10 - 秒
アクティブスキル:全滅
これは、ヒカリが邪悪ルートをプレイする際の究極スキルです。リチャージ時間は非常に長いものの、敵に確実にクリティカルヒットを与え、同時に大幅なパワーアップをもたらします。これは、ほとんどの通常の敵を瞬殺し、最強のボスでさえ体力が低い状態にするのに十分な威力です。
公平に言えば、これはバランスの取れたスキルではありません。絶対的な力を手に入れたものの、かつての仲間にしか使えない邪悪な主人公の悲劇を際立たせるために、意図的に過剰に強力に設計されています。
とはいえ、彼女がこんなに早くこのスキルを取得するはずはありません。
では、なぜ彼女はこのスキルを発動するためにポーズをとっているのですか? この時点で、彼女は本当にフラビアを殺すつもりです! 彼女のスキルを持ってしても、それは避けられません!
…フラビアのスキルを強調しすぎたかもしれません。回避率が20%上がるだけだし…初撃で当てられないってわけじゃない。
本当に止めに行かなきゃいけないんだろ? 主人公が今にも必殺技を繰り出そうとしているのを、先生たちは一体何をしているんだ!?
決闘場は強力な結界で囲まれていて、音だけでなく物体の出入りも遮断されている。もし介入しようとしても、結局は結界に抵抗するだけだろう。だって、私の体力は役に立たないんだから。
「全滅」には、クールダウンが異常に長いことの他に、発生までの時間が長いという弱点がある。発動までに数ターンかかり、その間、ヒカリの頭の中はネガティブな思考でいっぱいになる。
開発者の投稿によると、1ターンは実時間で約5秒らしい。今走り出せばアリーナに辿り着けるかもしれないが、入る術がない。
…ためらうわけにはいかない。
背後から聞こえるステファヌ・タンドラの声に耳を貸さない。
1秒。
このゲームについて、私はすべてを知っている。
このスキルを、このゲームのこの段階で使えば、フラビアを一撃で確実に仕留められることを知っている。
無駄なことを言いながらも、私は剣を抜き、結界を斬りつける。
2秒。3秒。
もちろん、何も起こらない。私には、マスター・メイジが築いた結界を突破する力も技術もない。
それでも、結界はアリーナ全体に広がるよりも、一点に集中している方が強力だ。
だからこそ…
結界を繋ぐ魔力が、ほんのわずかに揺らめく。
「うぅっ…がぅ…!」
一瞬の隙間に腕を無理やり押し込もうとする。障壁は形を変えようとしたが、私の体がその隙間を塞いでいた。
4秒。
痛い。死ぬほど痛い。真っ直ぐに切り裂かなくてよかった。でも、とにかく痛い!!!!
剣の柄頭を障壁に叩きつけると、障壁は何度か揺らめく。そのたびに、私の体はできた隙間を少しずつ押し通していく。
臓器がパンケーキのように潰れないように、胸郭が緊張しているのがわかる。
横向きに障壁を突破しようと、鼻が顔面にぶつかる。
目には様々な色が点滅し、涙が頬を伝う。
まるで山の下に押しつぶされているかのような、永遠のように感じる。
私は叫ぶ。世界はただ驚愕して見守る。
5秒。 6秒。7秒。
奴らはついに結界を下ろした。だが、それは良いことでもあり悪いことでもある。このままでは、ヒカリは観客にぶつかってしまうかもしれない。
体の骨が全部折れたような気がする。
それでも、足はちゃんと動く。
自分がどちらに向かっているのかほとんど見えなくても。
まともに走る姿勢を取るのもやっとでも。
剣を握ることさえできないとしても…
8秒。9秒。
彼女に追いついた。
彼女は振り返る。
10秒。
彼女の剣が放たれた。
世界は静まり返った。