第50話 婚約破棄からのマリーのアイデア
わたしは3度目の宇宙での冒険、10日目にして銀河帝国の侵略を阻止する事に成功した。
では、それはいかにして成し遂げられたたのか、順を追って説明しよう。
事の発端は、ファーワールドとメクハイブから、銀河の情勢について説明を受けていた時に遡る。
「銀河帝国は銀河連邦に加盟し、その加盟国とは交戦しない事を誓った」
この話を聞いた時、わたしは閃いたのだ。
「じゃあ、惑星グランドが銀河連邦に加盟してしまえば、銀河帝国は手出しできない事にならない?」
銀河帝国が停戦に至った経緯をこちらもなぞってしまうのだ。
「いい考えでしょう?」
わたしはそう思ったのだが、二人は困ったような顔をしている。
「銀河連邦加盟には資格審査がある。
どの惑星でも加盟できる訳ではない」
そりゃあそうか。
「一定水準の科学力が必要だ」
「一定って、具体的にはどのくらい?」
「恒星間貿易が可能なくらいだね」
恒星というのが太陽の事だから、他の星系との貿易って事か。
うーん、惑星グランドはその水準にはまったく届いていない。
この方法は厳しいか。
「あるいは貴重な天然資源のある惑星だね。
これならば自力で貿易できなくても、加盟できた前例はある」
「そうなの?」
「価値があると認められれば、貿易相手の方から採掘や貿易の用意をしてくれる」
それなら技術水準の問題はなくなる。
貿易する価値か。
惑星グランドに何かあるだろうか。
それに、仮にあったとしても、それを9日以内に発見、採掘できるだろうか。
「うーん、思い付かない」
なかなか上手くいかないものだ。
しかし、考え込んでいても、らちが明かない。
とにかく目の前の事をこなすしかない。
ひとまずティアラ病の特効薬をファーワールドに預け、銀河中心戦線に向かおう、そう思った。
「せいぜい高く売り付け、議員には便宜を図ってもらわないとね」
前回と同じファーワールドのさわやかな笑顔…………、
「そ、それだわ!!」
「どうしたんだい、マリーマリー?」
突然のわたしの大声に二人は驚いた。
「この特効薬で銀河連邦に加盟できない?!」
高く売り付ける、と言う言葉にピンと来たのだ。
ティアラ病が銀河連邦中で猛威を奮っているならば、これで貿易してしまえばいい。
「なるほど。
確かにこの特効薬なら、銀河連邦中で需要がある」
「しかし、ティアラ病が終結したらそれで終わってしまうんじゃないか」
「なら魔法のアイテムを他にも探し出します」
魔法文明が惑星グランドにしかないなら、何かあるはず。
新たに開発したっていい。
「そうだね。魔法文明なら何か見つかるかも知れない」
「マリー君はなかなか商才があるんじゃないか」
二人の反応は悪くない。
これも嫁入り前の政治経済の学習の賜物だ。
婚約は破棄されたけど、無駄にならないでよかった。
それから前回同様、銀河中心戦線を3日で終結し、わたしはジャーゼラ議員と対談した。
その席での事だった。
「面白い提案だと思う。
それで、どの国が銀河連邦に加盟するのだね?」
「国?」
惑星グランドから貿易価値を見出す。
それしか考えてなかった。
「個人で銀河連邦に加盟する事はできないよ。
企業での加盟も不正の温床として、現在では禁止されている」
企業と言うのは「利益を追求する組織」の事らしい。
一商店の事くらいで考えて欲しいと言われた。
個人や商店に権限が集中するのは確かによくない。
「本当は権力が世襲される王制もマイナス要因だ。
そこは惑星全体の文明レベルを理由に理解が得られないか、と考えているがね」
権力が集中するような政治形態はよくないようだ。
「わたしひとりでは決められません。
祖国で相談してみますわ」
どの国が加盟するかなんてわたしに決められる訳がない。
わたしは惑星グランドに戻る事にした。




