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感情コライド  作者: 花園タケ
第二章
7/8

黒いカゲ

 

 大地がハーツ高校への仮入学が決まった同時刻、新宿辺りの薄暗いアジトの中で、二人の男が剣を交えていた。


「ふぅん……ようやく動きだけは様になってきたナァ? アオイ」

 フードを深く被ったローブの怪しい男が、ニヤリと口元だけ覗かせる。

 竹刀で繰り広げられるその競り合いは、ぎりぎり肉眼で見える素早さだった。

「はい、ありがとうございます。 でも、」

「まだまだだけどナァ? 俺からまだ一本も取れていない」

 アオイが言おうとしたことを、わざと嫌味のようにローブの男は被せた。

「……っ、く……!」

(早い! これじゃ、また……!)

 ローブの男が余裕そうに片手で振り落とす竹刀を、顔を歪め受けた。

 彼の名前は樫木滄(かしきあおい)。首が隠れる襟元まできっちりボタンを閉めた白い服装をしていて、黒髪、橙色の目といった容姿である。


「ぬるい、もっと感情を、憎しみを込めるんだ……。

 これでは俺が能力を使うまでもないナァ? いいのカァ?」

「くぅっ……!! よくない、です……!」

「それじゃあ母親のみならず大切な弟まで守れなくなるナァア?」

「……嫌っ、だ……!」

 ローブの男の挑発に滄は、竹刀を握る力を強くした。きりきりとぶつかる竹刀から音が鳴りそうなほど、攻防が繰り広げられていた。

「……母親を死なせたヤツを殺すんじゃなかったのカァ?」

 今度は耳元でそう囁かれ、滄は目を見開いた。

 途端、竹刀が弾かれ、滄は体制をくずし、そのまま尻餅をついた。

「うあ……っ……!」

 滄はなんとかすぐに上体を起こして、竹刀を掴もうとするが……

「今日はもう終わりだ」

 そう言ったローブの男に阻まれた。男は竹刀を足で踏んで止めてから、滄の目の前にしゃがんだ。

「なぁ……アオイ」

 男は狂気的に眼を見開いて、滄の両肩を掴み、語りかけた。

「もっと憎しみを込めるんだ……、アイツを恨んでるんだろう?

 殺せるなら! 今殺したいくらいに‼︎ ……っそうだろォ?」

 その豹変ぶりに、滄はまだ慣れていなくて俯いた。今にも喰われそうな勢いだった。

 滄は乾く喉で唾をひとつ飲み込み、小さく頷いた。ここで逆らったら……。

「だよナァア……? 辛いよナァ? っだったら‼︎

 明日までに能力を出せ。じゃないと殺す。使い物にならないからな」

 そうだ。殺される。

「……はい……、父さん」

 滄は暗く冷静な瞳に変えて、こたえるのであった。

  

 

 

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