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アイス・ドロップの氷の罠  作者: おーみら
困ったことに風邪薬がない
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草花屋と氷のお城の続きです。お楽しみ頂けたら幸いです。


草や花が生きるにはそれに合った気候と適度な水と栄養が必要である。中には魔力を必要とする花もあれば、魔力が毒となる花も存在する。

この国には扱いの難しい花や草を専門に取り扱う草花屋がある。それは、(せん)草花屋と呼ばれる草花屋であり私の営むお店である。



「クレメンソールですか?大量に?」

「はい。こちらのお店は選草花屋とお見受けします。貴店であれば用意できると思い参りました」

「確かに用意はできますが……大量に、とはどれくらいですか?」

「ざっとクレメン薬を百万個用意できるくらいの……」

「ひゃっ、百万!?」



桁外れの数字に声をあげてしまう。クレメンソールから作るクレメン薬一つには、クレメンソールが十個必要になる。ちなみにクレメンソールも中々珍しく貴重なので、一回の採取で取れる量は多くても三十。



「その、長い時間かけて納品……という形なら可能ですが」

「そうですか……いえ、勝手を言って申し訳ないのですが出来れば一ヶ月ほどでお願いしたく」



無理だ。それは無理すぎる。


それなら世界各国からかき集めた方が早いんじゃないか?と思うがそうも言っていられない様子だ。とにかく急いでいる、という雰囲気。


「一ヶ月はさすがに難しく……」

「そうですか……そうですよね」

「差し支えなければ……その急ぎの理由を教えてくれませんか?何か力になれるかもしれません」

「はい……これは我が領地の問題となってしまうのですが」



つまり簡単に言うと流行病の薬が足りないらしい。

風邪の症状は出ているのだが風邪薬では効かなかった。

だから万能薬と有名なクレメンソールを使って特効薬を作ろうとしているとの事。



「確かにクレメンソールは万能ですが、効かぬ病もあります。一体どのような流行病なのですか?」

「おそらく……カレカレ病なのではと」

「それでクレメンソールなのですね」



カレカレ病はほぼ風邪と同じなのだが、喉の症状がひどい事で知られている。罹患中は喉の炎症、後遺症として喉のしゃがれ、声のかすれが残ってしまう。


特効薬で有名なものにクレメンソールを使ったクレメン薬がある。ふむふむ。



「そういった理由だったのですね。……申し訳ありませんが、用意できるクレメンソールは一ヶ月で二百五十個が限界かと」

「そうですか。いや、それでもありがたい。どうかお願いいたします」



そう言ってお客様は帰路についた。一ヶ月。どれだけ出来るか分からないけど、できる力になってあげたい。しばらく大きな依頼は受けないようにしないと。



「シィナ。いいのですか?」

「あれ。お帰りなさいノア」



いつ帰ったの?と聞けばついさっきですと返される。

プラチナブロンドの髪の毛を光に反射させているのが眩しい。



「いいって、依頼のこと?」

「一ヶ月、この依頼にかかりきりになるのでしょう?」

「うん。でも一日に採れる量は限りがあるから、大きな依頼がなければ大丈夫。お店は時短営業になるけど」

「俺が店番してましょうか?」

「ううん。ノアには一緒に採取について来て欲しいの。ちょっと危険なところかもしれないから」

「は?」



ノアの声が低くなる。ひっ。なんでよ。



「危険な場所に行くと分かっていながら依頼を受けたんですか?」

「ち、違うよ……?その、ちょっとおまけで欲しい物があるだけで。それがちょっと危なそうな場所にあるだけで」



そうだそうだ!決して危ない依頼だったわけじゃないぞ。私はノアに怒られる理由はない!



「驚きました。まさか自分の身を顧みていないのかと。もしそうなら、この依頼、断るところでした」



ノアはにこりともせず、そう言い放ち、自分の仕事に戻って行った。


本名はノア・フルクウェス・イヴというらしい。彼は古城・グーンスフィアにある氷柱に閉じ込められていた男性である。どうやら彼は呪いとやらであの古城の氷に長い間、閉じ込められていたらしい。今では私の家の居候である。


目を閉じるとあの日の光景が目に浮かぶ。氷に閉じ込められたあの人は、見惚れるほどの美しさだった。


だが最近は美しさではなく恐怖が勝る時がある。

時々、本当に時々、鬼みたいな形相になる時があり、それは私が無茶な依頼を受けたり、無茶な依頼を受けたり、無茶なことを言い出す時だ。

ええ、分かっていますとも。そりゃ鬼の形相をしたくなるのも。でも仕方ないじゃないか。草花を必要な人が、必要な時に、必要な分を欲しがるのだから。


私だって、本当に無理な時は受けないよ?でも頑張ればできる依頼はなるべく受けてあげたい。そう思っての行動なのだ。

分かってくれノア。


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