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アイス・ドロップの氷の罠  作者: おーみら
商売は首都にて
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うちは草花屋だが、なにも薬草ばかりを育てているわけじゃない。見て楽しむ花だって育てるし良い香りのするハーブだって育てる。庭に咲いている花をぶちぶちと抜いていれば、家の方からシィナーと名前を呼ばれた。



「はーい」

「どこですか?シィナー」

「こっち。庭だよー」



そう返事をしたら、ざくざくと足音が聞こえてきた。

今日はお店はお休み。週に一日半、お休みを取ることにしている。毎日開けてても、そう頻繁に人が来るわけでもないしね。


「見つけた。今日はなにをしているんですか?」


ノアが腰に手を当てて私に尋ねてくる。


「シロップ摘み」

「シロップ?」

「このハーブすごく良い匂いがするんだ。石鹸の材料にしようと思って」



シロップ花をノアの花に近づける。くん、と鼻を吸うと少し眉間に皺を寄せた。なぜだ。



「……めちゃくちゃ甘いですね」

「石鹸にすると程よい香りになるのよ」

「しかしまた、何故石鹸を?」

「ふふふ。それはね」



近々、王立祭がある。

首都・ロストレザンにて行われるお祭りだ。まあ、そこでだ。石鹸とかハーブとか……つまり出店を出して商売をしようという話だ。



「ロストレザン、ですか。どの辺りですか?」

「ここからだとミラレ町から転移魔法かなぁ。辻馬車だと遠いよ」

「ふぅん……」



ノアは考え込む。あれ、なんだかよく分かってなさそう……?


そういえばロストレザンって終戦した時に付けられた名前だ。それこそ、この国に平和をもたらしたとされるロストレザン卿に因んでいる。そう呼ばれる前はたしか……。



「首都・レレリーって言えばわかる?」

「!ああ、レレリーから名前が変わったのですね」

「そうそう。けっこう昔だよ」

「ちなみにどのくらい前に変わりました?」

「百年くらい前」

「なんだって……ああ、いや。すみません。そうですか。だいぶ昔なんですね」



ノアはちょっと難しそうな顔をして黙り込んでしまった。そりゃあ自分が百年前の人間だと分かればちょっとびっくりするよね。


私も今、わりと長い時間が流れていたことに驚いている。

そう考えたら、ノアの家族や例えば恋人とか友達とか。もうノアの知り合いという知り合いは何処にもいないのだろうか。



「シィナ。どうしたんです?変な顔してますよ」

「え?あ、いや。なんでもない」


そういえば私、ノアの事あまりよく知らないな。


「王立祭までもう少し時間があるし。他にも商品考えようかな」

「ブーケはどうです?あとはドライフラワーとか」

「ブーケかぁ……うまく作れるかな」

「お手伝いしますよ。女性に人気が出そうな店になりそうですね」


そう言ってノアは少し楽しそうにした。

まあ商品うんぬんに限らず、ノアがいたら女性客たくさん来そうだなと思った。


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