表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/27

冒険者ギルドってロマンだよねの巻

 とある休日。


ティー:

「冒険者になりたい!」


ジル:

「約束してましたからね」


ティー:

「そぉう!お約束だから!」


 ティーは拳を突き上げて吠えた。


トーリ:

「ワールウィンド公からも話は聞いてるよ。推薦はぼくの名義で。条件はぼくとパーティを組むこと。――ちゃんと、聞けるね?」


ティー:

「いいぞ!なんてったって私は弱いからな!存分に守れ!!」


 ティーはこの世界に冒険者ギルドがあると知って、当然のように加入をしたがった。


 この世界の冒険者は、秘境――『エリア』と呼ばれる――を開拓したり、野獣や魔物の駆除討伐、要人の警護などを請け負う。荒事もこなすが、信用を非常に重んじる。誰でもなれるものではない。冒険者もしくは名家(貴族か有力な上級市民)からの紹介が必要であり――紹介された者が問題を起こすと推薦した者の信用問題となるため、ほいほい紹介できるものでもないのだ。


 ワールウィンド公爵は、ティーが冒険者になりたいと聞いて難色を示した。ティーが渾身のおねだりポーズwith上目遣いを決めても押し切れなかった。公爵自身は推薦をする条件は有しているのだが……。ティーが弱い、というのが理由の一つ。要するに、愛娘を危険に晒したくなかった。

 ティーは取引をし、なんとか冒険者への登録にこぎつけた。ダダにダダをこねて嫌がった王都行きを我慢する代わりに、冒険者にならせろ。と。公爵としては律儀に耳を貸す必要はなかったのだが――トーリが間に入ってうまいこと話をつけたらしく、その点についてティーはトーリに感謝している(上から目線)。


トーリ:

「ティーはどうしてそこまで冒険者になりたかったんだい」


ティー:

「お前と婚約破棄しても食っていけるようにだよ。あと公爵家から追放されたとき用」


トーリ:

「はは。ティーは想像力が豊かだなぁ」


ジル:

「トーリ殿下は語彙が豊かですね。シンプルに馬鹿って言っていいですよ」


 など和気藹々と王都の冒険者ギルドに到着した一行である。


ロリ巨乳:

「――――!!」

受付職員:

「――――」


ティー:

「なんだなんだ。モメ事か?イベント始まっちゃう?!」


 受付窓口で女性と職員が口論になっているのを見つけ、野次馬に向かうティー。


ロリ巨乳:

「冒険者になりたいのぉ!登録させてぇ!」


受付職員:

「ですから……。どなたかの推薦がないと――」


ロリ巨乳:

「そこを何とかぁ……カッコイイお兄さん」


受付職員:

「う、うーん……規則は規則ですので……」


 ロリが職員に詰め寄ろうとしている。割って入るティー。


ティー:

「どしたん?話聞こうか?」


 ティーは、誰なんだお前は?みたいな顔をされつつ二人から経緯を聞き出した。

 女性は働き口がほしいので冒険者になりたい。冒険者になるためにはコネが必要。コネはない。


ティー:

「ほかの仕事じゃダメなん?」


ロリ巨乳:

「え、えっとぉ……、あ、お金!が要るんですぅ!冒険者になるのが一番早いと思ってぇ――あたし、そこそこ強いのでぇ」


ジル:

(殿下……コイツ魔族です)

トーリ:

(だよね)


 ティーとロリが話してる隣で、ジルがトーリに耳打ちする。


ティー:

「ふーん。じゃあトーリ?」


トーリ:

「いやダメだよ?流れるように振らないでもらえる?」


ティー:

「いいじゃん。やるって言ってるんだから、やらせてみたら」


 ティーは思い出していた。昔の――転生前の記憶。就職活動である。

 ティーは――当時の彼は、意欲に欠けた人間だった。生きるためには金が必要なので、何件かの企業に応募した。面接で聞かれるのは同じような事で――「当社に入ったら何がしたいですか」「仕事のやりがいは何だと思いますか」――金が要るから働くだけ、と。仕事に私情は必要ない、と。率直に意見を述べた彼は、面接で落ちた。面接官たちはきまって同じような表情をしていた。


 トーリ視点では、会ったばかりの他人にクレジットカードを貸してやれと言われたようなものである。はい分かりましたと頷ける案件ではない。

 逆に言えば、ティーには貸せる。ということ。残念ながらティーには厚意が伝わっていない。


ティー:

「これさ、私からの推薦ってアリ?」


トーリ:

「…………アリかナシかで言えば…………ダメだよって言いたいかな」


ジル:

「――――殿下」


トーリ:

「うん……。言っても聞かないと思うし……。流石に、今すぐにはダメだよ?まだ彼女の人となりも能力も分かっていないんだから――、一旦保留で、ね。受付の方も困っているようだしさ」


ティー:

「おけ。とりあえずウチおいで?私はティー。よろしく」


ロリ巨乳:

「ぇと、えっとぉ、ありがとうございますぅ?あたしはサキって言いますぅ」

―― ピンク髪褐色ロリ巨乳 『サキ』 ――


 サキはずっと何が何やら状態であったが、どうやら後ろ盾になってもらえると察して愛想を振りまいている。

 ティーが片手を差し出すと、サキはきょとんとした。ティーは勝手にサキと握手した。


ジル:

「――――で?お嬢様の登録はよろしいので?」


ティー:

「おぉ!そうだった!登録に血とかって要る?」


受付職員:

「え…………?書類、のお手続きをいたしますね……?推薦される方か紹介状は――」


 トーリが軽く片手を挙げてウィンクした。

 ティーの冒険者登録は滞りなく完了し――、

 ティーは、とくにマジックアイテムが出たりステータスが表記されて云々などはなかったので……がっかりした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ