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マリーは10回婚約破棄される  作者: 隘路(兄)
第二部 魔界編
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第15話 婚約破棄からの魔界二強激突

 魔王ザンの城を出てしばらく進むと、昨日わたし達が転移してきた荒れ地があった。

 そこをさらに進むと盆地見えてきた。


 そこにはすでにドラゴンの群れが集結していた。

 そして、その先頭には一際大きな黒い竜が。

 魔王ザンと並ぶ魔界の実力者、魔竜リンドだ。


「来たぜ。リンド」


「待っておったぞ。

 約束通り、勇者も連れて来たか。


 さあ、二人まとめて掛かって来るがよい!」


 魔竜の、お腹に響く大きな声は、聞くだけで竦み上がりそうになってくる。


「何言ってやがる?

 サシでやるに決まってんだろうが」


 しかし、ザンは一切恐れる様子もなく前に出た。


「いい度胸だ。魔王」


 ザンの目の前に着地するリンド。

 魔界二強が対峙しにらみ合う。


「やっちまえー! ザン様」


「そんなチビ、燃やしちまってくだせえ、リンド様!」


 ザンの手下の魔族と、リンドの手下のドラゴン軍団が大歓声を上げる。


「では始めるか?」


「ああ、行くぜ!」


 ザンはマントを脱ぐとリンドに飛びかかった。

 筋骨隆々な拳から繰り出される強力な一撃。


 しかし、その拳をしっかりと受け止めるリンド。

 続いてリンドが鋭い爪で引っ掻いてきたが、ザンはそれを間一髪で回避する。


「手負いの貴様に勝っても意味がないと思っていたが、無用の心配だったな」


「へっ、お前も腕は落ちてねえな」 


「魔王よ、お前は人間界に行く事などなかった。

 ワシと戦っておればよかったのだ!」


「おれはまた必ず人間界を侵略する。

 リンド、その時はその時はおれの手下になれよ!」


「ならばワシに勝つ事だな!」


 ザンとリンドは楽しそうに戦っていた。


「ザン様! そんなドラゴン野郎、のしちまえ!」


「リンド様! 負け犬はさっさと片付けて人間界に攻め込みましょうぜ!」


 そして、魔界の実力者二人の激突にその配下達も釘付けになっていた。

 誰もが魔界の頂上対決に熱狂していた。


「早く終わらないかな」


 わたし以外は。


 わたしは呪いを掛けた奴を探したいのだ。

 あの竜はやっぱり違うだろう。

 もう一人の魔界の実力者、魔神官ダイザーとか言うのと接触したい。


「おかえりなさい、ユウちゃん」


 手頃な岩に座って戦いの様子を見守っていると、ユウちゃんが飛んで来た。


 わたしが飛ばしたのが戻って来たのだ。

 どこに飛んでもらったのかと言うと、


「普通に助かったー」

「微妙に助かったー」

「逆に助かったー」


 ハーピー達がユウちゃんの後からついてきた。

 ユウちゃんに、縛られて吊るし上げられていたハーピー姉妹の縄を、切ってもらったのだ。


 ハーピー達は、わたしの前に着地した。


「ふ……、普通にありがとう……」

「び……、微妙にありがとう……」

「ぎゃ……、逆にありがとう……」


 強ばった表情でそう言う三人。

 仕方のない事だけど。


「わたしがここを立ち去る事を、魔王達には黙っていてね」


 わたしが立ち上がるとユウちゃんも浮き上がる。


「魔王様をやっつけに来たんじゃないの?」


「もうやっつけたでしょ」


「勇者なんでしょ。


 普通に殺さないの?」

「微妙に殺さないの?」

「逆に殺さないの?」


「興味ない。

 また人間界を侵略しに来るなら、次は分からないけど」


 そんな事より、呪いを解く方法を探したい。


「じゃあね。

 リーゼロッテが心配してたから後で顔を見せてあげて」


 立ち去ろうとするわたしだったが、


「普通に待って」

「微妙に待って」

「逆に待って」


 ハーピー達に呼び止められた。


「わたしはケライノー」

「わたしはアエロー」

「わたしはオキュペテー」


 はにかんでいるハーピー姉妹。


「ローズマリーよ。マリーと呼んで」


 わたしは笑顔で答え、ユウちゃんと共に立ち去る事にした。


「そろそろ決着といくか……」


「よかろう。

 今回はなかなか楽しめた」


 一方、ザンとリンドの魔界頂上決戦はついにクライマックスを迎えようとしていた。

 傷だらけで不敵に笑い合う両者、そして……。


「どりゃあああ!」


「ぬおおおおっ!」


 魔王と魔竜がお互い目掛けて突進する。

 魔界最強の両名の裂帛の気合いの激突の瞬間だ。

 しかし……、


「な、何い!?」

「ぬぐう!?」


 二人の間には両刃の剣が浮いている。

 勇者の剣、ユウちゃんだった。


「この剣はっ? 誰だっ?!」


「マリー! てめえか?!」


 その方向に、片手をかざしていたのは紛れもないわたし。

 そう、わたしがユウちゃんを投げつけたのだ。


 そして、こうなってしまうと、当然ザンとリンドはわたしに注目する。


「どういうつもりだ、てめえ!」


「わしらを一度に仕留めるつもりだったのか?!」


 激昂する二人だったが、そんなつもりなど毛頭なない。

 さっきまでは本当に立ち去るつもりだった。


「普通に違うよ、魔王様!」

「微妙に違うよ、魔王様!」

「逆に違うよ、魔王様!」


 ハーピー姉妹が声を張り上げる。


「狙ったのはこれだよ!」


 三人の向かって行った先の岩壁には、白く輝く光の剣が刺さっていた。


 魔王と魔竜に向かっていたものだ。

 立ち去ろうとしていた時に、わたしはこの光の剣に気付き、ユウちゃんで弾いたのだった。


 この場を立ち去ろうとする瞬間、二人を攻撃しようとする人影に気付いたからだった。

 高台にいる黒いフードをかぶった姿に。


 岩壁に突き刺さった白い光の剣は、次の瞬間には消えた。

 だが、わたしの目は、光の消えた穴を凝視していた。

 全身に寒気が走る。


「あれは……!」


 それは見覚えのある光だった。

 同じ輝きにわたしは背中から胸まで貫かれた経験がある。

 致命傷を何度も負わされた経験が、ある。


「もう一息だったものを……」


 そして、相手もわたしに釘付けになっていた。


「■■■■■。

 もう現れたか、ローズマリー=マリーゴールド……」


 その人物は、確かにわたしの名前を呼んだ。

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