第51話 婚約破棄からの交渉決裂
惑星グランドに戻ったわたしは、銀河連邦加盟についてシャラーナに相談する事にした。
「コート王国に銀河連邦に加盟してもらおうと思うんだけど」
他にはつてが思い付かない。
「話が通じますかね?」
「緊急事態だって事くらい分かるでしょ」
わたしはそう思っていた。
しかし、
「今さらどの面を下げてわたしに会いに来たんだ」
ゼイゴス王子にはまともに話を聞いてもらえなかった。
「銀河の果てまで行くんじゃなかったのか?」
「それはもう行って来ました」
とは言ってみたが、それで歓迎ムードに変わる訳もなかった。
「侵略の魔の手からこの惑星を守るためなのです」
と、言ったが、
「ふん、そんな話が信じられるものか」
と返された。それならと、
「これは王国に莫大な利益をもたらすチャンスでもあるのですよ」
と、いう言い方をしてみたが、
「わたしはお前の、そういう小利口に立ち回ろうとするところが、目障りなのだ」
と、あんまりな言われようだった。
「国王陛下にはお会いできませんか?」
と一応言ってみたが、
「殿下、この女性はもう陛下にお目通りする資格はありませんわ」
なんとここでラーリンがゼイゴス王子に口添えしてきた。
いままで彼女には、曲がりなりにも「ローズマリー様」と呼ばれていた。
しかし、ここへ来て「この女性」呼ばわりでチクリと刺して来た。
「うむ、ラーリンの言う通りだ。
ローズマリーよ、おまえはもはやただの公爵令嬢に過ぎない。
早々に立ち去るがいい」
こうも取り付く島もないのでは、打つ手がない。
他を当るしかなさそう。
コート王国の支援をうけるのは難しいとしても、言って他の国には全くつてがない。
「困ったわ
どうしたものかしら」
国なんて、わたし一人でどうにかなる事じゃない。
「そうだ!
マリー様の父上、マリーゴールド公爵を頼るのはどうでしょう?」
「父上?」
「国王陛下とも仲よさそうですから、便宜を図ってもらえるんじゃないですか?」
「うーん、そうかなあ」
「そうですよ!
なんなら公爵自身に支援してもらったっていい」
シャラーナは会心の笑顔で言うけど、わたしは全然乗り気がしない。
「ゼイゴス王子に婚約破棄されて、どの面下げて戻って来たって言われるだけじゃないかな」
「何を言っているんです。
かわいい娘が戻って来たんですから会いたいに決まってるじゃないですか」
そう言われても、全然行きたくならない。
でも、他に当てがないのは確かだ。
「行ってみるしかないか」
馬車に乗ってシャラーナと共にマリーゴールド公爵領へ。
広大な田園地帯を抜け、懐かしの故郷へ。
街で最も大きな屋敷がマリーゴールド公爵邸だ。
久しぶりの生家に戻って来たわたしだったが、
「マリーゴールド公爵はお会いにならないと仰せです」
屋敷の門番からそう告げられた。
「どういう事です?!マリー様が帰って来たんですよ!」
「二度と屋敷の門はくぐらせないとの事です」
門番ももちろん顔見知りだが、あくまで、冷ややかに告げられる。
「なっ……、そんな酷い話ってありますか?!」
「いいのよ、シャラーナ。行きましょう」
憤慨するシャラーナの肩をつかみ、わたし達は時計の見える広場へ。
「そう言えばここで2回死んだなあ」
軽く伸びをする。
1回目は酷い絶望感を味わった場所だが、今は秋空の日差しが心地いい。
「マリーゴールド公爵は、マリー様が王子の酷い裏切りに遭ったって事を、知らないんですか!」
しかし、シャラーナはまだ怒っていた。
「違約金はふんだくったそうよ」
知らない訳はないのだ。
公爵は中央の情報に逐一目を光らせている。
「違約金なんかより、まず娘の気持ちの方が大事なんじゃないんですか?!
実の娘の事が心配じゃないんですか?!」
「実の娘じゃないからね」
「へ?」
一瞬、わたしの言ったことが理解できず、シャラーナの動きが止まる。
「今何て?」
きょとんとして聞き返して来るシャラーナに、わたしははっきり言った。
「わたしとマリーゴールド侯爵夫妻の間には血の繋がりはないの」




