第24話 婚約破棄からの魔界制圧(後編)
魔竜リンドとの一騎打ちに勝利し、下僕となる事を承諾させたわたし。
と、言っても目的はあくまで背中に乗せて飛んでもらう事なので、上下関係なんてどうでもいいけどね。
しばらくすると魔王ザンとハーピー三姉妹が転移して来た。
「終わったのか?」
「ええ、もう大丈夫よ」
「本当にリンドを一騎打ちで倒すとはな」
「普通にすごーい!」
「微妙にすごーい!」
「逆にすごーい!」
こうべを垂れた真竜リンドの姿には魔王達も驚きのようだ。
「シャラーナは?」
「あの魔法使いか?
ついて来るか聞いたが、『それより近くでじっくり転移魔法陣を見せて下さい』とか言ってたから置いて来たぜ」
研究熱心なシャラーナらしい。
予定通りだし、問題はない。
問題はわたしのこれからの行動にある。
前回の失敗を生かし、ダイザ―を捕らえ、呪いの謎を解かなければ。
「ザン、リンド大事な話があるの」
わたしは前回同様、何度も同じ時間を繰り返している事も打ち明け、ダイザ―の企みを話して聞かせた。
☆☆☆
翌日、わたしは首尾よくダイザ―の罠を解除し、ザンとリンドと共にダイザーを追跡していた。
その途中、目の前の地面に魔法陣の輝きが。
これも予定通り。
「マリー様、お待た……」
「待ってたわ! シャラーナ!」
「わ?! マリー様……?!」
駆け寄って手を握るわたしだが、シャラーナはあっけに取られている。
「そうでしたか。ここでの再会もすでに繰り返しなんですね」
シャラーナはすぐに状況を理解してくれた。
「今、魔界三強の最後の一人を追い込んだところよ」
「もうですか?」
「名前は魔神官ダイザーで、本拠地はカルワリオ神殿。
さあ、行きましょう」
本当は銀河帝国のゴーディク大佐らしいけど。
とにかく、彼を追って神殿へ。
そこまでは同じ。
大事なのはその後だ。
「時間が限られているからよく聞いてね」
ダイザーは神殿の地下に向かうが、わたし達はそれを追わない。
円盤に乗って空に脱出するダイザーを待ち伏せするのだ。
「リンドは塔の外で待ってて。
シャラーナ、わたし達は塔を登りましょう」
今後のためにシャラーナには、銀河帝国の言語を学んでもらいたい。
彼をダイザ―の部屋まで連れて行く事にした。
「全速力よ!」
「待って、マリー様!
早いです……!」
天才魔術師は意外と体力がなかったが、どうにかわたし達は最上階のダイザ―の部屋の前までたどり着いた。
☆☆☆
ちょっとした魔界の豆知識。
ダイザーは本物の魔神官を殺して、魔神官に成り代わり、魔界三強に収まっていた。
しかし、ダイザーは魔神官としての、魔神復活のための活動は一切行っていない。
では魔神は存在しないのかと言うとそんな事はない。
魔神カルワリオは500年前、魔界を統一し、人間界の人間を半分以上も死に至らしめた、誰もが知っている魔界の帝王だ。
今は当時の勇者によって封印されているが、封印の力は年々弱まっていて、大掛かりな生贄の儀式で蘇ってしまうかも知れないと言われていた。
わたしもこの話は知っていて、魔王が倒されたら、全世界が力を合わせて取り組まなければならないと思っていた。
ちなみにゼイゴス王子は無関心で、「おとぎ話に興味はない」と取り合ってくれなかった。
魔界を統一したという事は、ザンやリンド達、魔界三強よりも強いはず。
復活していたら銀河帝国の襲来どころではなかったかも知れない。
そんな恐ろしい魔神だが、ダイザーによって本物の魔神官が殺され、復活は先送りになった。
魔神の危機が去ったことは喜ばしいが、わたしに呪いを掛けた事は恨めしい。
逆に言うとわたしに呪いが掛けられているから、魔神カルワリオの復活はない、とも言える。
どう転んでもわたしには困難な状況が待ち受けていたようだ。




