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マリーは10回婚約破棄される  作者: 隘路(兄)
第三部 銀河帝国編
31/71

第31話 婚約破棄からの共同戦線

「まずは名前を聞かせてもらえるかな?」


「ローズマリー=マリーゴールドと申します」


「何だって?!」


 ファーワールドは驚愕して、椅子から立ち上がった。


 わたしの名前に何か心当たりがあるのだろうか?

 宇宙に知り合いなんかいないけど。


「マリーマリーじゃないか!」


「は?」


「ローズマリー=マリーゴールドなら、ニックネームはマリーマリーにするしかないじゃないか」


 ニックネーム?

 宇宙の人々にとってはそれは大事な事なの?


「話の腰を折るんじゃない」


 メクハイブはムッとしていた。

 やっぱりファーワールドがおかしいらしい。


「話を進めよう。

 そちらのお嬢さんは?」


 メクハイブがメルテを凝視した。

 やはり銀河帝国のオートパイロットは気になる存在のようだ。


「メルテです。

 マリーに名付けられました」


「美しい名前だ。

 まるで女神の名前のようだ」


 ファーワールドは感激したように言った。

 オスの猫から取った名前だけどね


 わたしは二人にゴーディクを追って来た事と、惑星グランドが銀河帝国に狙われている事を伝えた。


「ゴーディク!

 15年も姿を見せないと思ったら、そんな所にいたのか!」


 メクハイブが驚きの声を上げた。


「あいつを知ってるの?」


「将官候補の最有力といわれていた男だ。

 こつ然と消えたと思っていたが、厄介な奴が戻って来たな」


「僕が解放軍に入った時はいなかったが、策士だと聞いた事がある」


 ファーワールドとメクハイブが相談している。

 ゴーディクの奴、結構有名だったみたい。


「それではマリーマリー、君とゴーディクの関係について話してくれるかい?」


 本当にニックネームはマリーマリーなんだ。

 それはさておき、わたしは二人にこれまでの事を話した。

 ゴーディクの事も知っているなら、有益な情報を得られるかも知れない。

 わたしは呪いの事まできちんと説明する事にした。


「時間が戻される?!」


 宇宙でもやはりこの話は驚かれるようだ。


「そう言う事か、道理で……!」


 しかし、ファーワールドは何かが腑に落ちたようだった。


「信じられるの?」


 普通は簡単には信じられない話だろう。

 彼は、時間の戻る呪いに関して、何か知っているのだろうか?


「道理で初めて会った気がしなかった。

 運命を感じるよ」


「は?」


「君とは何度も出会っていたんだね、時空を超えて」


 目を輝かせて言うファーワールドだが、


「あなたとは初めて会いました」


 わたしの目は暗く淀んでいただろう。


「おい、ファーワールド!

 話の腰を折るなと言っただろう!」


 どうやら軽口が得意な人物みたい。

 期待して損した。


「か、かいつまんだ話をすると、帝国軍の侵略から故郷を守り、あなたに掛けられた呪いを解きたいと」


「そうですわね」


 かいつまんだ話だけをして欲しい。


「ならば我々は同士だ。


 銀河帝国の支配からこの銀河を解放するのが我々の目的だ。


 共に惑星グランドを銀河帝国の侵略から守ろう」


「宜しくお願い致しますわ」


 想像もつかないほど強大な敵との戦いだったが、思わぬ助けを得る事ができた。

 こうしてわたしは銀河解放軍と共に戦う事になった。


 勝手に惑星を代表して協力を取り付けてしまったが、急を要する話なのでやむを得ない事だと思う。


「でも一つだけ……」


「何だい?」


「疲れちゃって。休んでも?」


 わたしはあくびを抑えながら言った。

 おそらく20時間以上起きている。


「もちろんさ。


 君達二人に一部屋用意した。

 ゆっくり休むといい」


 案内された部屋は二段ベッドの狭い部屋だったが、ここは軍艦の中。

 贅沢は言っていられない。


「上と下、どっちがいい?」


 とメルテに尋ねると、


「マスターを護衛するために、オートパイロットは下で寝るものです。」


 と言われたのだった。


「安心してお休み下さい」


 クタクタなのでお言葉に甘えようとしていたわたしだったが、


「そうだ、忘れてた。」


 ベッドの下の段に顔を出すわたし。


「メルテ、片手を上げて」


 メルテが片手を上げる。


「作戦成功!」


 メルテの手にわたしの手を当てた。

 パチンと音がする。


「これからもハイタッチするまでが作戦だからね」


 言っておかないとまた「自分には人権ないから」とか言って命を粗末にしかねない。


 やる事がすんで眠ろうと思っていたら、メルテが持ち上げた自分の手の平を見つめている。


「どうしたの? 痛かった?」


「痺れます」


「そう、大丈夫?」


 強く叩き過ぎたかな?


「問題ありません。


 でも、何だか体温が上昇しています」


 戸惑うメルテの姿は珍しい。


「ごめんね、乱暴だった?」


 オートパイロットの事をよく分かってないのに、不用意だったのかも知れない。


「いえ……」


 メルテはまだ自分の手の平を凝視している。


「これからもハイタッチするまでが作戦、ですね。

 了解しました」


 メルテはそう言うとようやく手を下ろして、横になったのだった。


 ☆☆☆


 これは後で聞いた話だけど、ファーワールドはわたし達が部屋を去った後、メクハイブに尋ねた。


「オートパイロットがマスターを守るために銀河帝国と戦う、なんて話が有り得るか?」


 その表情は真剣で、それまでの陽気な笑顔は消えていた。


「まさか!

 それでは兵器として使い物にならない」


 返事をするメクハイブも眉間に皺を寄せている。

 彼も思考を複雑に巡らせていた。


「オートパイロットの銀河帝国への忠誠は絶対だ。

 帝国に反乱でも起こそうものなら、ただちにマスターを殺害するようにシークエンスが組まれている」


 しかし、メルテは実際に帝国軍と交戦し、戦闘艇を撃破している。


「ではあのオートパイロットは何なんだ?

 不具合か何かなのか?」


 ファーワールドもメルテの行動は不可解でならなかった。

 メクハイブは少しの沈黙の後、答えた。


「可能性が一つだけある。

 この宙域に第12艦隊が現れた理由だ」


「通信を傍受した話か」


 帝国の通信の傍受は極めて困難だ。

 しかし、今回は緊急のためなのか、強度の弱い通信を傍受できた。


「惑星グランドを出発した高速艇からの通信。

 解放軍がこの宙域で奇襲作戦を行った理由だ。


『観測していた特異点』と言う言葉が聞き取れたらしい」


「特異点……?

 帝国が神と崇める連中と同等の力を秘めていると言うが、そんなものが本当にいるのか?」


「マリーが惑星グランドから来たと言うなら、彼女がそうなんじゃないのか?」


「その特異点の能力で、オートパイロットの命令シークエンスまで書き換えたと言うのか?」


「空飛ぶ剣を操って帝国の戦闘艇を撃墜したと言うじゃないか。

 それが特異点の力なら、彼女は無意識にそれをやっている事になる」


 空飛ぶ剣を自在に操る原動力は何なのか?

 メクハイブはそこに着目していた。


「無意識に命令シークエンスを書き換え、オートパイロットを味方に付けるくらいの芸当はやってのけるかも知れない」


「彼女にそんな力が?」


「かも知れないと言うだけだ」


 ファーワールドは全身に震えを覚えた。

 勝ち目があると思って始めた戦いではなかった。

 将来の礎になれればいいと思って、始めた戦いだった。

 しかし、ここへ来てとんでもないワイルドカードを得てしまったのかも知れない。


 銀河の命運を掛けた戦いは、大きな転機を迎えたのかも知れない。


「マリーマリーは勝利の女神になってくれるかな」


 ファーワールドとメクハイブは顔を見合わせた。

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