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追放された没落貴族、拾った通信水晶で神々の配信者になる〜規格外チートと温かいご飯で古代竜もテイムして無双〜  作者: 黒崎隼人


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第5話「交差する軌跡と天上からの喝采」

 翌朝、目覚めた二人は焚き火の始末を終え、迷宮のさらに深い階層へと続く階段を降りていった。


 中層から下層へと移り変わるにつれ、周囲の空気は一段と重苦しさを増していた。石畳の隙間からはどろりとした黒い粘液が滲み出し、壁に生える苔の色も不気味な赤紫色へと変化している。呼吸をするたびに、肺の中にカビと鉄錆が混ざったような不快な匂いが入り込んでくる。


 リオンは先頭を歩きながら、全神経を研ぎ澄ませていた。


 祝福によって強化された彼の聴覚は、数十メートル先にある水滴が落ちる音のさらに奥に潜む、複数の不規則な足音を正確に捉えていた。


「ルミナ、来るぞ。前方から五、いや、六体だ」


 リオンが声を落として告げると、背後を歩いていたルミナは即座に足を止め、神々から贈られた白銀の矢をつがえた。彼女の呼吸が静まり、張り詰めた弓の弦が微かにきしむ音が響く。


 暗闇の中から姿を現したのは、全身を黒い毛で覆われ、口から緑色の有毒な唾液を滴らせている巨大な狼の魔物たちだった。血走った赤い瞳が、獲物を見つけた歓喜に不気味に輝いている。


 魔物の群れが、低い咆哮と共に一斉に床を蹴って飛びかかってきた。


「私の前を塞がないでね、リオン!」


 ルミナの凛とした声が響くと同時、彼女の指先から放たれた白銀の矢が、空気を引き裂いて直進した。


 矢は青い光の尾を引きながら、最も早く飛び出してきた狼の眉間を正確に貫いた。凄まじい魔力の衝撃が爆発し、魔物の巨大な体が後方へと吹き飛ばされて石壁に激突する。


 その光景を視界の端に捉えながら、リオンは地を蹴って前線へと躍り出た。


 彼の筋肉は祝福の力を受けて爆発的に収縮し、まるで風そのものになったかのような速度で敵の懐へと潜り込む。鉄の剣を横薙ぎに振るうと、空気を裂く鋭い風切り音が迷宮に木霊した。


 リオンの剣が二匹目の狼の首筋を深々と切り裂く。黒い血が飛沫となって空中に舞い散るが、リオンの体はすでにその場所にはなく、滑らかな足運びで三匹目の背後へと回り込んでいた。


 右から襲いかかってきた四匹目の魔物が、鋭い爪を振り下ろそうとした瞬間、ルミナの放った二の矢がその前足を深々と射抜いた。


 魔物が苦痛の悲鳴を上げて体勢を崩したわずかな隙を見逃さず、リオンは剣を真下へと振り下ろし、その息の根を止めた。


 リオンの剣技とルミナの弓術。出会ってからまだ一日も経っていないというのに、二人の動きはまるで長年連れ添った相棒のように完全に噛み合っていた。ルミナがリオンの死角を正確に補い、リオンがルミナに決して敵を近づけない。


 最後の一匹が、恐怖に怯えたように後退りをした直後、リオンの剣がその心臓を貫いて戦闘は終わった。


 どさりと重い音を立てて魔物の死骸が崩れ落ちると、迷宮には再び重い静寂が戻った。


 リオンは剣の血糊を払い落としてから鞘に収め、大きく息を吐き出した。激しい戦闘の直後だというのに、彼の呼吸はほとんど乱れておらず、額にわずかな汗がにじんでいるだけだった。


「見事な腕前ね。あなたの背中なら、安心して預けられるわ」


 ルミナが弓を下ろし、張り詰めていた表情を緩めて微笑んだ。その額にも汗が光り、エルフ特有の色白の頬がわずかに紅潮している。


「君の援護があったからこそだ。あの矢の威力と正確さには、本当に助けられた」


 リオンがそう答えた瞬間だった。


 彼の上着のポケットにしまわれていた通信水晶が、これまでにないほどの激しい振動を始めた。


 熱を帯びた水晶がひとりでに空中に浮かび上がり、迷宮の赤紫色の闇を掻き消すほどの強烈な黄金色の光を放ち始めた。


『リオン! ルミナちゃん! 今の戦闘、最高だったわ』


 アリアの興奮しきった声が、リオンの脳内で弾けた。


『神様たちのネットワークがパンクしそうなくらい大熱狂してるの! 二人の完璧な連携、華麗な身のこなし、それに互いを信頼し合ってるあの空気感! 天上界の神様たちが感動のあまり立ち上がって拍手喝采してるわよ』


 アリアの言葉が終わるか終わらないかのうちに、空中に浮かぶ水晶から無数の光の筋が降り注ぎ、リオンの体を包み込んだ。


 それは以前受けた祝福とは比べ物にならないほど、高密度で強大なエネルギーの奔流だった。


 リオンの頭の中に、未知の魔法の知識、高度な剣術の理、そして魔力の流れを制御するための感覚が、激流のように流れ込んでくる。視界が真っ白に染まり、全身の細胞が歓喜に震え上がるような圧倒的な高揚感が彼を包み込んだ。


 同時に、光の中から一本の美しい剣が具現化し、ゆっくりとリオンの目の前に降りてきた。


 柄には精緻な意匠が施され、刀身は透き通るような蒼銀色に輝いている。そこから発せられる冷気と熱気が混ざり合ったような特異な波動は、それがただの武器ではなく、神々の力の一部を切り取って作られた神造兵装であることを物語っていた。


「これが、私への……」


 リオンがそっとその柄に手を伸ばし、指先が触れた瞬間、剣はまるで主を待ちわびていたかのように心地よい共鳴音を響かせた。


 ルミナはその神々しい光景を前に、ただ言葉を失って立ち尽くしていた。彼女の瞳には、神の奇跡を身に纏うリオンの姿が、深く、決して消えない刻印のように焼き付いていた。

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