表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイス・ドロップの氷の罠  作者: おーみら
商売は首都にて
7/9

7

着いた先はロストレザンの入り口。


「本当に……あっという間ですね」


ノアは驚いた様子で呟いた。


「でしょう?さて、ノア。ここからは二手に別れましょ」

「と言いますと?」

「私は出店の場所の確認をしてくるから、ノアは宿屋の宿泊手続きをお願い」

「いいですけど、シィナ。貴女一人で大丈夫なのですか?」


そう問われどういう意味だ、と聞き返す。


「首都ですし、人にのまれやしないかと」

「失礼だな……大丈夫よ!これでも何回か来たことありますしー」

「ほう?」

「ノアこそ迷子にならないでよね」



そう言って以前来た時に貰ったマップを渡す。とりあえず宿屋にマルをつけておいたので、これで行けるだろう。



「ここからそう遠くないですね」

「うん。私はこっちの大通りに行くから、手続き終わったらノアは首都見学でもしてていいよ」

「いえ。終わったらシィナの元へ行きますよ」



そうさらりと言う。そしてノアが指さしたのは、大通りの入り口辺り。宿屋からそう遠くない位置だ。



「ですから待ち合わせ場所は、ここの噴水広場で良いですね?」

「わかった。じゃあそこで待ち合わせて、あとでお昼食べに行こう」



私がそう言うと、ノアは少し嬉しそうにはい、と返事をした。


このところ、ノアの感情がよく見える。来たばっかりの頃は口をへの字に曲げてたし、今でも怖い時あるけど、来た時よりは穏やかな空気を纏っている。


まあなんというか、ツンツンしてるより良いんだけども。

では、ちゃっちゃと事務的なことを終わらせて、ノアとごはんに行きますか。





私は大通りの緑の旗の立つエリアに来た。ここがちょうど出店エリアである。この旗が立っているエリアならどこにでも店を出して良いそうな。


悩んだ末、私は大通りから王城へ続く道の端に場所取りをする。まあ、大通りの端とはいえ、移動の境目の道だからここでいいかな、と。近くにいた監視員に出店登録をお願いし、無事場所取り完了した。



あとはノアとの待ち合わせ場所に行くだけだけど端から端への移動になってしまった。


大通りの出口に店を構えて、大通りの入り口で待ち合わせって位置的には微妙だったかな……まあいいや。



通りを歩きながら、辺りを見渡す。人と人とが交流しあって良い光景だ。私の家はどっちかというと閑静な場所だから、こういう所に来ると少しワクワクする。



せっかくの王立祭だし、色々見て回りたいなー。ノアは何がみたいかなーと思って歩いていたら、もし?と、声をかけられた。



「失礼、お嬢さん」

「はい?」


そこにいたのは真っ赤な髪の男性だった。赤い長い髪を一つに結っている。腕には金の腕章をしていた。


「……何か、ご用ですか?」

「突然申し訳ありません。少々、お尋ねしたい事がございます」


礼をとって、対峙する。丁寧だがどこか有無を言わせない辺りさすがと言ったところか。


あの金の腕章は、王宮に仕えるいわゆるお役人さんだ。そのお役人さんが私に話しかけてくるって事は……職質以外の何ものでもない。いやいやいや。私、なーんにも悪いことしてないのになんで!?怪しいところも何もないじゃない!



「なんでしょう……?」

「ああ、すみません。どうか警戒なさらないで下さい。これは職務というより……少し気になっただけですから」

「……はい?」

「恐れながら不穏な気配を感じましたので。そちら袋から」



そう指さされたのは、私の荷物入れだ。中に入っているのはお財布、ハンカチ、小物入れ。ハーブや石鹸やらは、さっきノアに預けたからない。不穏な気配、って言うと。



「もしかして……これですか?」


私は小物入れに入れてた魔術石を取り出す。


「あぁ、それです。それをどちらで手に入れたのですか?」

「え、ああ……これはノットベイから採取しました」

「なんと。では貴女は魔術師ですか?」

「いえ。私はしがない草花屋です」



嘘は言ってないぞ。しかし、どうもつっかかって来る。この赤い髪の人。一体、何が知りたいんだろう。私が魔術師かどうかっていうよりは、この魔術石が気になってそう。うーむ。


だが、これはあげられないのだ。理由はさておきあげられない。



「あの、私待ち合わせをしていて。もう行ってもよろしいですか?」

「ああ。申し訳ないです。ではこれを」



そう言って、私の目の前で縦一直線に手を振る。



「なんです?」

「おまじないですよ。王立祭が楽しめるように……魔除けと言ったところでしょうか」

「そう、ですか。すみません、失礼します」



なんだか嫌な感じがして、私は足早にその場から離れる。まじない?魔除け?私は魔術には詳しくないが、それが良いものか悪いものか見分けるくらいの審美眼はある。


あれはたぶん、悪い方のものだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ