらしてくださいね」

「はいっ! もちろんです!」

気持ち悪い程の満面の笑みを浮かべながら僕は部屋を後にした。


 そして執事っぽい人に見送られ帰路へ。

 いやぁもう完璧伊集院さんしかいない。

他の二人には健太がいるから不安だしね。




――ピリリリリ

ん?なんだ、電話?

ピッ。


 「もしもし」

「ねぇねぇ聞いて翔太君!」

「萌ちゃん?」

電話の主は北嶋萌ちゃん。

蘇った(と思っている)健太が好きっぽいからもう諦めているんだが。

 「健太君たら酷いのよ!? 実は死んでなかったんだって!」

あぁ、僕が嘘吐いたからね。

「私、嘘吐く男の人って大嫌いなのよ」

「そうだね! 嘘吐く男って最低だね!」

……僕の嘘がばれませんように。

てか健太は嘘吐いてないんだよな。とばっちりだな。

 「もぅ信じられない! あ、そうだ翔太君。明日最新作の『エンドレス・デス・ターミナル』観に行こう!」

健太が嫌われた、ということはまだ萌ちゃんにも可能性がある。

行くしかない。

 「うん行く行く」

「じゃあ明日夕方6時に昨日の映画館に集合!」

「わかったよ。じゃあまたね」

「またねー」


ピッ。



 まだ萌ちゃんにはアピール出来る。

健太が勘違いにより嫌われたのならまだ僕にもチャンスはある。いや、むしろ映画に向こうから誘ってきたのだから可能性大だ。

明日また萌ちゃんにアピールするから、やはり萌ちゃんに……



 ――ピリリリリ

なんだまた電話か。今度は誰だ。

ピッ。


 「はいもしもし」

「ねぇねぇ聞いて一色君!」

「水野さん?」

電話の主は水野さつきさん。

金髪碧眼の健太が好きっぽいから諦めているんだが。

 「健太ったら酷いのよ!? 『やっぱり世の中B-BOYっしょ』とか言い出してスキンヘッドにしたのよ? しかもよくわからない緑のカラコンしてるし。挙句の果てには私に金貸してくれって頼んでくるのよ!?」

健太も墜ちたものだな。

何故スキンヘッド。何故緑のカラコン。何故B-BOY。

しかも金借りてまでなりたいものか?B-BOYって。

 「もう信じられない! あ、そうだ一色君。明日また資料室一緒に行って」

「いいけど、何時から?」

「夕方6時! じゃあ頼むよ!」

「えっ水野さんその時間は僕……」



ピッ。



 ……電話切られた。

どうしよう、ちゃんと断らなきゃ。



 いや、待てよ?

健太が悪態化により嫌われたのならまだ僕にもチャンスはある。いや、むしろまた資料室まで一緒にと頼まれるのはきっと頼られている証拠。可能性大だ。

これは萌ちゃんのお誘いを断っていくべきか?ううん、悩む。




 ――ピリリリリ

なんですか、普段はこんなに電話来ないって言うのに。というか萌ちゃんも水野さんもいつの間に僕の携帯番号知ってたんだ。

ピッ。


 「はいもしもし」

「翔太様でしょうか」

「はいそうです」

「私先ほど伊集院彩花お嬢様の執事でございます」

「あ、はい」

だからなんで僕の番号を知ってるんだ。裏ルートですか。

「実はお嬢様が翔太様とまたお話がされたいと」

「マジですか! いつです? とんで行きますけど」

「明日の夕方6時です。では、頼みました」

「あ、すいません! その時間は僕忙し……」


ピッ。


 ……またもや電話切られた。

なんですか、最近の人は人の話を聞かずに電話を切るのがはやってるんですか。

そんな世の中ならば世直ししなければ。

というか断らなければ。


 いや、待てよ?

高熱で病んでるときに僕と話がしたいって、これかなり好かれてるんじゃね?いや、コレは自惚れではないはず。

いや、てかこれは可能性大だろ。




 さて。

萌ちゃん、水野さん、伊集院さん。

僕の愛すべき三人の女性。

この中から一人選ばなければいけない。


 世の中って言うのは不条理だ。

最後には一つしか選べない。全てを手に入れることを許さない。

今、初めて自分の優柔不断さを恨もう。




 

 僕は、選ばなければならない。




 これまでのアピール。

これで彼女らは本当に僕に好意を抱いてくれているのだろうか。


 



 僕は、本当に誰か一人と付き合うことが出来ますか、神様。

それだけの男になれましたか。







 家に帰り、神様から届いた便箋を見つめる。

僕は、選ばなければならないのか。


『三人へアピールご苦労様です。では早速ですが下の空欄にお一人の女性の名前とお支払い金額をお書きください。あなた様の払った金額が、選ばれた女性が書いた金額より上であれば、めでたくお付き合い出来ることになります。もしも上回っていたらお知らせの手紙が来ます。

それでは、お疲れ様でした。  神様より』



 僕は12000円弱のお金を握り締めていた。

これで、あの中の誰かと……




――僕の答えは―――


起承転結小説の転。

これほどとは…

前回の承以上に時間がかかった…


では、影之兎チャモさん。

がんばってください!

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