その3
●小ネタその3●
武田信玄(以下、信玄)「さて、これで軍神との戦も四度目か。そろそろ決着を付けねばならぬな」
山本勘助(以下、勘助)「お館様、わしめに考えがございます」
信玄「ほう。申してみよ勘助」
勘助「上杉殿は酒豪と聞きます故、酒を上杉の本陣に……」
信玄「ふ、む……それで上手く行くのか?」
勘助「は。必ずやこの勘助、成功させてみせまする!」
信玄「ふむ。分かったお主に任せよう勘助」
勘助「はは!」
直江景綱(以下、景綱)「殿、村人達から差し入れだそうです」
上杉謙信(以下、謙信)「んあ? 何だ? 何を差し入れてくれたって?」
景綱「酒、ですな。まあこのような酷い霧では進むことも出来ませぬし……少しくらいならば部下に分け与えても宜しいのでは? このままでは武田も動きはしないでしょうし」
謙信「おー! すっげえ大量の酒だな。いいのかな、こんなに貰っちまって」
景綱「そうですな。あまりに量が多いような気も致しますが……」
謙信「……」
景綱「民からの気持ちだということですし、部下たちも少し疲労しております。貰っておいても宜しいのではないでしょうか……って聞いておられますかな? 謙信様」
謙信「……梅干は?」
景綱「は? ありませんが」
謙信「何でねーんだよ!!」
がしゃーん!
景綱「ちょ……!! 杯投げつける事ないでしょ、殿!!」
謙信「オレの梅干はああああ!?」
景綱「越後から持ってきたのはもう殿が食べつくしたんじゃないですか~!!」
謙信「……そうだっけ?」
景綱「そうですよ!!」
謙信「梅干のない酒なんて旨味半減以下じゃねーか! どうすんだ!!」
景綱「ええ……逆切れ……? し、知りませんよ!」
謙信「ちくしょう! 梅、梅干がないと……!!」
景綱「(梅干中毒かこの人は) ではどうするのですかな? 民から巻き上げるとでも?」
謙信「んな事はしねぇ」
景綱「ですよね (ああ良かった、思考はまだ比較的まともなままだ)」
謙信「……なあ、武田の本陣なら梅干あるよな?」
景綱「は? その根拠はどこから?」
謙信「だから酒の肴は梅干って決まってんだろ!」
景綱「(殿の頭の中では決まっているんだのう……) な、何をする気ですかな殿」
謙信「取り敢えず単騎突撃して強奪してくる」
景綱「えええ!! 貰ってくるの間違いじゃ!?」
謙信「うっせーな、敵だからいいんだよ! じゃ行ってくる」
ぱからっぱからっぱからっ。
景綱「……本当に一人で行ったーーーーーーーーーー!! み、皆の者殿に続けええ!! 出陣じゃ!!」
信玄「……失敗、のようだな」
勘助「何と……わしの策が敗れるとは」
信玄「軍神のあの目、迷いがない。透き通った良い目をしている。……我にはあの目の輝きは灯らぬか……あ奴は一体何を見ているというのだ!」
謙信「うおおおおおお!!! うーめーぼーしーーーー!!!」
この戦で武田勢は多数の死者を出すことになりました。
結論:梅干の切れた謙信は怖い。