八話 告白
小五から高一は七年じゃなく六年の付き合いでした……。本当にすみません。本当は小四でした……。
情緒不安定だった十月から五か月が経ち、ついに、高校の卒業式の日になった。
ここ一か月、いろいろ考えた。福見のことについて、関係について、未練がましいまま卒業するかについて。考えた結果、卒業までに告白して、潔くフラれようと、そう結論が出た。私は告白とかに疎いので、悔しいけれど中一で既に彼氏持ちなさくら流”異性の落とし方”を参考にすることにして。そう、結論は出たのだけれど……勇気が出なくて、ずっと先延ばしにしてきた。卒業式までには告白するから、と。
そして、今に至る。通学前の最後の身だしなみチェックを兼ねて鏡に姿を映した私にただ一つ言えるのは、もう私に逃げるという選択肢は残されていないということだった。
◇◇◇◇◇
校長先生の長い話が終わり、卒業生達が集まる講堂でどっと息がもれた。何とも言えない、安心が交じったような、卒業生達がもらしたため息が。
そして、校長先生が退場すると、一組から順に退場していく。私と福見、水崎さんは六組なので、しばらく待たなければいけなかった。
「今日で本当に最後なんだね……」
「みんな今までありがとう……」
教室に戻ってみんなでお別れ会をしていると、みんなの感慨深いような、しみじみとした声が聞こえてくる。
「あ、あの、寄せ書きしますか?」
そう言ったのは、我らがヒロイン水崎さんだ。さすが、段取りが良いというか、なんというか。
「え?いいの?うわぁ、めちゃくちゃ可愛い色紙持ってんじゃん!じゃあ、私から書くね!」
クラスのリーダー的な存在、女子軍団のコミュ力お化けさんことAさんがそう言ってからはもう、お別れ回はみんなで色紙を回して好きなペンで好きなことを書く時間に変わった。
……まぁ、お別れ会ってそういうものだよね。
「福見、帰んないの?」
「南こそ、なんでこんな時間まで残ってんだよ?」
そりゃあ、貴方に告白するためですけど?という本音はもちろん隠して、私は福見をからかう。
もう教室には、私と福見しか残っていなかった。
「水崎さんは?水崎さん可愛いから、放っておくと盗られちゃうかもよ?」
「余計なお世話だ」
そう軽口を叩き合うのも、今日で終わりかと思うと、少し寂しかった。
しばらくの間、福見と私の間に沈黙が降りる。
「……ねぇ、福見」
「ん?」
「もう私達、九年の付き合いだね?」
「そうだな。確か小四の頃からだっけ?」
「うん、そうだよ。なんか、あっという間だったね」
「……ねぇ、福見」
「ん?」
「今日で、終わりだね」
「あぁ。なんか、変な感じだな」
「うん」
「……ねぇ、福見」
「ん?」
「好きだよ」
まさか九年間口に出すのを躊躇い続けてきた言葉を、こんなに簡単に言うことができるなんて私も思っていなかった。
お読みいただきありがとうございます。
次話は、福見視点の予定です。男性視点……書けるかな……。
おかしいところや矛盾しているところ、誤字脱字があれば報告してもらえると嬉しいです。