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もしとんでもロボが異世界の第三王子に転生したら  作者: とま


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第19話:セラ、騎士の誓いを口にする

 金属光の事件から、数日が経った。


 噂は、まだ消えていなかったが、徐々に落ち着きつつあった。


 ルーカスは、できるだけ目立たないように過ごしていた。




 その日の放課後、ルーカスとセラは中庭のベンチに座っていた。


 秋の風が、木々の葉を揺らしている。


 赤や黄色に色づいた葉が、地面に舞い落ちていた。




「セラさん」


「はい」


「少し、聞きたいことがあります」


「何でしょうか」


「セラさんは、なぜ騎士を目指しているのですか」


 ルーカスの問いかけに、セラが少し驚いた顔をした。


 しかし、すぐに表情を和らげて答えた。




「小さい頃から、憧れていたからです」


「憧れ……」


「はい。騎士は、弱い者を守り、正義を貫く存在です。そういう人に、なりたかったのです」


「弱い者を守る……」


「私の家は、決して裕福ではありませんでした。何度か、困難な状況に陥ったこともあります」


「……」


「そんなとき、騎士の方に助けられたことがあります。私は、あの騎士のようになりたいと思いました」


 セラの目が、少し遠くを見ていた。


 過去を思い出しているのだろう。


 ルーカスは、その横顔をじっと見つめていた。




「だから、この学院に入りました。騎士になるために」


「立派な夢ですね」


「……立派かどうかは、分かりません。でも、私にとっては大切な夢です」


「大切な夢……」


「殿下は、夢はありますか」


 セラの問いかけに、ルーカスは少し考えた。


 夢。


 それは、前世にはなかった概念だ。


 戦闘用ロボットに、夢などない。


 あるのは、任務だけだ。




「僕の夢は……人間として生きることです」


「人間として……」


「はい。感情を持ち、人と関わり、普通に生きる。それが、僕の夢です」


「……殿下」


「おかしいですか」


「いいえ。おかしくありません。でも、少し……悲しいです」


「悲しい?」


「普通の人にとって、人間として生きることは当たり前です。でも、殿下にとっては、それが夢なのですね」


 セラの言葉に、ルーカスは少しだけ胸が痛くなった。


 確かに、普通の人間にとっては、人間として生きることは当たり前だ。


 しかし、自分にとっては、それが最も難しいことなのだ。




「でも、夢は叶えられると思います」


「本当ですか」


「はい。殿下は、もう十分に人間として生きています」


「……」


「感情を持ち、人と関わり、悩み、苦しみ、成長している。それは、人間の生き方です」


「セラさん……」


「だから、殿下の夢は、もう叶っていると思います」


 セラの言葉に、ルーカスの目から涙がこぼれた。


 また、涙だ。


 しかし、今回は悲しい涙ではなかった。


 嬉しい涙だ。




「ありがとうございます、セラさん」


「どういたしまして」


「セラさんに出会えて、本当に良かったです」


「……私も、です」


 二人は、お互いを見つめた。


 秋の風が、穏やかに吹いていた。




 * * *




 しばらく沈黙が続いた後、セラが口を開いた。




「殿下、一つ、伝えたいことがあります」


「何ですか」


「私は、騎士を目指しています。そして、騎士には『誓い』があります」


「誓い……」


「はい。騎士として、何を守り、何に忠誠を誓うか。それを、言葉にするのです」


「なるほど」


「私は、今日、殿下に誓いを立てたいと思います」


 セラが、立ち上がった。


 そして、ルーカスの前に跪いた。




「セラさん……?」


「殿下、お聞きください」


 セラの目が、真剣だった。


 ルーカスは、黙って頷いた。




「私、セラフィーナ・ヴェルディは、ここに誓います」


 セラの声が、凛と響いた。




「私は、第三王子ルーカス殿下を守ります」


「……」


「殿下が危険に晒されるとき、私は盾となります」


「……」


「殿下が迷うとき、私は導きの光となります」


「……」


「殿下が孤独を感じるとき、私は傍に寄り添います」


「……」


「これが、私の騎士としての誓いです」


 セラが、頭を下げた。


 ルーカスは、言葉を失っていた。




 騎士の誓い。


 それは、命を懸けた約束だ。


 セラは、自分を守るために、命を懸けると言っているのだ。




「セラさん、それは……」


「殿下、お受けいただけますか」


「僕は、そこまでしてもらう価値が……」


「価値があります」


 セラが、顔を上げた。


 その目には、強い意志が宿っていた。




「殿下は、私にとって大切な人です。大切な人を守るのは、当然のことです」


「でも、命を懸けるなんて……」


「騎士は、守るべき人のために命を懸けます。それが、騎士の生き方です」


「……」


「殿下、お願いです。私の誓いを、受け入れてください」


 セラの声が、少し震えていた。


 必死に、訴えかけている。


 ルーカスは、その姿を見て、胸が熱くなった。




「分かりました。受け入れます」


「ありがとうございます」


「でも、一つ条件があります」


「条件……?」


「僕も、セラさんを守ります」


「え……」


「セラさんが僕を守るなら、僕もセラさんを守ります。お互いに、守り合いましょう」


 ルーカスが、真剣な目で言った。


 セラが、目を見開いた。




「殿下……それは……」


「僕は、セラさんに守られるだけの存在ではいたくありません。一緒に、守り合いたいのです」


「……」


「それが、僕の答えです。受け入れてもらえますか」


 ルーカスが、手を差し出した。


 セラは、しばらくその手を見つめていた。


 そして、ゆっくりと手を伸ばした。




「はい。受け入れます」


 二人の手が、握り合った。


 手袋越しでも、温かさが伝わってきた。




「じゃあ僕、守られる練習をします」


「え?」


「守られるのは、初めてなので。練習が必要です」


 ルーカスが、真顔で言った。


 セラが、一瞬呆気に取られた。


 そして、笑い出した。




「殿下……守られる練習って、何ですか」


「分かりません。セラさんに教えてもらえますか」


「そんなもの、教えられません」


「では、どうすればいいですか」


「何もしなくていいのです。守られるときは、ただ任せればいいのです」


「任せる……」


「はい。私を、信じてください」


 セラの目が、真剣だった。


 ルーカスは、その目を見つめて頷いた。




「分かりました。信じます」


「ありがとうございます」


 セラが、微笑んだ。


 その笑顔を見て、ルーカスの胸が温かくなった。




 * * *




 騎士の誓い。


 それは、二人の関係を、新しい段階に進めるものだった。


 これまでは、「監督役と監督される側」だった。


 しかし、今は違う。


 「守り合う相棒」だ。




「セラさん」


「はい」


「僕は、セラさんと出会えて、本当に幸せです」


「……殿下」


「人間として生きる夢を、叶えられそうです。それは、セラさんのおかげです」


「私は、何もしていません」


「いいえ。たくさんのことを、してくれました」


 ルーカスが、セラの手を握った。


 セラが、少し顔を赤くした。




「笑い方を教えてくれました。力加減を教えてくれました。怒りを教えてくれました。怖いという感情を教えてくれました」


「……」


「すべて、セラさんのおかげです。ありがとうございます」


「……殿下は、本当に正直ですね」


「嘘が、苦手なので」


「分かっています」


 セラが、小さく笑った。


 その笑顔が、夕日に照らされていた。


 とても、綺麗だった。




「殿下」


「はい」


「私も、殿下に出会えて幸せです」


「本当ですか」


「はい。殿下は、私にとって大切な人です。守りたい人です」


「……」


「だから、これからも一緒にいてください」


「はい。ずっと、一緒にいます」


 ルーカスが答えた。


 セラの目に、涙が浮かんでいた。


 しかし、それは幸せの涙だった。




 二人は、手を握り合ったまま、夕日を見つめていた。


 秋の風が、優しく吹いていた。


 葉が舞い、光が揺れ、時間がゆっくりと流れていた。




 監督役と監督される側。


 その関係は、もう過去のものだ。


 今は、相棒だ。


 守り合う、かけがえのない相棒。




「セラさん」


「はい」


「これからも、よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 二人は、微笑み合った。


 その笑顔には、お互いへの信頼と、未来への希望が込められていた。




 困難は、まだまだ続くだろう。


 教会の監察官、怪物化の兆候、様々な問題が待ち受けている。


 しかし、一人ではない。


 セラがいてくれる。


 二人で、乗り越えていける。




 ルーカスは、そう信じていた。


 そして、セラも同じ思いだった。


 二人の絆は、確かなものになっていた。


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