フランスのカフェ
フランスのカフェ
1972年、シャンゼリゼ大通りにある日本の航空会社と言えば、当時、日本人なら知らない人は居ないと言われたJALだが、そこに勤める知人の昼休みの時間を利用して会う約束をした。彼は私を近くにあるカフェに誘ってくれた。
「悪いけどカウンターでいいかい?」と断って、カウンターへと向かった。
この時が私の人生初めてのカウンター席であった。
「カウンターはテーブル席と比べて安いんだよ」と彼は説明を付け加えてくれる。
その時、コーヒーを奢ってもらったが、豆を挽いたもので濃いのなんの!いわゆる日本で慣れていた薄いコーヒーではない。この濃いコーヒーは、始めのころは慣れないため2杯も飲めば腹痛に悩まされたが、慣れて来るとこのエクスプレス(エスプレッソ)というのが美味しくて仕方がない。
フランスではご存知のようにカフェテラスが有名である。さて、カウンターとテーブル席で同じ飲み物でも値段が違うと述べたが、加えて一流のカフェ、あるいは、巨大なテラスを所有のカフェでは、1物3価方式と言って、テラスの値段も違う。
値段表のモデル。左からカウンター席、店内座席、テラス席。
テラスは、街路に面し、歩道にせり出してテーブルと椅子が置かれている。春、初夏、秋など気候が比較的温暖な時期には、一般に屋外の席のほうが好まれ、テラスから先に埋まる傾向があり、又、客は道を行き交う通行人の姿や季節で変化する街路樹などをさりげなく鑑賞しつつ、同席の人と時の話題について談笑したり、あるいは独りでぼーっとしたり、ゆっくりコーヒーを飲んだり、ノートパソコンで仕事をしたりする。
次々と視界に入ってくる新たな通行人の姿などにも刺激されつつ対話をすると、自然と話題が広がってゆく。逆に客があえて外界と途絶したい場合は、店の最奥あたりに陣取るという自由もある。カウンター内の従業員と馴染みの人などは、カウンターでいつものたわいのない会話を楽しんだりする。
夕食前に軽く一杯飲みながら、おしゃべりを楽しむフランスの習慣「アペロ」というものがある。仕事帰りに仲間と、あるいは、レストランへ行く前に待ち合わせのカフェで一杯というのが粋なフランス人にふさわしい。
初夏のカフェテラス (パリ、2023年6月8日)