その4・5
●小ネタその4●
直江兼続(以下、兼続)「おおお! これはあの幻の書物! まさか三成がお持ちとは!」
石田三成(以下、三成)「いやいや。お前に比べたら俺の持っている書物など微々たるものだろう」
兼続「その様な事はありませんよ! いや~書物の話を出来る人が身近に居ないものでしたから、三成と趣味が同じで嬉しい事です」
三成「ふっ、俺もだ。俺の周りは筋肉馬鹿ばかりでな。吉継も書物にはそれほど興味はないようだし、秀吉様は……まあ、女性にご執心なようだし」
兼続「ああー、秀吉様は女性がお好きですよね。まあ何か一つご趣味があるだけでもいいのではないですか」
三成「あれは趣味って言うのか? 俺はおね様が不憫でならんぞ……」
兼続「女性好きというので思い出しましたが、三成は側室をお持ちではないですね。珍しい」
三成「そういうお前だって居ないだろうが」
兼続「ああ私は。本を読む時間が減るのであまり子作りに時間かけていられないのです」
三成「……こ、子作りっておま……」
兼続「正室一人でいっぱいいっぱいです」
三成「あ、ああああ、そう、なんだ」
兼続「どうしました、そんな落胆したような声を出して」
三成「いや、別に (船殿も違った意味で不憫だな……)」
兼続「三成もそう言った意味でおうた殿だけなのでは?」
三成「まだその話続けるのかよ! 違う! 俺は純粋にうただけでいいんだ!」
兼続「ほう。素晴らしいですね」
三成「……お前は違うのか」
兼続「いいえ? 私も船だけで充分です」
三成「充分て……」
兼続「いや、悪いほうに取らないでくださいよ。私も船だけを一心に愛しているということですよ」
三成「そうか……まあそれならいいが。ところで今日お前をここに呼んだのはな、別に書物の事を語らう訳では……」
兼続「ああはい、分かっていますよ。徳川殿の事でしょう。いいですよ、私は三成側に味方します」
三成「そうか!」
兼続「ただ条件が」
三成「え? 条件?」
兼続「ここにある本、全部貸してください」
三成「……いいけど、返せよ……?」
兼続「もちろんですよ~。じゃあ、あれとこれとそれと……」
三成「…… (頼む相手間違えたかも!)」
その後、関が原の戦いで三成率いる西軍は敗北し、三成は処刑された。
兼続「三成……何という事でしょう。あ、でもこれでもしかしてこの書物返さなくていいですかね……いいですよね~持ち主が死んじゃいましたし。貰っておこう」
●小ネタその5●
直江兼続の妻・船(以下、船)「うちの主人、書物書物ってそればっかりでさあ」
石田三成の妻・うた(以下、うた)「あら、わたしのとこも同じようなものよ」
船「あー主人がよく 『三成となら一晩話してても話題がつきません!』 って言っていたわあ」
うた「あら、うちもよ! 『兼続とは話が合う。特に書物の話題はつきないな』 って」
船「どうなのよって思っちゃうわよね、ちょっと」
うた「そうねー。ちょっとついていけないわ~」
船「うちの人なんて夜に書物読み耽ってるから、その、ね。夜のね……営みがねえ……」
うた「あー…………分かるわあ。うちもそんなもんよ?」
船「え、そうなの? でも石田さんとこは子どもさん沢山いらっしゃるじゃない」
うた「ふ…そういう時には人質ならぬ物質を取るのよ」
船「物質?」
うた「そう! 本を紐で縛っておいて、それを主人の前で持ち上げてこう言うの 『この新刊が読みたいのなら、今宵はお夜伽の相手をしてもらいます!』 ってね」
船「!!」
うた「そしたら取り敢えず相手はしてくれるわ」
船「な、なるほど……! ありがとううたさん! わたしも試してみるわ!」
うた「いいのよ船さん! あんな書物馬鹿亭主持った者同士協力しあいましょう!」
船「わたしたち、良いお友達になれそうね!」
うた「ええ!! 夫を手の上で転がせるようになってこそ一人前の妻というものですものね!」
船「そうね! お互い“一人前の妻”を目指しましょう!」
兼続&三成「「ぶえっくしょん!!」」
直江兼続(以下、兼続)「ん、風邪でもひきましたかね……」
石田三成(以下、三成)「俺は背中が一瞬ゾクっとした」
兼続「風邪じゃないですか? 今日はもう城に戻っては?」
三成「……戻ったら何かありそうな気がする。嫌な予感がするんだが……」
兼続「?」