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四話 水崎さんの気持ち

なんか、長くなってしまいました……




「よしっ」




 私は朝、とある重大な決心をしていた。



 ……まぁ、重大な決心と言っても、水崎さんにあることを聞く、というだけなのだけれども。



 「あること」とは、水崎さんの気持ちである。水崎さんが、福見のことをぶっちゃけどう思ってるか、ということを聞くのだ。



 鏡を見ると、そこには気合いの入った私がいた。


 ブレザーの制服に、編み込んで高い位置に一つ結びをしている、いつもより念入りに梳かした髪の頂上には、可愛らしいレースのリボンが飾られている。



 

 なんか、客観的に見てみると、恥ずかしくなってきたんだけど、どうしよう?これ、絶対に、水崎さんに会うからだよねぇ?無意識のうちの行動?対抗心?恥っず。恥ずかしい。恥ずかしすぎる。自分の自意識過剰さが。こんなの(リボンでかざれば)で私があの地上に舞い降りた天使こと水崎風花ちゃんに勝てるとでも?そう本気でおっしゃいますの?




 いつもの心の中での口論が始まったが、遅刻する時刻になったので心の中の私は簡単に口論をやめ学校へと向かった。



 いつもより念入りに梳かした髪に、可愛らしいレースのリボンをつけて。



 結局、時間に勝てるものなど、なかったのである。






◇◇◇◇◇






「福見、パス!」




「わかった!南、ディフェンスは頼む!」




シュッ。




 福見が放ったシュートが、バスケットゴールのリングを突き抜ける。




「よしっ!」




「南お前さ、あんなすれすれのとこにパスするなよ。俺じゃなかったら取り逃してたぞ?」




「でも、いいパスだったでしょ?私のパスがなかったら入らなかったんじゃない?」




「ばーか、俺はどっからでも決めるに決まってるだろ」



 そう軽口を叩き合いながら、私と福見はハイタッチをする。




「きゃあ――――っ!」




 女子の黄色い声が上がった。



 今日は、月に二回の男女合同の体育の日だ。




 ……まぁ、と言っても、女子の皆様はその日はだいたい何かしらの理由をつけて休まれるのですけれど、ね。




 見学用のベンチを見ると、ほとんどの女子……というか私以外の全員の女子が、そこに座っていた。



 みんな、気になる男子を見たり、きゃあきゃあ叫んだり、隣の子とおしゃべりしたり、ぼおっとしたり、多種多様ではあるが、間違いなく体育を見学している。


 たぶん、男子と体育……というのが嫌なんだろう。思春期真っ只中の今、異性と体育なんて、というのが本音なのだろうなと思う。



 私にはその気持ちがよくわからないのだけれども……まぁ、体育は楽しいし、正直女子は弱いし、さっきみたいに福見と連携できるし、いいことしかないけど……。



 そして、私以外の女子全員ということは、その中に間違いなく水崎さんが含まれるのだ。



 水崎さんは、福見をどこか熱っぽい瞳で見ていた。



 

 あれは、好きな人をもっと好きになった時の瞳だ。




 私が、自分で経験したからわかる。




 ……これじゃ、脈アリだろうなぁ。




 ふと、水崎さんと目が合った。



 意志のみなぎる儚げな瞳を見ながら、私は、「ここで、ニヤッと笑ったら悪役だよなぁ」なんて呑気(のんき)なことを考えていた。




 どうでもいいことだが、さっききゃあきゃあ叫んでいた女子のほとんどが、なぜか私のことで叫んでいた。






◇◇◇◇◇






「み、水崎さん、今日一緒に帰らない?」




「ふぇっ!?み、南さん!?……わ、わかりました。わたくし、水崎風花は、南さんと誠心誠意一緒に帰らせていただきます」




 下校する時間になった時、私は帰ろうとする水崎さんを下駄箱の前で引き留めた。



 水崎さんと私の通学路は同じなので、全く支障はない。




 なぜか水崎さんが私相手にかしこまっている。



 だいぶ変な日本語になっているが、やはり同性の私から見ても水崎さんの容姿や雰囲気、言葉使いは可愛らしい。特に、「ふぇっ!?」とかは私には真似できない。なんというか、本のヒロイン感満載――というかそのものだ。レースのリボンとかで、私が水崎さんに勝てるわけがない。



 通学路で、水崎さんと他愛ない話――は、出来なかった。もともとしゃべったことがほぼない水崎さんと、私はしゃべることがなかったのだ。なので、私は早速本題に入ることにした。




「ねぇ、水崎さんって好きな人とかいるの?」




 この年になったらやっぱり恋の話だよねー、と言いながら私は水崎さんの方をちらりと見る。




「ふぇぇぇ!!??い、いいいいいいいませんよ!!好きな人なんて!!福見君なんて好きじゃないですからね!?」




 ヤバい、水崎さんがチョロすぎる。隠し事とか絶対できないタイプだ。なんか罪悪感が募って、私は水崎さんに心の中で謝っておく。




……ごめんね水崎さん、私もまさか、こんなに上手くいくとは思わなかったの。こんなに水崎さんがチョロ……普通の女の子っぽい一面があるとは知らなくて。




「へー、そーなんだー」




「ほ、本当ですからね!?本当の本当の、本当ですからね!?」




 水崎さんが涙目になった。相変わらず私には真似できないほど可愛らしい。……が、なんか、どことなく普通の女の子感がでている。今まで水崎さんに苦手意識を持っていたけれど、水崎さんも案外普通の女の子なのかもしれない。


 そして、……やっぱり水崎さん、福見のことが好きだったんだ。


 福見と水崎さんが相思相愛なら、私の出る幕はない。


 もし、水崎さんが別の人のことを好きなら、私はもしかしたら……なんて思っていたが、その必要はなさそうで、私の役は恋のキューピッドだと確信して、胸のあたりが苦しくなった。




 必死に弁明をする水崎さんが、そう出来る立場が、どうしようもなく羨ましい。その立場は、その立ち位置は、私がずっと欲しているものだから。



 ”福見の隣”の立場がもうすぐ脅かされることを悟って、私は「泣きたいのはこっちだ」という、水崎さんに八つ当たりするような言葉を飲み込んでいた。




お読みいただきありがとうございます。


おかしいところや矛盾しているところ、誤字脱字があれば報告してもらえると嬉しいです。


なぜ、体育の時間に飛んだのかは、私にもよくわかりません……。

あきは、女子に人気な女子です。

そして、水崎さん、初登場です……!すごいチョロいです。(こんなはずじゃなかった……)

ふと、水崎さん以外、誰の容姿も描写していなかったことに気づき……一応、書いときますね。


南あき  ポニーテール(リボンで飾っている)の美人 

     真っ黒の髪


福見大  長身

     メガネかけている

     繊細な感じの美少年


水崎風花 ちょっと茶色がかった髪

     ショートカット(飾りなし)

     全体的に可愛らしい

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