いろんなハビタットがある
ビオトープには、水場以外にもいろんな生息場所があり、その組み合わせでビオトープの機能が変わってくる。
要は、どんなビオトープを目指すのか、その方針次第によって変わるわけだが、水場がない分、目指す生物の種類は限られるし、誘引力の強いハビタットでないと、思うような生物が来てくれなかったりする。
たとえば、どんな大きさでもオープンな水場さえあれば、トンボの一種や二種は飛来する。
それこそ、洗面器程度の水でも、産卵しに来る可能性はあるし、水を飲みに来る鳥がいるかもしれない。
だが、単に草が生えたハビタットを作ったからといって、必ずバッタが飛来するとは限らないし、クヌギを植えただけでカブトムシが飛来するわけではない。
簡単に言えば、『誘引力の強いハビタット』というものがあって、それを中核に据えることで目的の生物種を引き寄せる可能性が高まるわけだ。
「水場」は、そういう意味で大変優秀なハビタットであるわけだが、敢えてそれを無しにしてビオトープを構築しようとするなら、水場に匹敵する『中核ハビタット』が必要になる。
この場合、俺が推したいハビタットがいくつかあるが、その条件とは何か。
「誘引力の強いハビタット」とは、すなわち「自然界では少ない条件の場所」だといえる。
つまり、どこにでもあるような条件の場所には、生物たちもわざわざ誘引されては来ないわけだ。
それと「単なる住処」ではそこに引っ越してくる理由は薄い。もともと住んでいる場所があるのに、引っ越すなどというリスクを背負う必要がないからだ。
そこに「うまいメシ」「異性がたくさんいる」「次世代の生育場所」「異様に安全」などの条件が加わることで、やって来る可能性は高まるのである。
たとえば『つる植物の棚』は、開花期には花の蜜が吸え、結実期にはそれが食料となる。大抵のつる植物は、草原のど真ん中にも森林のど真ん中にも少なく、林縁部などにしかないから、希少性も高い。しかも棚状になっていると、地上を徘徊する外敵から身を守れる「安全」も確保される。
さらに言えば、棚の下は日陰、幹の部分は樹皮や根元という別のハビタットが提供されるので、さらに構成種は増える。
『石積み+生垣』は、棚と同じ吸蜜植物としての機能に加えて、石の隙間と樹木の枝が立体的なシェルターとして機能する。石の隙間は小動物にはうれしい隠れ家で、自然界にも意外と多くない。敷地の境界として設置すれば、人間にとっても便利である。
『堆肥場』は、ビオトープ内や敷地内で発生した落ち葉や刈草、伐採木などを積んでおく場所で、腐植質食性の小動物に効果的なハビタットになる。
かなりな都会でも、ハナムグリやカブトムシの幼虫、大きめの朽木があればクワガタの幼虫なども発生が期待できる。積んですぐは、トカゲやカエルのシェルターとしても機能するし、分解が進むと、ミミズやダンゴムシ、ワラジムシ、オカトビムシ、ヤスデ、それらを捕食するムカデやハサミムシもやって来る。
まずは、こうした様々な『湿地ではないハビタット』の作り方と維持管理方法、それらを組み合わせたビオトープの楽しみ方などについて、である。