サボり日和にサンドウィッチ
恋には初な侯爵子息と、おしとやかな裏の顔はちゃっかり者の公爵令嬢の2人を主人公に、お話展開していきます
今日は青空が広がって、小鳥もさえずって、
あーサボり日和だな…
そんなことを考えながら、ぼんやり雲を眺めてた
「んー」大きく伸びをする
カサッ
"誰だっ!?"
人の気配がして、振り返る
俺が座るベンチに向かって誰かが来る気配がした
"ん?"
木陰から姿を現したのは、一人のご令嬢だった
「こんにちは。隣、いいですか?」
「え?」
「あの、他のベンチもテラスも空いていなくて…」
彼女の腕には小さなバスケットが下がっていた
"あ、昼飯かぁ"
「どうぞ。すぐに気づかなくて、ごめんね。」
1年生かな、そんなことを思いながら、彼女が座れるよう端によった
「いえ、ありがとうございます。」
彼女はホッとした様子で、ベンチに腰を下ろした。
「あの…お腹すいてませんか?」
隣の彼女がサンドウィッチを、俺に向かって差し出してきた
「ぁ、いいよ、いいよ。」
そんな、たまたま隣に座った令嬢から昼飯もらうとか、俺、何様?ってなるじゃん
「でも、お昼お持ちじゃなさそうですし…あの!それに感想ききたくて…」
「は?感想?」
「はい….今日は自分で作ってみたので…誰かに味見してほしくて………ぁ!ど、毒は入ってません!ほらっ!」
そう言って、彼女は持っていたサンドウィッチをパクついた
プッ笑
「え?私、なにか変でしたか…」
彼女はモゴモゴ、ごにょごにょ、赤くなりながら俯いてしまった
"え!ちょっと、待って?待って?泣いてないよね?"
俺は大変焦って言った
「いや、ごめんね、ごめん。馬鹿にしたんじゃなくて、あの、その、…可愛かったんだ!君が!」
こんな台詞、婚約者(正式には婚約者候補にされてるだけ)にだって言ったことないから、くそ、こっちが赤くなる!
「本当ですか?」
彼女が顔を上げた。潤んだ瞳は綺麗なピンクサファイア色だった。
「本当だよ。あー、やっぱり、ひとつもらっていい?」
「え?」
「あ、それ。」
俺はバスケットの中を指差した
「はい、喜んで!」
彼女は嬉しそうに笑って、サンドウィッチを差し出した
-トクン…-
胸の奥で何かが動く音がした
"なんだ、これ?"
「あ、ありが…とう……」
サンドウィッチを手にしたまま動かなくなった俺を不思議そうにみつめる彼女
ハッ!
「あ、いただくね」
「はい!」
彼女はまたパクパクパクと食べはじめた。
俺は彼女から目が離せないまま、ひと口かじりついた
「…うまっ…」
「ほんと?」
「ぅん…」
「よかったです!」
彼女の満面の笑みに、俺も自然と微笑んでいた
その後は、他愛ない話をして彼女とは別れた
午後の授業は魔法実技だ
ローブを着て実技棟へと移動していると、隣棟の廊下を歩く彼女がみえた
"名前くらい聞いときゃよかったかな"
そんなことを、ふと思ったとき、前を歩いてる奴らの話がきこえた
「なー、断トツだよな?あのシトリーヌちゃんの可愛さ、初々しい感じ。」
「ピンクサファイアの瞳。みつめられたら抱き締めちゃうよなぁ~」
"へぇ~、そう、シトリーヌちゃんね?"
奴らの話に、なんだかイラっとした。だから持ってた消ゴムを一人の頭に投げてやった。
「痛っ」
"ナイッス!俺!"
2人が後ろを歩く俺を疑いの目で見る
俺は、ふっと顔を廊下の外に向けてそ知らぬ顔をした。
「よ~っ、ジッルバートぉ!」
後ろから首回りに抱きついてきた奴
「おまえ、重いよ、離れろ」
「ツレナイなぁ~、なんだよ、昼前の授業うまく出席ごまかしといてやったのにさぁ」
「あー、それはそれは、ありがとうございます。」
「こーいう時のために、俺、ジルバートの声色の真似できんだよね~」
「はい、はい。で、エルヴォート公爵令息様は何をご所望で?」
「ふふふっ」
"ぅわぁ、この笑いかたは面倒臭いヤツ…"
読んでくださり、ありがとうございます。
長くはないですが、連載続けます
ご興味もっていただけると幸いです 星月きつね