七話 祝福
私の誕生日からまた時――正確にいうと一年と三か月十三日程が経ち、今私は高校三年生の秋を満喫している。この一年と三か月十三日の間、色々なことがあった。
例えば、妹のさくらだが、中学校に入り、「馴染めな~い」とか言ってたくせにその数週間後家に彼氏を連れて来た。優しそうな雰囲気を持つ少年で、「さくらさんのことを幸せにします!」とか勢いで言ってさくらを赤面させていた。リア充爆発しろ。まぁ、さくらをいじるネタができたのでいいことではあるけれど、妹に先を越されたと思うとちょっと悔しい。
そして、福見と水崎さんだが――私のサポートの甲斐あって、無事に付き合うことになった。
ええっと、確か付き合ったって報告を聞いたのは九月頃だから、相談されてからちょうど二年くらい経っている。両方なかなか勇気を出せなくて、告白できなかったが、見ている側はじれったい程の甘々な雰囲気を醸し出していた。
ちなみに、告白したのは、福見からだ。「どう言えばいい?」と相談されたので、胸に痛みを感じながら、私の少ない語彙力で精一杯乙女心をくすぐるような文面を考えていた。正直地獄だった。
私?私はなんか、もう、何も感じない。今まで散々心折られてたからかなぁ?
……とまあ、無事に(?)人の彼氏になった福見だが、今も変わらず私と遊んだり、一緒に帰ったりしている。私としては不謹慎にも嬉しい限りだが、水崎さんも福見も本当にそれでいいのだろうか。私が寝取るとか考えていないのだろうか。いや、しないけれども。
というわけで、(どういうわけで?)福見は私と一緒に帰ると言っています。意味がわからない。
……私だったら、たとえどんな女の子でも彼氏が異性と一緒に居たら嫌だって思うのに。
「う、浮気性の彼は嫌われるよ?」
「はぁ?え、マジ?……じゃなくて。それ今日で十七回目だから。お前最近おかしいぞ」
「は、はぁ?別に。何でもないし。回数数えてるとかマジキモ。さっさと帰るよ」
「はぁ……」
まずい、福見が鋭い。
福見に悟らせてはいけない。私の気持ちを。
けれど、だからと言って、こんな塩対応するつもりはなかったの――っ!マジキモとか、本っっっっ当にごめん!
「なぁ、南。ありがとな」
「は、はぁ?礼を言われるようなことをした覚えはないわ」
ヤバい、私、我儘令嬢化してる!悪役令嬢になってきてるよ!どうしよう。めちゃくちゃ嬉しいんだけど!ていうか何も感じないとか嘘!影響しまくってるから!
「お前南、本当におかしいぞ。熱あるのか?落ちてるもんでも食ったか?」
そう言って福見は私に顔を近づけ、私の額に手を触れる。
ぎゃあヤバい至近距離はヤバい、貴方それでもいいの!?水崎さん本気で泣いちゃうよ!?
私は乱暴に福見の手を除けた。
「っ何よ、本当に何でもないから!!熱もないし、落ちてるもん食べてもいない!!……何でもないから」
本当に、そう言うしかない。
はぁ、本当に、失恋のせいで私の頭がおかしくなったのはまだいいけれど、福見までそうなっちゃうのはダメだって。私、争いごと好きじゃないの。修羅場とか、いいから。
「そうか。念のため、今日は早く寝ろよ?」
何なんだろう。この恋人のような扱い。おかしい。絶対おかしい。
好きな人の恋をサポートしてハッピーエンドになった結果、なぜかサポート役に優しくなったんですが。私はどうすればいいの?
心の中だけだけど、改めておめでとう、福見、水崎さん。
お読みいただきありがとうございました。
なんか、あきの人格ぶれてる。おかしい、こんなはずじゃなかった……
失恋して人格ぶれてるのです。