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マリーは10回婚約破棄される  作者: 隘路(兄)
第三部 銀河帝国編
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第59話 婚約破棄からの決別の時

「それにここでコート王国に帰順なんてしたら銀河帝国との休戦も反故にされるかも」


 え……?


「ど、どういう事、シャラーナ?」


「帝国が休戦条約を結んだのはあくまでマリーマリー連邦共和国です。

 その国がなくなったなら、条約もまたなくなる。


 帝国はそのくらいの事は考えますよ」


 理屈としては分かるけど、本当にそんな事になるのだろうか。


「検索しました。その予測は正しいです」


 メルテもシャラーナと同じ意見のようだ。


「過去の銀河帝国の歴史に前例があります」


「ふうっ……」


 ほんの一時、重荷を降ろす夢を見たが、それはただの夢だった。

 マリーマリー連邦共和国がなくなれば再び銀河帝国が攻めてくる、ですって。


「だったらもう選択肢なんてないじゃない」


 指導者になんて全然なりたくない。

 それでも、惑星の命運がかかってると言われたらやるしかない。


 せっかく運命シークエンスが消滅したのに、運命はわたしにのしかかってくるのをやめる気はないらしい。


「魔王の力を思い知らせてやるぜ」


「普通にやっちゃえー!」


「微妙にやっちゃえー!」


「逆にやっちゃえー!」


 今にも喧嘩を始めそうなザン。

 いつの間にか応援に現れたハーピー三姉妹までいる。


「後にしてもららっていい?」


「いでっ!」


 ユウちゃんでザンを小突き、ゼイゴス王子とマリーゴールド公爵の前に。


「父上、話を聞いて下さい」


 養父との対峙に鼓動が早まるのを感じる。


「わたしは銀河連邦議会に参加し、大統領として承認を得ました。

 マリーマリー連邦共和国は銀河連邦の一員なのです。

 その国を認めず武力を行使するというのならば、コート王国は銀河連邦の平和を脅かす存在です。

 我々はこれを打倒しなければなりません」


「ローズマリー、祖国と戦うと言うのか!?」


 ゼイゴス王子が凄んでくるが、


「我が国を承認し、お引き上げ下さい。

 さもなければ……」


 軌道エレベータから無数の飛行物体が発進してきた。


「な、なんだ、あの空飛ぶ魔物の群れは?!」


 すっかり慌てふためくコート王国一行。

 とは言え、パイロットが乗っているのはメルテの一機のみで、あとは自動操縦だけどね。


「マリーマリー連邦共和国は、あらゆる国家との平和共存を望みます。

 しかし、侵略行為には断固として抵抗します」


「ローズマリー、父の言葉に従えぬか」


 長年、絶対の存在だったマリーゴールド公爵の言葉に圧力を感じる。

 しかし、惑星の命運とは比べられない。


「服従はできかねます。

 しかし、我が国は銀河の星々との有用な取り引き材料を探しております。

 コート王国にもご協力頂けるならば、光栄でございます」


「ワシを丸め込めるつもりか?」


 公爵の目つきに怒気が混じる。


「父上こそ我々に勝てるとお思いですか?」


 目をそらさず、当然のように答える。

 戦力としてはブラフではないけど、攻撃の命令なんてできるかは分からない。


「わしに向かって偉そうな口を聞きおって……!」


「よしなに」


 どうか引いて欲しい。

 戦わせないで欲しい。

 せっかく惑星の危機が去ったのだから。


 にらみつけてくる公爵に今にも目を背けそう。

 運命シークエンスに脅える午前0時よりよっぽどドキドキしてる。


 公爵もわたしから目を離さない、永遠とも感じる緊張の時間。


「た、退却しよう、公爵!」


 それを破ったのはゼイゴス王子だった。


「目の前にあんなにうじゃうじゃ化け物がいるんだぞ!」


 初めて見る戦闘艇の隊列にすっかり青ざめている。


「わたしはこんな所に来たくはなかったんだ!」


 船に向かって逃げて行く王子。


「まったく、青二才が……」


 彼を見つめた事で、わたしも公爵も緊張が解けてしまう。


「ここまでか」


 兵士達もぞろぞろと船に戻っていく。


「ローズマリー、ワシの顔をつぶしおって」


 わたしに向き直った公爵はの顔には、もはや圧力はなかった。


「親不孝とは存じております」


 公爵がコート王国の国王に落胆される事は容易に想像ができる。

 それでも退く訳にはいかない。


「茨の道だぞ」


「それも存じております。

 父上を見て、学んでおりました。


 マリーゴールド公爵領のような豊かな場所を作る事がわたしの理想です」


「……貿易の相談なら大臣を通じてするがいい」


「ありがとうございます」


 そうわたしが言った時には公爵はすでに船に歩き出していた。


 船の上ではラーリンを従えたゼイゴス王子が公爵を急かしている。


 和解はできたが、これで父上とは完全な決別だ。

 面子を潰したという事もあるし、癒着する訳にはいかない。


 わたしは去っていく公爵の姿をずっと見つめ続けていた。

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