その2・3
※後半信長の性格が壊れています。許せる方のみお読みください。
●小ネタその2●
織田信長(以下、信長)「市、入るぞ」
織田信長の妹・市(以下、市)「……兄上……」
信長「ふん、相変わらず辛気臭い顔をしているな」
市「……誰の所為だと思っているのですか……」
信長「ふんっ」
市「今日は何用でしょうか。気分が優れぬ故、早めに済ませて頂きたいのですが」
信長「用というほどではない。お主の娘達は元気なのか」
市「? ええ、元気ですが……それが何か」
信長「何か、ではないだろう。俺はまだお主の娘達に会ったことがないぞ」
市「会って、どうなさるのですか」
信長「別にどうもせん。見てみたいだけだ」
市「お戯れを。兄上のお言葉とも思えませぬが……」
信長「伯父が姪の顔を見たがるのがそんなに不思議か」
市「…………分かりました、呼んで参りますので少々お待ちください」
市「連れて参りました」
信長「ふむ…。一人はまだ乳飲み子か。そちらの娘がお前の長女か」
市「はい。茶々、ご挨拶なさい」
市の長女・茶々(以下、茶々)「おじうえにはお初にお目にかかります。茶々ともうします」
信長「そなたが茶々か」
茶々「はい。えっと……」
信長「どうした。言いたいことがあるならはっきり言え」
茶々「は、はい。えっと、ずっとお礼を言いたかったのです」
信長「礼?」
茶々「はい。わたしが生まれたときにこのかがみをおじうえが贈ってくださったと母上から聞きました。そのお礼を……」
信長「……」
市「兄上には私が文で礼を認めましたが、これは伯父上がくださったものだと茶々に話したら、それからずっとお礼を言いたいと言っておりまして。良かったわね茶々。ようやくお礼を言う事が出来たわね」
茶々「はい、母上!」
信長「……そのようなもの、まだ持っていたのか。早く捨ててしまえ」
市「兄上! そのような言い方!」
茶々「すてません。わたしはこのかがみが大好きですから。おじうえがわたしに贈って下さったのがうれしかったから、すてません」
信長「……ふん……」
市「あ、兄上!? どこに行かれるのですか」
信長「興が醒めた。部屋に戻る」
市「……兄上……」
●小ネタその3●
織田信長(以下、信長)「茶々はおるか」
織田信長の妹・市(以下、市)「あ、兄上……茶々でしたらここに」
信長「ふむ。茶々よ着いて来い」
市の長女・茶々(以下、茶々)「はい、おじうえ」
市「あ、あの、兄上!」
信長「何だ、そなたは呼んでおらんぞ市」
市「毎日毎日茶々を部屋に連れて、何をしておられるのですか?」
信長「お主には関係なかろう」
市「関係あります。私はその子の母なのですよ」
信長「ふん。俺が茶々に変な事でもしていると思っているのか?」
市「そ、そのようなことは……」
信長「……ふん、まあいい。茶々よ着いて来たくなければ俺に着いて来なくてもいいぞ。どうする」
茶々「……わたしは、おじうえについていきます」
市「茶々……!」
茶々「母上、ごめんなさい」
信長「ふっ。では行くとするか茶々よ」
茶々「はい」
市「兄上はああ仰ったけれど……やはり茶々に変な入れ知恵をしていたりするのではないかしら。心配でここまで来てしまったけれど」
??「市様?」
市「ひぃっ!!!!」
??「!? もっ、申し訳ございませぬ! 驚かせてしまいましたか」
市「え、ご、権六……!」
柴田勝家(以下、勝家)「はい、お久し振りでございます市様」
市「え、ええ……本当に久し振りです権六。あ、今は勝家でしたね」
勝家「呼びやすい方で構いませぬ。して、市様はどうして信長様のお部屋の前に?」
市「え、ええっと……」
勝家「用事がおありならば中に入られては……」
市「!! きゃあっ!! だ、駄目です権六!!」
ぐいっ!
勝家「!? っぐあっっ!!!」
市「そんなに前に出ては隠れている意味がなくなるではないですか!」
勝家「かっ、髪をひっぱるのは……おやめくだ……いたたたたたた!!!」
市「!!! しぃっ!!!」
がばっ!
勝家「むぐぅっ!?」
市「お、大きな声を出しても見つかってしまうではないですか! 空気を読みなさい権六!!」
勝家「むぐぐぐぐ……!」
市「……でもここからでは部屋の中までは見えないわね。兄上と茶々は何をしているのかしら……」
勝家「ぐ、ぐぐ…………」
市「も、もしかして金箔の頭蓋骨の作り方とか教えているのでは! それとも葬儀での正しい灰の投げつけ方とか!?」
勝家「…………」
市「それとももしかして!! …………って、あら? 権六?」
勝家「………………」←へんじがないただのしかばねのようだ。
市「ご、権六!? し、しっかりしてください、権六! 権六!!」
勝家「まあ、隠れておられた理由は分かりました」
市「はい……」
勝家「ですが、人の口を封じるときに鼻まで封じてはなりませぬ。息が出来なくなりますからな」
市「はい…………」
勝家「一瞬三途の川が見えました」
市「ご、ごめんなさい……本当に……」
勝家「全く、そのお転婆なところは全く変わりませぬな。嫁がれて少しは大人しくなられたかと思いましたが」
市「か、返す言葉もありません……」
勝家「まあそこが市様の良きところでもありましょう。それに今回の行動は娘御を思ってのこと。気にかかるのも仕方ありませぬ」
市「本当に、ごめんなさい。苦しかったですよね権六……」
勝家「い、いえ。そのように畏まらないで下され。某がもっと強靭な肉体をしていればこのようなこと」
市(あんまり関係ない気がするけれど、強靭な肉体は)
勝家「まあそれはさておき。信長様が娘御に何か変な事を教えているのではないかと危惧されておいでなのですな」
市「ええ。最近よく茶々を連れて部屋に篭るのです。時間はそれほど長くはないのですが、兄上が子供に興味を持つなど今までなかったことですから。どうした心境の変化かと思い……」
勝家「信長様とて人の子、ご自分の御子や姪御は可愛いのでしょう」
市「そうでしょうか……織田に戻ってから二月近くも会いにさえ来なかったくせに、今になって何故……」
勝家「……それは……!」
市「? どうしました、権六」
勝家「しっ! お二人が縁側に出て来られたようです」
市「えっ!」
茶々「今日はよいお天気ですねおじうえ」
信長「……」
茶々「このようなお天気がよい日におじうえはおへやにこもりきりなのですか? もったいないです」
信長「……茶々よ……」
茶々「? 何ですかおじうえ」
信長「……違うだろう茶々よ」
茶々「え?」
信長「俺と二人きりの時は、そのような喋り方をするなと教えたはずだ」
市「……い、一体何を話しているの兄上は。あ、あんなに茶々に顔を近づけて!」
茶々「あ、そうでした。ごめんなさい……」
信長「分かれば良い。さあ、俺と二人きりの時は……どうするんだ? 茶々よ」
茶々「でも……このようなこと、わたしなれていなくて」
信長「……すぐに、慣れるようになる。さあ……」
市「あ、兄上!? 一体何を!!」
勝家「しっ! 市様! (信長様!? いや、いくら信長様でも妹御の娘にまで手を!?)」
茶々「…………ちゃま……」
信長「ん? 聞こえんぞ?」
茶々「信長おじちゃま」
信長「!! ……そうだ、それでいい。ふ、ふふっ……よく出来ましたねー茶々!」
茶々「でも、このような呼びかた、浅井の家ではならいませんでした……」
信長「うん、そうだねーそうだねー! だからおじちゃまの前でだけだよ? そういう呼び方をするのは! 他の人の前ではしてはいけないぞ?」
茶々「信長おじちゃまの前ではよいのですか?」
信長「いいの! おじちゃまは茶々にそう呼んで欲しいから!」
茶々「そうなのですか……おじちゃまがよろこぶならそう呼びます」
信長「はあああ~~~~!!! 茶々は可愛いなああああ!!! ほんっと可愛いなあ!!!! あ、でも他の人がいる前では間違ってもこう呼んではいけないよ? おじちゃまと二人っきりの時だけだからね?」
茶々「はい、わかりました信長おじちゃま」
信長「くっはああああ!!! 可愛すぎる!!!」
茶々「きゃっ! おじちゃまくすぐったいです~」
市「…………」
勝家「…………」
信長「可愛いな~可愛いな~~~俺にも娘はいるけど茶々みたいに可愛い子は初めてだ~~~」
茶々「おじちゃまに好かれてわたしもうれしいです!」
信長「何と可愛いことを言うんだ! ほら、もっと菓子を食え! 何でも持ってきてやるぞ! はあ……市も昔はこのように可愛かったものだが……」
茶々「母上は今でもおきれいですよ?」
信長「あー顔は美人になったかもしれんが、可愛げはなくなったな。皆無だ」
茶々「かいむ?」
信長「茶々のような可愛らしさは全くなくなったということだよ。そなたの母は織田に帰ってきてから陰々鬱々とうっとおしくなったわ」
市「だ、誰の所為だと!!!!」
勝家「い、市様! しーっ! しーっ!!」
茶々「……おじちゃまは茶々もうっとおしいですか?」
信長「な、何を言っているんだ茶々! うっとおしかったらこうやって呼び寄せて菓子など分け与えるわけがなかろう! 俺は茶々の事がすっごく……好きだぞ!」
茶々「よかった! わたしもおじちゃまのことだいすきです!」
信長「くはああああ!!! 至福!! ほらほらもっと食べろ! 他にもしてほしいことがあったら何でもおじちゃまに言いなさい!」
市「……な、何あれは……あ、あれがあの兄上……? あ、め、眩暈が……」
勝家「い、市様! お気を確かにっ!」
信長「しかし、このように可愛い茶々もそのうちどこぞの骨の馬とも知れぬ男に嫁いでいくのか……」
茶々「?」
信長「茶々はどのような男が好みだ? このおじちゃまに教えてはくれないか?」
茶々「好きな男性ですか? うーん、柴田様はすてきですね」
信長「……勝家、か?…………またあのゴリラか…………」
勝家(ご、ゴリラ!? 某はゴリラとか呼ばれていたのか!?)
茶々「あとあの秀吉とかいう人はきらいです」
信長「ああサルか」
茶々「あの人は母上をいやらしい目で見ます。正直きもちわるいです」
市(ひ、秀吉め……まだ私を諦めていないのですか!)
信長「ほほう。そうだったか……それは知らなんだ……くくく」
茶々「おじちゃま?」
信長「よしよし茶々、よく分かったぞ。あのサルめは俺がそのうち人知れず始末しておこうな」
茶々「本当ですか? あの人の目きもちわるいので早めにお願いします」
信長「よしよしよしよし茶々の言う事ならおじちゃん何でも聞いちゃうぞー!! だから、勝家は諦めような!」
茶々「柴田様すてきですよ?」
信長「素敵でも何でもあやつは駄目だ。おじちゃまがもっと茶々に相応しい男を見つけてやるからなー。本当は誰にもあげたくないんだけどなー!!」
茶々「むー……わかりました。おじちゃまがそう言われるのなら」
信長「よしよし、おじちゃまに任せなさい! 全くあのゴリラめは市のみならず茶々まで……」
市「え? 私? 何の話……?」
勝家(ちょ、夢と現実が混同してますよ信長様っ!)
茶々「でもけっこんなんてまだ先の話ですよね? わたしはまだおじちゃまや母上といっしょにいたいです」
信長「うおおおお!! このおじちゃまとまだ一緒に居たいと言うか! な、何と嬉しきことか!! うんうん! まっだまだ先の話だから安心していいからねー!」
茶々「わあい! あ、おじちゃま、わたしご本が読みたいです」
信長「おおそうか! では部屋に戻ろうか」
茶々「はい。おじちゃまがこの前読んでくださった異国の物語の続きが読みたいです」
信長「おお、良いぞ! じゃあおじちゃまがまた読んでやろうな!」
茶々「本当ですか!? だいすき信長おじちゃま!」
信長「はわわあああ~~~~もっと言って~~~!!!」
市「…………な、何なの……あれは……!!」
勝家(信長様より娘御のちょっと小悪魔的なところのほうが某は怖い。なんて言えない)
市「あ、あんなの私の知っている兄上ではない……あんな兄上……あ、あんな兄上!!」
勝家「い、市様どうか落ちついて……」
市「勝家っ!」
勝家「は、はい!?」
市「私は兄上を始末します」
勝家「……は?」
市「あんな兄上、見ていられない!! 止めるな勝家! 私は兄上を殺す!!」
勝家「い、市様!? お戯れが過ぎますぞ?」
市「しかし私では兄上に勝てぬだろう……そうだ、光秀は確か兄上に不満を持っていたように感じたな。光秀を少し誑かして……」
勝家「い、市様? お市様!? お待ちくださいお市様っ!!!」
この後信長は明智光秀の手により本能寺で一生を終えることになるが、その裏で糸を引っ張っていたのが実の妹だったということを信長は知る由もなかった。