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僕は超能力者です

掲載日:2023/01/21

僕は超能力者です

所謂、不可能と言われる事象の全てができます

透視、瞬間移動、空中浮遊、精神干渉、サイコキネシス、予知、etc…

やろうと思えば、地球に隕石を落として人類を滅亡させる事も簡単だけど、わざわざする必要もありません

普通に学校に通って、たまに居眠りもするけど授業を真面目に受けて放課後は同じ帰宅部である友人とぼけっとしながら過ごす

研究機関で体中刻まれて人権を失う事もなく、かと言って能力を活かしてこの世にある欲望の限りを尽くす訳でもなく、淡々とした毎日を繰り返すこの日々が1番

超能力者の何がいいって平穏な生活のありがたみを知っている事だと僕は思います

「達観してるなぁ」

僕の言葉に友人が言います。

この薄い内容をどれだけ引き延ばせるかに挑戦しているのが、僕の友人で僕が超能力者だと唯一信じてくれた人です。

まだ超能力を上手く使いこなせてなくて、みんなが超能力を持っているものだと思っていた時期が僕にもありました。

そんな時にみんなに引かれていた僕を唯一受け入れてくれた人なので僕の貴重な放課後を反省文で潰されていますが許してあげます。

さすがに3回目となると色々思う所はありますが、僕を受け入れてくれことを今でも感謝しているので付き合ってやります。

友人は寂しがり屋で1人で帰るのが嫌らしいんです。もちろん一人で学校へ行くもの嫌らしいので登下校は毎回付き合わされます。

まあ今日は好きなドラマの再放送もないですし。

仏の顔も三度までって言いますし。

今日は天気がよくて雨は今週は降りませんし、グラウンドでは野球部が小さな豆人形みたいに動き回ってて

「ああ、平穏っていいなぁ」

窓の外を見て呟く僕にまだ用紙の半分が真っ白な友人は「そりゃ、結構な事で」と言いました。


                     ×


俺の友人は超能力者らしい。

らしい、と言うのは奴が超能力を使うとこなんて見たことないし、奴自身「平和が一番」と言って昼寝が趣味で全くもって超能力者らしからぬ素振りなのだ。

でも、俺にとっては友人がそういう風に成長してくれたことがありがたかった。

正直、誰にだって自分が超能力者だと触れ回る友人をフォローするのは大変だったし、いろんなところに顔を突っ込んで自ら危険な目に遭いに行く友人を止めるのは心労、体力、どっちも限界だった。

そんな俺に友人は「でも、僕死のうとしてないから死なないよ?」と不思議そうに首をかしげていた。

それが一番怖かった。

友人は自分は死なないと思っているから恐怖も何もないかもしれないが、そうではない事を俺は知っている。

ぶたれれば顔は赤く腫れあがるし、転べば血が出る。

それらが目に入らないようで友人は全く気にしてないように立ち上がる。

痛覚がどっかにいっちまってるんだろうか。と驚く俺ににこりと笑ったあいつ。

俺の友人は超能力者らしい。

そして俺はそれを信じているふりをしている。

下手に否定してしまえばこいつがどんな反応をするか、もし俺の一言でこいつの心の均衡が崩れてしまったら、どうなってしまうか。

それを恐れて俺は友人に自分の本音を言えないでいるし、こいつがいつかその事に気付いてそれを受け入れる日が来るまでそれを言うつもりはない。

俺の友人は心の病気なのだ。

自分が超能力者だと思っている。

両親から酷い扱いを受けても「僕が超能力者だから」と済ませていた。

それが奴なりの自己防衛だった。

今は親戚の家で暮らしているらしい。

そう聞いて安心して泣きそうだった。

そんな俺を見て友人は他人事のように笑った。

眠そうに欠伸をして外を眺めている友人をあの頃の自分に見せてやりたい。

疲れて、へとへとになってそれでも自分がいないと、こいつがどうなるか分からないと思って必死だったあの頃の自分に今の穏やかな友人を見せてやりたい。

「ああ、平穏っていいなぁ」

「そりゃ、結構な事で」


                      ×

「あのさぁ、いつになったら終わるの?」

「3回目にもなると前に使ったフレーズが使えないんだよ」

「語彙力の少なさ」

「うるさいな」

「そんなんでお医者さんなんてなれるの?」

「なるようにしかならないだろ、、、って俺、言ったっけ?」

「前から思ってたんだけど、きみに医者は似合わないと思う」

「似合う似合わないの問題じゃないだろ、いや、それより」

「ケーキ屋さんがいい、パティシエなんかどう?」

「もっと似合わないだろ、いや、だから」

「そしたら、僕は君から試作の味見を頼まれて、毎月毎月美味しい物を食べられて幸せなんだろうなぁ。お腹周りは怪しいけど」

「なんだその妄想は」


「妄想じゃないよ、未来予知さ」


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