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マリーは10回婚約破棄される  作者: 隘路(兄)
第一部 王国編
9/60

第9話 婚約破棄からのデスマウンテンの戦い

 一旦、王都に戻ったわたし達は騎士団長にジュレーン城を奪還した事を報告した。


「見ろ、ローズマリー様の勇姿を!

 我らもローズマリー様の勇猛さを見習うのだ!」


「うおおおおおおおっ!!!」


 騎士団長の号令と共に雄叫びを上げる騎士団員達。


 わたしは城の外にいて、ユウちゃんが頑張ってくれただけなんだけど、みんなが喜んでくれたなら何よりだ。

 とにかくこれで魔王の侵略を一旦は押し留めた事になる。

 城の周辺の魔物は彼らがやっつけてくれそう。

 わたし達は魔王の居城に向かう事にした。


 王国は北に向かうほど、気候が冷たくなり、作物も育ちにくくなる。

 北の果てともなると、荒地と岩山ばかり。

 過酷で危険なこの山岳地帯は、いつしかデスマウンテンと呼ばれるようになった。


 魔王はこの土地に居城を築き、人間界侵略の足がかりにしている。


 ここに生息しているのは強靭で強力なモンスター達、のはずたが、山岳地帯では特に遭遇はしなかった。


 禍々しいデザインの城門が見えてきた。

 わたし達は魔王の城まであっさりと辿り着いた。

 そして、城門自体も施錠されている訳ではなく、押せば内側に開いて行く。


「じゃあ行きましょう」


 門を押し続けるわたしだったが、


「待って下さい」


 不意にシャラーナから呼び止められた。


「そのまま、中に入るのは危険です」


 わたしに駆け寄り、目の前で両手をかざす。


 シャラーナの手からかすかな光が放たれ、わたしに移動する。 


「防御の魔法です。多少の攻撃は防いででくれます」


「ありがとう。心強いわ」


 宮廷魔術師であるシャラーナの魔法の魔法なら頼りになる。

 もっともジュレーン城の戦いではわたしに危険の及ぶようなことはなかったけど。


 改めて門を押し開け城内に躍り込んだわたし達だったが、


「普通に現れたな、勇者めー」

「微妙に現れたな、勇者めー」

「逆に現れたな、勇者めー」


 上空から降り注ぐ声。

 見上げるとそこには三人の小柄な少女達がいた。

 三人ともフリフリのドレスを纏っている。

 その色は一人は白、一人は青、一人は緑だ。


「あれはハーピーですね」


 可愛らしい少女達だが、背中には鷲のような茶色い翼が生えていて、宙に浮いていた。

 人間ではない事は明らかで挑発的な言動からしても、魔王の配下だろう。


「みんな、普通にあいつをやっつけろー!」

「みんな、微妙にあいつをやっつけろー!」

「みんな、逆にあいつをやっつけろー!」


そして、部屋の中には様々な魔物達が。


「よくも拠点を壊滅させてくれたな!」


「よくも仲間をやりゃあがったなあ!」


 口々に怒声を浴びせてくる魔物達だが、そもそも人間が住んでいた場所を侵略している訳だし、お互い様としか言い様がない。


「やっちゃえ、弓矢部隊!」


 ハーピー達の合図と共に小鬼のようなゴブリン達が弓矢を放つ。


 わたしはちょっどっきりしたけど、ユウちゃんはそれを目にも止まらぬ早業で片っ端から叩き落とした。


「ひえ……」


 勝ち誇っていたハーピー達の顔が凍り付く。

 シャラーナの防御魔法の出る幕が全くなかった。


「突撃ー!」


 こちらに突進してくる魔物達。

 ゴブリンの他にも、大型の鬼である、オーガ、剣で武装したリザードマンやレッサーデーモンの姿が。

 奥にはドラゴンの姿も見える。

 かなりの人数だ。


「だ、大丈夫……?」


 心配になってつぶやくわたしだが、ユウちゃんはコクリとうなずくように動いた。


 そして、魔物の中に突っ込んで行ったが、その後は目にも止まらぬ早技で、次から次へと魔物達に斬りかかっていった。

 その斬れ味は鋭く魔物の群れは瞬く間に倒されていった。


「ええー、何なの、この剣!」


 上空のハーピー達も驚いている。


「普通にすご過ぎ!」

「微妙にすご過ぎ!」

「逆にすご過ぎ!」


 本当にユウちゃんはすご過ぎる。

 わたしなんていなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。


「ま、魔王さまに伝令〜!」


 慌てて階上へ逃げて行くハーピー達。


「これで後は最上階だけね」


「最上階って事は魔王といよいよ対決ですか?」


 そうなのだ。

 わたしに呪いを掛けたのが魔王かどうかも知りたい。

 勇者になったら午前0時になっても死ななかったけど、これで呪いが解けたという確証もない。


 もうこうなったら進むのみ。

 わたし達は魔王の城の最上階に向かった。


 ☆☆☆


 これは後で知った事なのだけど、ちょうどこの頃、勇者の剣の岩場に一人の若者が現れたらしい。


 コート王国の西の端の村に住む若者で騎士団入りを目指していたが、ある夜勇者の剣を抜く夢を見て、急ぎここまでやって来たのだった。


 彼は若くして剣技を磨き、近隣でも一番の剣士と呼ばれていた。

 自身も、誰も抜けない勇者の剣を抜けるのは、自分しかいないと思っていた。


 しかし、彼が辿り着いた時、勇者の剣はすでに抜かれた後だった。


 誰が剣を抜いたのか尋ねてみれば、婚約破棄された公爵令嬢だと言う。

 その令嬢は、すでに勇者として魔王を倒すために旅立っているらしい。


 そういう事ならと、若者は田舎にもどった。

 若者にもしも剣を抜けるか試す機会があったなら、あるいは彼は勇者になっていたのかも知れない。


 とは言え、剣を抜かなければわたしは呪いで殺されていた可能性が高い。

 わたしにはどの道、彼に勇者を譲る選択肢はなかったのかも知れない。

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