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感情コライド  作者: 花園タケ
第二章
8/8

ハーツ校へヨウコソ!


 

 3月 東京都横浜市 ハーツ高等学校にて。

 

 見上げるほど大きくそびえる厳重そうな門の前に、四人の若者が集まっていた。

 その中の一人は大地である。もちろん、別の三人とは初対面だった。

「ねぇあんた、一番早く来てたけど、何でここの門開いてないのよ。フツー新入生は歓迎されるべきじゃない?」

 四人の中でひときわ目立つ濃いピンクのツインテールをした女子が、隣に立った仏頂面の男に話しかけた。

「……あ? 知るかよ、さっそく試されてるか何かじゃねぇの」

 男はジロっと睨んで、ぶっきらぼうに返した。

「はぁ……? 何あんた! 初対面なのに無愛想ね!

 あんたみたいなヤツがハーツ校に入学できるとは思えないわ」

「……っるせぇな、チビ」

 男はため息まじりにボソッと呟き、そっぽを向いた。

「なっ、だ……誰がチビだってぇ!!?」

 ピンク髪の女は顔を真っ赤にして、声を張り上げた。

 

 その火花が散りそうなやりとりを、大地はキョロキョロと交互に見ていた。

 そしてその後ろからぬっ……と顔を出した人物が小さな声で話した。

「……っあ、あのぉ…………。

 ……9時からだから、まだ開いてないんじゃないかと思いま……」

「『あぁっ!!??』」

「すみません!!!!」

 ぼそっと呟いたボサボサ髪の男に、揉めていた二人がギロッと睨み、火の粉が飛んできそうで、瞬時に謝罪し、また大地の後ろに隠れた。

「えっ?」

(びっくりした……気配に全然気づかなかった……)

「お前、いつからオレの後ろにいたんだ?」

「へっ?! ぼく? ……すっすみませぇん‼︎

 ……隠れるのにちょうど良くて……」

 ただ聞いただけなのに、ボサボサ髪の男は1メートルくらい後ずさり、慌てた様子でペコペコと頭を下げた。

「いや、全然良いんだけどさ……びっくりして」

「すみませぇん……勝手に隠れて……」

 下を向き申し訳なさそうにする彼に、大地はいささか困ったように笑ってから、近づいた。

「そんなペコペコしないでよ、同じ歳なんだし」

 ボサボサ髪の男は反射的にまた退きそうにしたが、大地から敵意は感じなかったため立ち止まって「はいぃ……」と小声で頷いた。


「お前、名前は?」

「……あ、亜蒙刀心(あもうとうしん)です……」

「オレは樫木大地、よろしく」

 大地が手を前に差し出すと、刀心は一瞬固まったものの、おずおずと自分も手を差し出した。

 握手を交わしてから、大地はまだ言い合っている二人の方につま先を向けた。

「……なぁ、お前ら喧嘩しないで仲良くしろよ。同い年だろ全員。

 こいつの言う通り、まだ時間なってないし」

 大地が平然とした様子でそう話しかけると、二人はまたしても同時にギンッ‼︎と睨んだ。刀心は大地の後ろに隠れる。

「……何、あんた。偉そーに。

 別に喧嘩なんかそんな子供じみたことしてないわよ」

 ピンク髪の女は、ふんと軽く鼻笑いであしらった。

「…………コイツが勝手に突っかかってきただけだろ」

 無愛想な男は、よそを見てそう呟いた。

「……まぁ、まずは名前教えてくれよ」

 初対面にして呆れそうになった大地だが、苦笑いをしてそう言った。


 するとピンク髪の女は、腕を組んだままだが、大地達のほうを向いて口を開いた。

「……桃井」

 彼女はそう短く名乗った。

 フルネームは桃井いのり。濃いピンクの長い髪のツインテールに桃色の目をしており、低身長だが厚底のブーツをはきそれでいて……150cmといったところだろうか。小柄だが、強気な雰囲気は一目で感じ取れた。

 そしてもう一人の方はというと、そっぽを向いて黙ったまま、名乗る様子はなかった。

「あんたねぇ……!」

 大地がツッコむ前にいのりが割り込んだ。

「無愛想にもほどが……」

「馴れ合うつもりはねぇ」

「はぁ? 何が馴れ合うつもりはねぇ、よ! カッコつけて」

 いのりがその態度にカチンときて、男の言い方を真似てケチつけた。

 だが、男は言葉を返すことはなく黙ったまま門のほうを向いた。

「……む……ムシぃ? あんた今無視した? ねぇ、おいコラ!」

 湧いてくる怒りに、いのりの口角がピクピクと動いた。

「…………るせーな。俺は自己紹介とかぬりぃことするほどヒマじゃねぇんだよ。

 さっさとここに入って、さっさと合格して、ハーツになんだよ」

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